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JRA日高育成牧場育成馬展示会

  • 2016年04月13日(水) 18時00分
JRA日高育成牧場育成馬展示会

JRA日高育成牧場育成馬展示会風景


昨年の1歳市場以来、成長した“我が子”を数か月ぶりに見にくる生産者の方々も多い

 去る4月11日(月)、前週の宮崎に続き、浦河にある日高育成牧場でもJRA育成馬展示会が開催された。曇りがちながら時々日も差す天候だったが、冬型の気圧配置のせいで北西からの風がやや強く、体感温度の低い寒い日であった。

 午前10時の開会前には、日高各地から数多くの生産者や業界団体関係者、そして、新ひだか町静内からこの春に入所したばかりのJBBA生産育成技術者研修生12名と、地元浦河のBTC軽種馬育成調教技術者養成研修34期生21名も見学に訪れていた。

 今年、日高育成牧場に繋養されているJRA育成馬は全部で59頭。そのうち、今回展示に供されたのは56頭で、すでに3頭は4月26日中山競馬場で行われるJRAブリーズアップセール欠場が決まっている。余談だが、その中には、静内農高で生産され昨年夏のHBAサマーセールにてJRAに購買された母ゴートゥザノースの2014(牝、父サマーバード)も入っており、改めてサラブレッドが生まれてから競走馬としてデビューするまでの道のりの長さを感じさせられる。ゴートゥザノースの2014は、先月末に疝痛のため開腹手術に踏み切り、現在加療中である。この後は来る5月24日札幌競馬場にて開催予定のHBAトレーニングセールに向け、調教を再開させることになる。

JRA日高育成牧場育成馬展示会

JRA日高育成牧場育成馬展示会での受付風景



 さて、育成馬展示会は、まず午前10時に、牡と牝とに分かれての比較展示よりスタートした。日高育成牧場の場合は、生産者が自分の牧場で生まれた馬の晴れ姿を見に来場するのが宮崎との大きな違いである。宮崎の場合は、22頭中21頭が青森や北海道で生産された馬たちだから、そう簡単に生産者が南九州まで足を運べない。しかし、日高の場合は、ほとんどが日高管内で生産された馬たちで占められており、昨年の1歳市場以来、成長した“我が子”を数か月ぶりに見るという人も多く、あちこちで対面する姿が見られた。

 調教師や馬主も来場していた。今年デビューする新種牡馬産駒を目当てにきた人もいれば、中山競馬場で実際にブリーズアップセールに参加する目的で下見に訪れた人もいる。

 また比較展示から、BTC軽種馬育成調教技術者養成研修33期生たちが、実際に馬を引き、実習を兼ねて働いていた。彼らは、15日(金)に晴れて修了式を迎えることになっており、すでに全員が就職先を決めている。

JRA日高育成牧場育成馬展示会

JRA日高育成牧場育成馬展示会で実際に馬を引き、実習を兼ねて働いていたBTC研修生



 年明けより彼らは、交代で日高育成牧場に通い、実際に育成馬に騎乗して坂路コースなどでの調教を経験してきた。普段乗りなれた馬(元競走馬のサラブレッドたちだが)とはまた違う反応を見せる2歳の若馬に騎乗するのは何よりの実地訓練であり、この上ない貴重な体験となる。その意味でJRA育成馬たちは、競馬にデビューする前から人材育成にも実は貢献していることになる。

 比較展示が終わった後、敷地内の1600mダートコースを使用しての騎乗供覧に移った。黙って座っていると、ブルブル震えるほどの寒さの中、56頭中、50頭が元気に騎乗供覧に出走してきた。6頭は比較展示のみで別メニューの調教となる。最終目標がブリーズアップセール出場だから、ここで無理はさせられない馬もいるわけだ。

 騎乗供覧は牡2班、牝2班に分かれて、1班10頭〜16頭ずつ馬場入りし、まずゆっくりと速歩からキャンターで向こう正面まで進んで行く。そこから、基本的には2頭併走でスタートし、併せたまま徐々にスピードアップして行って、残り400m地点から計時を始める。ゴール地点を過ぎると終い2ハロンの時計がすぐに発表され、見学者はそれぞれ目当ての馬の走るフォームや息づかいなどをチェックしながら、次の馬へと視線を移す。

 仕上がり度にやや差があるのは毎年のことで、かなり早い時計を出す組がある一方でまだまだゆっくりとしたラップで走り抜ける組もいる。

 牡馬25頭(1頭のみ単走)のうちで、最速の時計を出したのは、2班5組目に走った48番リスキーディール14(父シンボリクリスエス)と66番サウンドアメニティ14(父デュランダル)の組。前半12.8秒、後半11.7秒をマークし、計24.5秒。これが牡馬最速であった。ただしかなり時計が拮抗しており、特に終い1ハロンのタイムは11秒台が続出していたので、果たしてこれがその後の競馬に直結するかどうかは何とも分からないところだが。

JRA日高育成牧場育成馬展示会

牡馬最速の48番リスキーディール14と66番サウンドアメニティ14



 牝馬では、4班3組目に出てきた69番ハローオンザヒル14(父ゼンノロブロイ)と26番チューベローズ14(父シニスターミニスター)の組の12.7秒、11.0秒計23.7秒が最速であった。毎年、ここでは牡馬よりも牝馬の仕上がりの良さが目立つ。

JRA日高育成牧場育成馬展示会

牝馬最速の69番ハローオンザヒル14と26番チューベローズ14



 なお、日高育成牧場の職員とともに、比較展示でも馬を引いていたBTC研修生のうち13名が騎乗供覧にも参加して1年間の訓練の成果を発揮していた。

 前記の最速タイムを出した牡牝2組にも、48番リスキーディール14には神野太志君(下河辺牧場に就職)、牝馬69番ハローオンザヒル14には西村要亮君(ヒダカファーム)がそれぞれ騎乗していたことを追記しておきたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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