上位人気が割れ気味で混戦模様のクイーンエリザベス2世C展望
地元勢で評価が高いのは、デザインズオンローム(セン6)とワーザー(セン4)
今週日曜日(24日)に香港のシャティンで行われるクイーンエリザベス2世C(芝2000m)は、ブックメーカーがひと桁台の前売りオッズをつけている馬が6頭もいる混戦模様となっている。
地元勢で評価が高いのは、デザインズオンローム(セン6)とワーザー(セン4)の2頭だ。
14年のこのレースの勝ち馬で、同じ年の12月にはG1香港カップ(芝2000m)を制し、この路線の頂点に立ったのがデザインズオンロームである。
昨年5月に球節から骨片を摘出する手術を受けた影響で今季の始動が遅れ、11月21日のG2ジョッキークラブマイル(芝1600m)が緒戦となり、ここは6着。続くG1香港カップが4着、更に年明けのG1スチュワーズC(芝1600m)では8着に大敗し、手術の影響が心配されたが、実は前のシーズンも緒戦から3連敗を喫しており、つまりは競馬を使わないとチューンナップ出来ないタイプのようである。4戦目となったG1香港ゴールドC(芝2000m)では、持ち前の末脚が炸裂して快勝。このレースを前年に続いて連覇し、健在ぶりを示すことになった。昨年はこのタイミングでドバイ遠征を敢行したのだが、今年は香港に留まり、4月3日に行われた香港G2チェアマンズトロフィー(芝1600m)を使われ3着となってあからさまに「ここ」狙いのローテーションで、ブックメーカーの人気も頷ける臨戦態勢である。
デザインズオンロームに匹敵する人気を集めているのが、香港競馬の次世代を担うことが期待されるワーザー(セン4)だ。
ニュージーランド産馬で、2歳夏に祖国でデビュー。初勝利を挙げるのに6戦を要したが、3歳の夏を越して本格化し、15年4月にエラズリーで行われたG2チャンピオンシップS(芝2100m)で重賞初制覇。その後はオーストラリアに転戦し、モーフェットヴィルのG1サウスオーストラリアンダービー(芝2500m)で2着となった後、ドゥームベンのG2イーグルファームC(芝2200m)を制して2度目の重賞制覇。続くドゥームベンのG1クイーンズランドダービー(芝2200m)で2着となった3歳シーズンを終えている。今季から戦いの場を香港に移し、香港4歳シリーズ緒戦の香港G1香港クラシックマイル(芝1600m)、2戦目の香港G1香港クラシックC(芝1800m)でいずれもサンジュウェルリーの2着に惜敗した後、3戦目の香港G1香港ダービー(芝2000m)を勝っての参戦となっている。4歳世代には厳しいと言われるこのレースだが、11年のアンビシャスドラゴン、14年のデザインズオンロームのように、傑出した力を持っていれば、勝っている4歳馬もいることも事実である。ここでこの馬がどんな競馬を見せるかで、今後の香港におけるこの路線の勢力分布がどうなるかが占えそうである。
遠征馬の中で最も評判が高いのがラブリーデイ
遠征馬の中で最も評判が高いのが、3頭出しで臨む日本勢の1頭であるラブリーデイ(牡6)だ。
昨シーズンを通じて大出世を遂げ、レイティング的にも今回の出走馬の中ではブレイジングスピード(セン7)、ハイランドリール(牡4)と横並びでトップという実力が、素直に評価されている。シャティンの馬場も合っていそうだし、名手ジョー・モレイラ騎乗というのも心強い。もともと気性面に難点があった馬で、初の海外遠征で異空間にいかに対応するかに一抹の不安はあるが、心身ともに完成された今ならば、克服してくれるはずだ。
18日付けのオッズで、パディーパワーは1番人気に推しているものの、レースベッツが3番人気、ベット365は4番人気と、予想外に「売れていない」のが、愛国から遠征しているハイランドリールである。
前述したように、レイティング的には出走馬中トップタイで、昨年12月のG1香港ヴァーズ(芝2400m)を制しているから、シャティンの馬場への適性も実証済みだ。今季初戦のG1ドバイシーマクラシック(芝2400m)を叩かれての上積みも期待できるし、鞍上は名手ライアン・ムーアと、一見するとマイナスの要素は見当たらない。実を言えば、このレースの出走メンバーが発表されて以降、香港メディアの間で「ハイランドリールは回避するかもしれない」という噂がしきりに流れており、あるいは中間に何かあった可能性はあるが、真偽は不明だ。逆に言えば、実際に16日の夜に現地入りし、出走することが明確になった以上、これからレースに向けてブックメーカーの人気も高まってくる可能性はありそうである。
10倍以下のオッズが付けられている残り2頭は、ヌーヴォレコルト(牝5)とサトノクラウン(牡4)である。
昨年暮れのG1香港カップにおけるパフォーマンスを考えれば、ヌーヴォレコルトの人気は当然として、サトノクラウンも人気になっているのは、日本競馬の水準の高さが評価されてのものだろう。
ヌーヴォレコルトは、言うまでもなく枠順次第ではあるが、テン乗りとなる武豊騎手がどう乗るかが非常に興味深い。
そしてサトノクラウンはもともと、昨年の皐月賞で1番人気に推された馬で、京都記念を見るとその資質がいよいよ開花した感があり、だとしたらここで一気のG1制覇という目もありそうである。
ここまでがオッズひと桁台の6頭で、すなわち、レイティング面では3強の一角を占め、昨年に続くこのレース連覇を狙うブレイジングスピードには、いずこのブックメーカーも二桁台のオッズを掲げている。昨年のこのレース以降、勝ち星から遠ざかっているという背景がそこにはあるのだが、しかし、暮れの香港カップでは3着に来ている馬を、ノーマークにするのもいかがなものかと思う。
香港から参戦のライジングロマンス(牝5)も、95年から9シーズンにわたって香港を拠点としていたデヴィッド・ヘイズ調教師が遠征させてきたからには、何らかの成算があるはずで、不気味なところのある馬である。3年連続で遠征していたシンガポールのインターナショナルC(芝2000m)が消滅し、今年はここに全力投球のミリタリーアタック(セン8)や、前走G1ドバイターフ(芝1800m)でリアルスティールから2.1/2馬身差4着のエルティジャール(牡4)らも、入着はあっておかしくない馬たちである。もしもここで馬券が買えたなら、相当手広くいくことが求められる、混戦と言えそうだ。