スマートフォン版へ

中央馬で唯一能力発揮のヴィータアレグリア/マリーンC・船橋

  • 2016年04月14日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



かなりゆったりとしたスローな流れ

 なんと残念なことに、ブチコがゲートで突進して競走除外となってしまった。ゲートを飛び出したあとゴール板付近まで来たところの写真を撮影していて、あとから拡大してみたところ、右目の付近から出血しているのがはっきりとわかり、ちょっと痛々しかった。

 馬券発売が締め切られたときのマリーンC1レースの売上げが5億1688万9600円で、同レースの売上げレコードを更新していた。ところが、そのうちブチコがらみの売上げ3億6460万7800円、じつに70.5%が返還になってしまった。馬券発売を締め切ったあとの除外だったのでいかんともしがたく、主催者にとっては不運だったとしかいいようがない。

 好スタートを切ったのはダブルファンタジーだったが、逃げが予想されたブルーチッパーが二の脚の速さの違いでほとんど仕掛けることなく先頭に立った。最初の3Fのラップが12.6 - 12.6 - 12.7で、600m通過は37秒9。先行争いにはならず、かなりゆったりとした流れとなった。その後もきっちりと12秒台のラップが続き、1000m通過は62秒8。そして直線は、ブルーチッパーと2番手を追走してきたヴィータアレグリアとの追い比べとなって、ヴィータアレグリアが半馬身先着。最後の1Fだけが13秒0かかって、勝ちタイムは1分40秒2。過去10年でも1分40秒を越えた決着は2度しかなく、スローな流れで当然タイムもかかる決着となった。

 ちなみにコースは違うものの、同じ1600mの昨年の東京シンデレラマイル(大井)が、600m通過37秒9、1000m通過63秒0で、ブルーチッパーの勝ちタイムは1分41秒2。このときは直線追い比べとなった相手が3歳のララベルでアタマ差振り切ったが、今回は追い比べとなったヴィータアレグリアに半馬身先着されただけで、ほとんど同じような流れで、同じような質のレースだった。

 そして大差がついての3着争いは、兵庫のダブルファンタジーが先着して、笠松のタッチデュールがハナ差で4着ということにはちょっと驚かされた。ダートグレードでの着順ということでは大健闘という言い方もできる。とはいえ、たびたびダートグレードに出走しているタッチデュールのここ1年ほどの牝馬限定ダートグレードでの成績を見ると、中央勢は一線級のメンバーが揃うレディスプレリュード、JBCレディスクラシックが、ともに勝ち馬から3秒台の差で、その後、メンバーがやや軽くなったクイーン賞、TCK女王盃、エンプレス杯がいずれも勝ち馬から2秒台の差。そして今回も勝ち馬とは2秒3差だから、自分の力だけはきっちり出しきった結果といえる。

 ダブルファンタジーにしても、もともと中央では1000万条件で頭打ちという成績で、園田でもA2特別は勝ったもののA1特別は2着まで。3月に同じ船橋に遠征した柏の葉オープンは大幅馬体減もあってまったく見せ場がなかったが、今回は2度めの遠征で力を出し切ったといえそうだ。

 つまり中央馬で能力を発揮できたのは、ヴィータアレグリアだけ。フォーエバーモアはスタートでダッシュがつかず後方からとなり、徐々に位置取りを挙げて4コーナー手前ではヴィータアレグリアのうしろ3番手まで進出したものの、直線では差を広げられるばかり。4着のタッチデュールから4馬身も差があっての5着。昨年12月に船橋のクイーン賞を制しているディアマイダーリンに至っては、馬群の中を追走して、直線はバテたというより走る気をなくしたという感じで最下位。まったくどうしたのだろう。

 サンビスタ引退後の牝馬ダート路線は層がかなり薄くなった。女王級といえるのは、ホワイトフーガ、コーリンベリー、アムールブリエだが、コーリンベリーは短距離路線、アムールブリエは2000mのブリーダーズゴールドCには出てきそうだが、それ以外は中長距離で牡馬との対戦になると思われる。そうなると、ホワイトフーガさえいなければ、中央馬ならオープンで上位入着クラス、南関東なら今回2着のブルーチッパーはもちろんのこと、ここは回避したララベルあたりなら十分チャンスはありそうだ。

 余談になるが、除外になったブチコのお姉さんのユキチャンも、関東オークスを圧勝したあとのジャパンダートダービーで競走除外になったことがあった。そのときは蕁麻疹によるもので、当日とはいえレースより何時間も前の除外発表だったために、馬券の売上面では大きな損害にはならなかったように記憶している。それにしてもナイター競馬で1頭だけ白く輝くその容姿に、今回の出来事もあり、何やら幸薄いシンデレラのような感じがしないでもない。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング