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勝ちパターンに持ち込んだケイティブレイブ/兵庫CS・園田

  • 2016年05月05日(木) 18時00分


コースを熟知する川原正一騎手

 このメンバーならケイティブレイブがハナを切る可能性は考えられたが、それにしてもスタートで少し気合を入れただけで楽にハナを取り切ったのみならず、すぐに隊列が決まって流れが落ち着いた。対して、断然人気に支持されたゴールドドリームは心配されていたように出負けしてしまった。それでもペースがそれほど速くはならなかったことで、すぐに3番手にとりついた。結果的にケイティブレイブが逃げ切るわけだが、ゴールドドリームが好位を取るために無理をしたというよりも、それ以上にケイティブレイブが楽に単騎で逃げられたことが大きかったように思う。

 ケイティブレイブは3走前の500万下を勝ったときは、8頭立てという少頭数だったことに加え、1000m通過が63秒5という楽なペースでの逃げとなって、直線では後続を寄せ付けなかった。しかしその後のヒヤシンスS、伏竜Sは、ともに好位追走から直線を向いたところで一旦は先頭に立つ場面があったものの、うしろから来た2、3頭に交わされてという結果だった。もちろん500万クラスとは相手のレベルが格段に上がったこともあるが、前を行く馬をみずから負かしに行く競馬をして、うしろの有力馬に目標にされてしまうという厳しい競馬だった。

 ところが今回はペースが落ち着いての単騎逃げ。しかも実績を考えれば相手になるのは中央の4頭だけ。12頭立てではあったものの、実質的には少頭数の楽な競馬になった。仮にゴールドドリームが互角のスタートダッシュを決めて、ぴたりと直後に付かれていれば楽な競馬にはならなかったかもしれない。しかし実際にはゴールドドリームが出遅れて、それは致命的といえるほどのものではなかったものの、しかしその少しの差が、結果的に7馬身という大きな差となった。

 たとえば過去5年のこのレースの結果を見ても、勝ち馬はいずれも逃げ切りか2番手からの抜け出しで、2012年のオースミイチバンが勝った年を除けば、上りは37秒台中盤から38秒台前半。そしてこのレースは勝った馬が2着以下に大きな差をつけることが多い。今回、実績最上位のゴールドドリームが出負けしたという幸運もあったが、ケイティブレイブはコースを熟知する川原正一騎手がこのレースの勝ちパターンに持ち込んだ結果の勝利。もちろんそれはここ2戦で一線級との厳しい競馬に揉まれてという経験があってのこと。

 ケイティブレイブがゴールドドリームにつけた7馬身という着差は派手だったが、ゴールドドリームも3着のグランセブルスには3馬身半の差をつけた。能力を出しきったとはいえないが、力のあるところは見せた。

 中央5頭が掲示板独占とはなったが、地方最先着(6着)のエイシンニシパには収穫のあるレースだった。スタートから気合を入れてぴたりと2番手を追走。地方馬で、好位につけてヤル気を見せたのはこの馬だけ。しかも2コーナーから向正面に入るあたりでは、前のケイティブレイブに並びかけて勝負に行こうかという場面もあった。ペースアップした3コーナー手前からはさすがに後退したが、7馬身差で圧勝する馬を追いかけたのだから、普通ならばったり止まってもおかしくないところ、5着のイーストオブザサンとは半馬身差。7着以下、つまり他の地方馬には大差をつけた。今回、エイシンニシパの良馬場での走破タイムは2分02秒7。同じ距離で争われる兵庫三冠目、兵庫ダービーの例年の勝ちタイムと較べても遜色のないレベルだ。格上相手の厳しいペースの競馬に対応できた今回の経験は、次走に必ず生きるはずだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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