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「騎手を続けられることがうれしい」川島信二騎手にインタビュー

  • 2016年05月03日(火) 18時00分
競馬の職人

川島信二騎手と高橋康之調教師と一緒に



いつもお世話になっている人たちに背中を押されてる感じがします

 これぞ! 豊マジック! を見せつけた春の天皇賞でした。GI通算70勝目、春の天皇賞は7勝目の大記録にも拍手!おめでとうございます。

 感極まる会心のレース。半面4センチに泣いたカレンミロティックも勝ちに行っての2着は素晴らしいと思いました。8歳馬にしてこのスタミナに拍手を送りたいです。

 豊騎手のコメント
「ゲートを上手く出てくれたので瞬時に判断し逃げを決めました。馬もリラックスしていたし4角まではいい形で競馬ができた。厩舎が究極に仕上げてくれていた。ハナに立ってからペースを自在にできる逃げ馬ですから普通に競馬ができた。最後並ばれてからもうひと伸び、馬もよく頑張ってくれた。初コンビの大阪杯での敗戦を生かしどうしてもこの天皇賞は勝ちたいと思っていた。うれしいです。久しぶりですからね。キタサンブラックのGI2勝目を挙げることができたのもうれしいです」

 清水調教師も
「力強い差し返しでよく頑張ってくれた。視野がもっと広がりますね」

 担当の辻田厩務員も
「入厩したときからすごくいいイメージだった。目は父のブラックタイドに似てるのでかわいいですよ。大きな馬だけど柔軟性がありスタミナもあり、菊花賞を勝って、天皇賞の盾ももらって、最高の馬です。これから2000mも対応できると思う。京都競馬場は好きやな」と歓びをかみしめている感じがひしひしと伝わってきました。

 オーナーの北島三郎氏が「今日より明日へと道を歩いていきたい。ありがとう」とコメントされたときは、競馬というより、今起こっている熊本の地震やまだまだ深刻な東日本大震災などを思い浮かべてしまいました。

 豊騎手は1枠1番になった時点で、ゲートを上手く出れば逃げを考えていたと思います。1000mを61.8秒のマイペースで逃げていく。掛かることも押すこともなく淡々と自分の競馬をする。ラスト4ハロンはすべて11秒台にまとめ後続馬に競馬をさせませんでした。長距離競馬はペースがとっても大事なので体内時計の正確な豊騎手の得意とするところだと思います。後続馬は仕掛けどころを探っていたと思いますが豊マジックにはまってしまいましたね。素晴らしいです。

 カレンミロティックの平田調教師曰く
「相手はGI馬やけどほぼ勝ったと思いましたね。8歳馬だけど仕上げに不安はなかったしまだまだやれることを証明できた。まだ終わっていない馬だね。頼もしいですよ。ゲートが少し遅れてしまったことですべて決まったようだね。積極的にレースを運べたし一瞬やったと思ったが、これがGIレースの厳しさです。次は勝てるように仕上げます。すごいタフな馬だと感じました」

 やっぱり生観戦はいいですね。どこがって??? んーそうですね。お客さんの反応や歓声に合わせ馬の反応も微妙に違ったりするところをパドックや返し馬で見つける。天皇賞のように長距離の3200mとなると馬の仕掛けどころや駆け引きがいろいろあるので緊迫したムードが続き、ワクワクドキドキ感が最高潮に達したところがゴールなんですよね。今回のようにわずか4cm差の決着となると息をのむ思いで判定を待つ瞬間はたまらないでしょう。

 TV観戦ではカメラの置かれている位置によって見え方が変わることもあるからやっぱり競馬は生でしょう。まだまだGIが続きます。是非競馬場に来て馬の躍動を肌で感じてほしいです。

***

 さて今日は川島信二騎手を取材してきました。天皇賞も荒川厩舎のマドリードカフェに騎乗予定でしたが、19番目ということで出走できず残念でした。取材の日もきっちり調教をこなしていた川島騎手です。

常石 今日はよろしくお願いします。こうして話を聞くの久しぶりですね。毎日忙しそうですね。

川島 常さん久しぶりです。おかげさまで調教はたくさん乗せていただくのでうれしい忙しさです。

常石 そうですね、調教に乗るっていいことですよね。大体は厩舎から乗ってくると聞いたけどどうですか?

川島 厩舎から乗せていただくと馬の歩様や厩舎から出る馬の状態がよくわかっていいんですよ。

競馬の職人

普段から乗っていると馬の歩様や状態がよくわかる、と話す川島騎手



常石 担当の厩務員さんもそれのほうが喜ぶでしょう。馬って調教に行く準備をし始めるとそこから感じてきますからね。いいことやってると思います。

川島 いつも乗る馬に合わせてその馬のことをよくわかるように理解していきたいです。僕の大事な仕事だと思います。だから面白いし調教に乗るのが大好きです。馬のいいところを最大に見つけるのが楽しみですね。

常石 厩舎へ行くことでスタッフの方とも話できますよね。

川島 そうなんですよ、準備を見ているだけでも馬によっていろんなやり方があるので乗るときに参考になることっていっぱいありますよね。

常石 熱心ですね。

川島 いえいえ、ただ馬に乗るのが好きなだけです。毎日乗っていると変化もわかってくるので成長も楽しみです。家の娘を見ているようですよ。

常石 そうだった。女の子でしたね。かわいいでしょう。

川島 もう大きくなったからちょっとだけ生意気になってきて・・・。

常石 馬もそんなとこあるでしょう。慣れてくるとちょっとわがまま言ったりするでしょう。

川島 そこが面白いんですよね。

常石 オースミハルカと、僕が乗っていたオースミコスモと競りましたよね? その子が厩舎に入ってるんですか?

川島 荒川厩舎にオースミラナキラという名前の、オースミハルカの仔がいますよ。

常石 オースミコスモの仔も中尾秀正厩舎に入ってるので子ども対決もありそうですね。オースミラナキラは、4月16日に阪神競馬場のダート2000mで勝っていましたね。兄にもオースミイチバンがいるでしょう。やっぱりオースミとは相性がいいんですね。

川島 オースミハルカとのいい経験があるのでオーナーには大事にしていただいてます。荒川厩舎でもお世話になっています。

常石 そうそう遅れましたが、新年早々1月5日の万葉ステークス、マドリードカフェで優勝おめでとうございました。3000mを制したことで天皇賞へ向かう予定だったんですよね。その前の江坂特別では逃げる勢いでしたよね。

競馬の職人

マドリードカフェと荒川厩舎の斎藤持ち乗り調教助手



川島 23戦目で実践経験も十分あるのでハナを切っても大丈夫と思っていたんですが、物見してしまい下がってしまって、でも内の馬がハナに行ってくれたことでいい形になりました。自分のペースを守れるところはあの馬のいいところです。52kgの軽量を生かし動揺せずに最後までよく踏ん張ってくれました。

 長距離の適性があると思っていたのでチャンスはあると思っていました。荒川先生も同じ考えを持たれていたので意見は一致していました。気性的にも落ち着きがあってムキになる面はありません。馬の持つ資質に期待しています。年明け早々の競馬を勝たせていただき僕も今年のいいスタートを切れましたね。天皇賞には出られなかったけどカフェと一緒に頑張ります。

常石 高橋亮厩舎にもご縁があるんですよね。

川島 高橋亮厩舎開業の時、勇退した僕の義父・田島良保調教師の厩舎の馬を引き継いでくれたんです。義父が管理していた馬を引き継いでくれて感謝しています。2013年の2歳馬の千葉サラブレッドセールで義父が高橋先生に「どの馬がいい?」と尋ねて、亮先生が選んだのが42番。「じゃあ2000万までなら」ということで1995万円で落札したのがベルルミエールという馬です。ここまで獲得賞金が1億を超えているので、亮先生の馬を見る目はすごいものがあります。

常石 いろんなご縁がつながっていますね。今年は大きな目標がありますよね。300勝に近づいてきましたね。

川島 ここ何年か目標に漢字2文字を書いてるんですね。今年は≪勝躍≫です。300勝も意識しています。今年中には区切りとして達成したいです。いつもお世話になっている人たちに背中を押されてる感じがします。感謝でいっぱいです。騎手を続けられることがうれしいです。応援よろしくお願いします。

競馬の職人

調教へ向かう川島信二騎手



常石 楽しみにしています。今日はありがとうございました。

***

 いつもまじめに取り組む姿勢がまぶしい川島騎手でした。デビュー時に所属した安藤厩舎の先輩に岡潤一郎騎手がおり、安藤調教師に岡先輩の鞭をいただき今もお守りにしていて、毎年夏にはお墓参りをしているそうです。いろんな方に支えられ成長する川島信二騎手をもっともっと見たいですね。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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