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【川田将雅×藤岡佑介】第2回『川田騎手がこだわる“レース後コメント”』

  • 2016年04月13日(水) 18時01分
藤岡佑介騎手がホスト役となり、ホースマンの本音に斬り込む新連載『with佑』。大親友・川田将雅騎手との対談第2回目は、「騎手コメント」がテーマです。レース後に騎手が発する言葉は、紙面やネットでたくさんの人の目に触れます。しかし、実際に話した時と文字になってからでは、印象やニュアンスが変わってしまうことも。そこで、コメントの仕方に“自分ルール”を設けた川田騎手。佑介騎手がその真意に迫ります!(構成:不破由妃子)


(前回のつづき)

将雅は“自分ルール”が多すぎる


佑介 将雅のレース後のコメントで、ひとつ気になっていることがあって。「今日は馬がよく動いていた」とか、「動く」「動かない」っていう言葉を使うよね。

川田 そうかな? 言ってる?

佑介 よく使ってるよ。ハープスターにしても、「一度も本気で動いてない」ってよく言ってたやん。印象的なのは、ハープに限らず、勝ったのに「今日は動いてない」とか「まだ動いてない」とか。俺はジョッキーだから感覚的にはわかるんだけど、はたしてファンに伝わってるのかなと思って。どういう意図で使ってるの?

川田 「動いてない」ということは、結果を問わず、その馬本来の能力を出し切れた感覚がないっていうことやね。本来なら、もう一段階スピードが乗るはずなのに、今日は乗らなかった。結果、「動いてない」っていう表現になる。

佑介 わかるんだけど、俺は「動く、動かない」という言葉を使おうとは思わない。なぜなら、「自分が動かせてないのか」「馬が動かなかったのか」となると…。非常に使いづらい表現で。

川田 あぁ、そういうことか。

佑介 それを普通に「動いてない」と言えるっていうことは、馬が動ける状態にあれば、動かし切ることができるという自負があるからちゃう?

with 佑

▲「“動く、動かない”というのは使いづらい表現。それを使えるのは、馬を動かし切る自負があるからでは?」


川田 言われてみればそうだわ。「自分が動かせていない」という発想がなかった。

佑介 そうだろうと思ったよ。だから、将雅の「動いてない」という表現は、逆にその馬には伸びしろがあるということなんだよね。

川田 そうそう。もっといい内容で走れるのにな、もっと終い伸びるはずなのになっていうこと。ただ、休み明けであったりとか、気持ちが乗っていなかったりだとか、その他いろいろな要素で、「今日はまだそういう状態ではなかったんですよ」ということを伝えてるつもりなんやけど。自分が動かせているか、動かせていないのかは、考えたことがないね。

佑介 自分の腕に自負がなければ、あんなにハッキリと「動いてる」「動いてない」というコメントは出せないよな。実際、将雅以外、あんまり見ないもん。絶対に自分には出せないコメントだから、注目してたんだよね。きちんと真意を読み取れないと、間違った伝わり方をしてしまうこともあるかなと思って、今日聞いてみたんだけど。

川田 そうか。たとえば、俺は追い切り以外、調教にはほとんど携わっていないので、「体が重かった」とか「仕上がっていなかった」というコメントは出したくないし、そもそも出す立場にないと思ってる。ただ、「馬が動いたか、動いていないか」というのは、自分の実感としてあるわけで。あと、性格的なことと、成長過程で感じたことについては、コメントを出していい立場だと思ってる。

佑介 なるほど。将雅は“自分ルール”が多いよな。

川田 うん。コメントに限らず、“自分ルール”だらけ(笑)。

佑介 最近はだいぶ減ったけど、将雅はコメントで損をしてるなと思ったことが多々あった。めっちゃ言葉を選んで、ここまでしかコメントしません、みたいなね。もうちょっと言葉を足して説明してもいいんちゃう? って思うところもあるけど、そのスタイルはもう曲げるつもりはないの?

川田 じゃあ言葉を足して、たとえばレース後のコメント欄で5行分コメントを出したとする。でも、紙幅の都合で3行分に縮めなければならない。結果、掻い摘まれると、俺の言いたかったことと変わってくるわけよ。それが嫌やねん。

with 佑

▲「紙幅の都合で縮めた結果、言いたかったことと変わってくるのが嫌で」


佑介 そこまで考えてたか(笑)。

川田 なぜかというと、若いときにコメントの件で何度も怒られたから。俺がバーッと喋って記者の方が縮めたコメントで、「お前、こんなこと言ったんか」って。実際、言いたかったことを真逆に解釈されたりしたからね。でもね、直接怒ってくれる人はまだいい。「違うんです」って説明できるからね。でも、馬主さんだったり、牧場の関係者だったり、直接説明できない人のほうが多いでしょ? そういう方たちに誤解で嫌な思いをさせてしまっても申し訳ないし、俺にとっても損だし。

佑介 なるほどね。将雅はリスクや無駄を省いて「どうぞ」というスタンスやけど、それでプラスになるものも取りにいこうとしているかというと、そうじゃないよね。

川田 プラスは取りにいこうとしてない。マイナスがなければいい。そもそも俺に対して大抵の人は、「なんや、アイツ」から始まってるわけやん(笑)。目つき悪い、態度悪い、みたいな。でも、関わる人が増えていくにつれ、本当の部分をわかってくれる人も増えて、今があるから。

佑介 確かに将雅は、周りのイメージと本人像に大いにギャップがある一人やな。だからもう少し、自分はこういう人間ですよって説明すればいいのにと思って。そのイメージを変えていければ、もっと楽になるんじゃないかと思うけどな。

川田 ん〜、無理やなぁ(笑)。

佑介 まぁ、将雅は“自分ルール”が多すぎるからな(笑)。では、仕事系の話題で将雅のイメージを変えるのはあきらめて、ここからはプライベートでの意外な素顔を…。

(文中敬称略・次回へつづく)


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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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