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間違いはなくても負けることはある。一世一代の走りで輝く馬、一世一代の走りで震える馬。

  • 2016年04月07日(木) 12時00分


桜花賞

1人気はほぼほぼ間違いなくメジャーエンブレムだろう。
この馬をどう取り扱うか?
今年の桜花賞の焦点はそこに尽きるはず。

っていうか、メジャーエンブレムを心配する必要はあるのだろうか?
阪神JFを1人気で圧勝して、クイーンCを1人気で圧勝するような馬だ。しかも先行脚質で安定感もある。だから去年のように展開に振り回される確率も低い。鞍上もルメール。間違えることなんてあるのだろうか?

ない!ないに決まっている!

ちなみにこの10年、いや20年で、前2走を1人気で1着した馬が桜花賞で1人気になるとこんな成績だった。

ブエナビスタ 阪神JF1人気1着→チューリップ賞1人気1着→桜花賞1人気1着
ウオッカ   エルフィンS1人気1着→チューリップ賞1人気1着→桜花賞1人気2着
ダンスインザムード 若竹賞1人気1着→フラワーC1人気1着→桜花賞1人気1着
アドマイヤグルーヴ エリカ賞1人気1着→若葉S1人気1着→桜花賞1人気3着
テイエムオーシャン 阪神3歳牝馬S(現阪神JF)1人気1着→チューリップ賞1人気1着→桜花賞1人気1着
サイコーキララ エルフィンS1人気1着→4歳牝馬特別(現Fレビュー)1人気1着→桜花賞1人気4着

3-1-1-1

ん?間違いもあるな。
こういう場合は1着じゃなきゃダメだ。2着までおまけしても、3着、4着はおまけできない。

いや前2走を重賞に限定すると大丈夫だ。
ブエナビスタ 阪神JF1人気1着→チューリップ賞1人気1着→桜花賞1人気1着
テイエムオーシャン 阪神3歳牝馬S1人気1着→チューリップ賞1人気1着→桜花賞1人気1着

2-0-0-0

よし!間違いなしだ。

ちなみにブエナビスタの単オッズは1.2倍、テイエムオーシャンの単オッズは1.3倍だった。
おそらくメジャーエンブレムの単オッズも1倍台のはず。

netkeiba.comの予想オッズでは現在1.9倍の1人気。
うむ、ギリギリではあるが大丈夫だ。
やっぱり心配する必要はない!

ちなみにこの20年…いや(万全を期して)この10年の単1倍台の馬はこんな成績だった。

ウオッカ    1.4倍2着
ブエナビスタ  1.2倍1着
ハープスター  1.2倍1着
ルージュバック 1.6倍9着

2-1-0-1

おっと、またしても間違いが1回あった。20年にするとボロが出ると思って、この10年にしたというのにだ。しかも去年だ。去年だとデータを都合よく解釈しにくい。過去5年でも同じになってしまうよ。
ただルージュバックは阪神が初出走だった。ウオッカもブエナビスタもハープスターも阪神1600経験がちゃんとあった。しかも3頭ともに阪神JFで1着、1着、2着していた。メジャーエンブレムも阪神JFを1着している。うむ、今度こそ大丈夫だ!
やっぱり心配する必要はない!

ちなみに阪神JFを1着した馬が桜花賞で1人気になると、

ウオッカ   1人気2着
トールポピー 1人気8着
ブエナビスタ 1人気1着
アパパネ   1人気1着
ジョワドヴィーヴル 1人気6着

2-1-0-2 おっと!馬券圏外2回。

う〜む、どの角度から攻めても、ちょっとだけ間違いに遭遇してしまうな……。
でもメジャーエンブレムは阪神JFを1人気で1着した。そして桜花賞で1人気になろうとしている。ブエナビスタと同じだ(他の4頭は阪神JFは1人気ではなかった)。

っていうか、この10年、いや(やっぱり万全を期して)20年でも、阪神JF(阪神3歳牝馬S)を1人気で1着して、桜花賞でも1人気になった馬はブエナビスタとテイエムオーシャンしかいない。そして2頭ともに桜花賞を勝った。阪神JFを1人気で1着して、桜花賞でも1人気になるのは簡単そうに見えて、実は難しいことがわかる。メジャーエンブレムは、そんな名誉を授かろうとしている。
今度の今度こそ大丈夫だろう!心配ない!

桜花賞のメジャーエンブレムは鉄板だ!!!!
間違いはない!!!
ひゃっほー!

とはいえ。
とはいえだ。

ざっくりと過去と照らし合わせると思った以上に「間違い」も多い。絞り込みが甘いと乱れがちだ。桜花賞を1人気で1着することの繊細さが伝わってくる。
実際、桜花賞の1人気はこの10年で3回しか1着してない。2着は3回ある。

騎手が最高に上手く乗って、馬もその期待にきちんと応える。
それでも勝てないことがあるのが競馬だ。
ルメールが最高に上手く乗って、メジャーエンブレムが最高に一生懸命走っても、それ以上に一世一代の走りをする馬がいたら勝てない。牝馬にはそれが多い(ように思う)。メジャーエンブレムを心配しているわけではないけれど、一世一代の光を放つ馬がいないかチェックする必要はあろう。

というわけで、メジャーエンブレムが2着に取りこぼす可能性も想定してみた。
過去10年で、1人気が2着に敗れたのは3回。

06年
1着 キストゥヘヴン  6人気 14-16-16-13 安藤勝己
2着 アドマイヤキッス 1人気 12-13-12-10 武豊

07年
1着 ダイワスカーレット 3人気 12-3-3 安藤勝己
2着 ウオッカ      1人気 8-7-6  四位

11年
1着 マルセリーナ   2人気 13-15-16 安藤勝己
2着 ホエールキャプチャ1人気 14-15-17 池添

1人気より後ろにいたり、1人気より前にいたり、1人気とほぼ同じ位置にいたり、
って全部鞍上はアンカツじゃないか!!!
そういえば、ブエナビスタの鞍上もアンカツだった!!!

アンカツだ!
1人気が万全そうなときに、それでも別の馬を買いたいときにはアンカツを探せばいいんだ!

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とは言ったものの…
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安藤勝己 桜花賞4勝2着1回
桜花賞通算成績 4-1-0-7
中央移籍から引退までの10年間の桜花賞成績 4-1-0-4

改めてアンカツの桜花賞を振り返ってみたけど、すごいね。濃厚だね。他のG1成績と比べても抜けて濃いね。
ここまで優秀な桜花賞騎手は現状では見当たらない。

アンカツだ!と叫ぶのはカンタンだけど、アンカツのメタファーを探すのは難しい。

でも近い騎手はいる。岩田だ。
中央移籍後の桜花賞成績は2-0-2-4。
初勝利は2012年のジェンティルドンナ。アンカツ引退が2012年だからバトンタッチするかのように頭角を現して来た感じだ。実際2012年からの桜花賞成績は2-0-1-1。岩田のこの4年間も濃厚なのがわかる。
しかし、その岩田が今年は騎乗しない(はず)。当日は福島民報杯にてマテンロウボスに騎乗するようだ。

ではどうするか?ルメールやMデムーロや戸崎や福永や池添で当て書きしていくか。できなくはないけれど、それもなんか違う気もする。結果的にルメールやMデムーロや戸崎や福永や池添だったとしても、それはレース後の感想戦でやればいい。
ならばどうするか?ならばアンカツが騎乗して勝った非1人気馬でアプローチすればいい。

キストゥヘヴン  6人気 未勝利2人気1着→フラワーC6人気1着→桜花賞
ダイワスカーレット3人気 シンザン記念1人気2着→チューリップ賞2人気2着→桜花賞
マルセリーナ   2人気 シンザン記念6人気3着→エルフィンS2人気1着→桜花賞

ダイワスカーレットとマルセリーナはシンザン記念に出走し、3着以内に好走していた。
キストゥヘヴンもマルセリーナも1人気馬とは桜花賞が初対戦だった。

つまりシンザン記念に出走し、3着以内に好走し、1人気馬とは桜花賞が初対戦の馬にはチャンスがあって、そういう馬にアンカツが騎乗したら1着チャンスということだ(略してアンカツ・チャーンス!)。チャーンス!と伸ばしたところでアンカツはいない。だからそういう馬に騎乗した騎手が万全と思しき1人気馬を負かして、1着に持ってきたら、桜花賞で一世一代の脚を引き出す騎手と認定することにした。

今年、そういう馬はいるかな?
「いますよ。ジュエラーですよ。鞍上はMデムーロですよ。シンザン記念2人気2着、チューリップ賞1人気2着ですよ」。
了解しました!

なんだかやけにあっさり答えが出てしまった気がする。

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桜花賞注目馬
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心配しない馬 メジャーエンブレム
心配はしないけれど、それ以上に頑張りそうな馬はいないかな?

一世一代注目馬 ジュエラー

皐月賞の登録馬を見ていたら、ノーザンF生産馬は9頭登録し、8頭が出走確定領域にいた。社台F生産馬は2頭登録し、出走確定はエアスピネル1頭だけ。牡馬クラシック戦線では量でも質でもノーザンFに大きく離されてしまった(ように見える)社台Fだけど、牝馬クラシック戦線では踏ん張りたいのではないか。実際、牡馬戦線ではルメールもMデムーロも確保できなかった社台Fだけど、牝馬戦線ではMデムーロを確保できた。

予想オッズ
1人気 メジャーエンブレム ノーザンF生産 1.9
2人気 シンハライト    ノーザンF生産 3.2
3人気 ジュエラー     社台F生産   3.6
ーーーーーーーーーーー
4人気 レッドアヴァンセ  ノーザンF生産 18.2
5人気 ラベンダーヴァレイ ノーザンF生産 24.2
6人気 アットザシーサイド 社台F生産   26.1
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7人気 ウインファビラス  コスモヴューF生産 44.0
8人気 デンコウアンジュ  磯野牧場生産   45.6
9人気 カイザーバル    社台F生産    74.2
10人気以下100倍以上は省略

これを見ると、社台F生産馬が本命サイド、伏兵サイド、穴サイドのポイント、ポイントにいることがわかる(カイザーバルは抽選待ち)。
というわけで、今年の桜花賞は社台F生産馬に注目することにした。
一世一代の走りをジュエラーに期待し、3着以内をアットザシーサイドに期待して、気がついたら3着をカイザーバルに期待してみる。

ジュエラーが桜花賞だけで燃え尽きるとは思わないけれど、桜花賞が一世一代だった馬は多い。桜花賞を勝って、それ以後もG1を勝った馬はこの10年で4頭しかいない。ハープスターも結局G1は桜花賞しか勝てていない。つまり、一世一代を心構えとして持つことは間違ってはいないと思うわけだ。

福永騎手は桜花賞で掲示板にのるのが上手い。桜花賞を2勝している騎手だけど、この10年では掲示板に5回ものっている(3着3回4着1回5着1回)。人気も5人気〜14人気までと多彩だ。阪神1600を上手に走らせるノウハウを持っているかのようだ。
アットザシーサイドの人気は予想で6人気。これだと掲示板ではなく3着に持って来てほしいところだ。

一世一代の3着、いや掲示板でも注目馬 ビービーバーレル
中舘師の「前走はメジャーエンブレムを負かしに行く競馬をした」というコメントに震えた。そのコメントを読んで、改めてクイーンCを見たけど、ますます震えた。なんと前向きでニギニギしいコメントだ!
思えばビービーバーレルは逃げたときだけ勝っている馬だ。今回は「自分のペースで走らせたい」とコメントしていて、逃げるとは言ってない。だから決めつけられないけれど、内心では逃げたいと思っているのではないか?
もし前走の競馬が今回逃げるための布石として、逃げ名人・中舘が石橋脩に仕込ませていた競馬だとしたら……ワオ!
そしてもし万が一、逃げて、3着に、いや掲示板に残っちゃうようなことになったら……ひぃ〜!
その震えは止まらないよ!

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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