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新たな面を見せたノボバカラ/かきつばた記念・名古屋

  • 2016年05月04日(水) 18時00分

(撮影:武田明彦)



地方の1400mの路線で活躍が期待できそう

 中央勢は59kgを背負ったスノードラゴンを別とすると、JpnIIIのタイトルがある既存勢力2頭に、4歳の新興勢力2頭というメンバーで、スタート直後から意外な展開となった。

 タガノトネールがハナを取ったのは予想通りだが、末脚勝負のレーザーバレットが、なんと外から競りかけてきた。今回はブリンカーを着用し、「前走(東京スプリント)は確かに終いを生かすレースを試みたが、道中の手ごたえが案外だった」というコメントが出ていたように、積極的に行く作戦だったのだろう。それにしてもこれほど行けるテンの脚があったとは驚きだった。

 一方で3番枠に入った地方初参戦のノボバカラは、出遅れというほどではないもののスタートでダッシュがつかず、両脇のラブバレット、スノードラゴンに挟まれるような感じで行く手を阻まれ、ラチ沿いを中団からの追走となった。

 ノボバカラと人気を分け合っていたタガノトネールにしてみれば、行く可能性もあったノボバカラが内枠にいたので、それを制してハナを取りにいったのだろう。そこに外からレーザーバレットが行く気満々で競りかけてきて息の入らない厳しい流れになった。それが、図らずも5番手からの追走となったノボバカラ、さらにうしろからの追走となったブルドッグボスに味方することとなった。

 巧いレースをしたのはブルドッグボスのルメール騎手だ。3コーナー過ぎで早くも追い通しとなったタガノトネールがレーザーバレットと馬体を併せる形になっていたところ、4コーナーでは空いていた内を突いて抜け出した。他の1周1100mの地方競馬場に比べればコーナーがそれほどきつくはない名古屋コースはラチ沿いの砂がそれほど深くはなく、こうして最内を突いて突き抜けるというケースはよく見かける。ブルドッグボスは、一旦は直線で突き抜けて勝ったかに思えた。

 しかし、控えざるをえなかったノボバカラは、そのぶん脚を溜めることができたのだろう。残り100mを切って外からビュンと伸びて一気に差し切った。逃げ切った2走前の準オープン、そして大外枠から2番手につけて直線先頭に立って粘り込んだコーラルSとはまったく違う、「こういうレースもできるのか」と思わせるような見事な勝ち方。ダート1400メートル戦3連勝で重賞初制覇となった。まだ4歳でもあり、こういう器用なレースができるのであれば、今後年間を通じてローテーションが組みやすい、地方の1400mの路線で活躍が期待できそうだ。

 それにしても、デムーロ、ルメールのワンツー決着は、中央の今年の重賞だけでも、フェブラリーS、中山記念、弥生賞、阪神牝馬Sとすでに4回あり、今さらながら2人とも流れを読む能力に長けているのだろう。

 勝ったノボバカラから4着のタガノトネールまで0秒8差がついたが、今回は展開によるところが大きく、今回の着順・着差がそのまま実力差ではなさそう。

 前半3番手を追走していたスノードラゴンは3コーナーから追い通しとなって5着。4着のタガノトネールから4馬身差がついた。ほかの中央4頭が54、55kgという軽量のところを1頭だけ59kgはさすがに厳しかった。その条件でどうしてここを使ったのか。どこかに目標があって、ここはひと叩きということであればわからなくもないが。

 岩手のラブバレットは、黒船賞では積極的に行き過ぎて早々と失速したため、今回は無理には行かず、前で競り合った2頭を行かせて4番手で折り合った。しかし最後に弾けることもなかった。地方最先着とはいえ、中央5頭に上位を独占されての6着。あわやという見せ場が何度かあった昨年を思えば物足りない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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