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兄のように慕い、尊敬し、友達としても遊んだ渡辺薫彦調教師に密着取材!

  • 2016年05月17日(火) 18時00分
競馬の職人

渡辺薫彦調教師と一緒に撮影(2人とも緊張気味?)



沖先生のような何にでも一生懸命に努力する人。それでいて貫禄のある調教師を目指します(笑)

 今週も話題満載。ストレイトガール号のヴィクトリアマイル(芝1600m・GI)連覇達成、そして7歳牝馬のGI制覇は史上初の快挙、おめでとうございます。

 昨年引退説があった中でここへ持ってくる、馬の力を信じた藤原英昭厩舎の厩舎力は素晴らしいと思いました。先生はいつも「僕らは目立たんでいいよ。馬が主役やからな」と言われます。まさにストレイトガールを主役に育て上げ連覇達成というヴィクトリーロードを走らせた陣営のエネルギーに感動です。

 厩舎へ取材というよりお邪魔すると先生やスタッフの方々に「頑張ってるか」とパワーをもらい励まされます。レースレコード1:31.5のタイムには参るだよー、「おめでとうございます」。

 太宰騎手500勝、そして和田騎手も史上29人目の1000勝を達成。今週は松田騎手が400勝「おめでとうございます」。みんなすごい記録ですよね。2020年東京オリンピック・パラリンピック障害者乗馬で出場をと夢見る僕にもエネルギーとパワーを送ってください。そしてわっ君(和田騎手)、この日に2020勝をしてくださいね。たのしみやなー。

 熊本・大分の震災で被災された皆様に少しでもお力になれたらと日本騎手クラブの募金活動が行われています。ファンの皆様もご協力よろしくお願いします。馬からもらうエネルギーで頑張りましょう。

***

 もう一つの楽しみは、ファンの方から是非取材してくださいと声がかかった「渡辺薫彦調教師」に密着取材。

常石 なべちゃん…うっかり出てしまいますね。失礼しました。渡辺先生今日はよろしくお願いします。

渡辺 いやいや改めて言われると変やなー!

常石 やっぱりここからお聞きしたいと思います。騎手から調教師になられたけど騎手時代の一番の思い入れの馬は、ナリタトップロードですか?

渡辺 ダービーに乗ったことがなかったのに初騎乗で1番人気に推されてびっくりしました。皆さんの期待に応えることができなくてとっても残念でしたが、とっても貴重な経験をさせてもらいました。年間約7000頭もの馬が生まれてくる中で1番人気になったんだからすごかったよ。悔しい思いをしたダービーは、忘れることができませんね。

常石 デビュー何年目ですか?

渡辺 6年目ですね。まだ若かったな。

常石 あの時は、すごい馬が出てきたんですよね。わっ君のテイエムオペラオーとアドマイヤベガ(武豊騎手)の3強のぶつかり合いだったもんなあ。今年もずっと3強と言われていましたがレースが終わると結果が違ってくるので競馬って難しいですよね。でも先輩がきさらぎ賞と弥生賞の重賞連覇したときは、すげー!って思いました。皐月賞3着だったからダービーは1番人気になるなーと思ってました。

渡辺 弥生賞は強い勝ち方をしたな。今思い返してもそう思う。

競馬の職人

いま思い返しても「強い勝ち方をした」と語る1999年弥生賞(撮影:下野 雄規)



常石 厩舎へ入ってきた時は、どんな馬だったんですか?

渡辺 いい感触の馬やなと思っていたけど最初は特には感じなかったが、レースに乗るごとに「すごい馬やな」と思った。

常石 今だからですが、ダービー初騎乗で1番人気だった心情を教えてください。

渡辺 ガチガチってとこかな?オッズは見ない様にしてたけど耳に入ってきて「えー1番人気か?」と。それに他のGIと違ってダービーは特別な雰囲気があったなー。初めはそうでもないかと思ってたけど当日の朝になると競馬場がぴりっ!と引き締まるような感じがしたな。

常石 緊張しなかったんですか?

渡辺 プレッシャーに負けないよう平常心を保つようにしようと思いました。

常石 ダービーでは、トップロードとわっ君のオペラオーが1・2着を競ってたので行けるーと思いましたよね。ゴールの手前で豊騎手のベガに交わされてしまったのが悔しかったですよね。

渡辺 あれがベテラン騎手との違いやな。

常石 菊花賞でのGI制覇、好位のポジションからそのまま抜け出しての勝利は強烈でした。なべちゃんコールもすごかったですよね。あのレースは今思い出してもぞくぞくしますよね。僕も一緒に「なべちゃん・なべちゃん」ってやってましたよ(笑)

渡辺 最後の1冠を勝ったのはやっぱり嬉しかったな。あの時のコールは今でも聞こえてくるでー(笑)

常石 そうですよね。すごかったです。今思えば3強が3冠を1勝ずつしてるってのもすごいことですよね。この年の競馬は面白かったですね。トップロードはほとんど先輩が乗ってたでしょう。30戦中25戦に騎乗。大崩れのレースが少なく2・3着が多くて長距離馬としての活躍は素晴らしかったですね。特にダービーの2着は、惜しかったな。また言ってしまいましたね。

渡辺 30戦8勝、そのうちの7勝が重賞だったから大きな仕事をした馬だったな。

常石 今年もダービーが近くなってきましたよね。調教師としての目標はやっぱりダービー制覇ですか?

渡辺 忘れられない悔しさだったからな。騎手をしていて馬の特徴や良い悪いが分かりレースに必要な条件も把握できるので馬に合わせた調教をやっていけると思う。それができるのは私にとって一番大きな仕事だと思ってるからね。スタッフの人たちも力があるし、元騎手の野元助手もいるので厩舎にとっては大きな力になってます。

競馬の職人

いろいろな方とも打ち合わせをするため忙しい渡辺薫彦調教師



常石 どんな厩舎にしていきたいですか?

渡辺 そうですね。最近昭和のおっさんと呼ばれるような調教師が少なくなってきました。

常石 昭和のおっさんとは? 鉢巻巻いて…(笑)

渡辺 それもいいな(笑)仕事に厳しくなんでも率先して自分から仕事をする。仲間を信頼する。例えば沖先生のような何にでも一生懸命に努力する人。それでいて貫禄のある調教師を目指します(笑)スタッフみんなが意見を出し合って力を合わせていきます。

 馬は見た感じと乗った感じが違うし、高額だから走るとも限らないので、牧場に行って馬を見る目を大事にしたい。山路オーナーの馬が多いですがいろんなオーナーの馬を預かり活躍できるように馬の持つ良さを見つけ出していきたいと思う。自分の馬が活躍する姿を競馬場に見に来てもらえるように馬をしっかり仕上げていきたいです。

常石 元騎手だった方が調教師として活躍されていますがアドバイスなどありますか?

渡辺 先輩騎手だった幹夫先生や石橋先生、騎手時代に仲良しだった飯田先生や後輩の高橋亮先生もいます。みなさんからいろいろ教えていただいています。やっぱり心強いですよね。

常石 そろそろ2歳馬も入厩してくる頃ですね。

渡辺 来週には入ってきます。

常石 どんな馬ですか?

渡辺 まだ何とも言えませんね。これからじっくり馬のことを観察していきたいです。また落ち着いたら見に来てください。

常石 牧場にいた頃とは変わってきますからね。成長が楽しみです。ナリタトップロードのような馬を作ってください。

渡辺 調教師としてあんな馬を作っていきたいですね。走るだけでなく無事に引退させるのも調教師の仕事だと思っています。ダービーで悔し涙を流さない馬を作っていきたいですね。そしてファンの方もオーナーもみんな生で見に来てもらえるような馬を作っていきたいです。応援よろしくお願いします。

常石 沖先生に先日「渡辺厩舎の厩舎カラー(調教服)がかっこいいですね」とお聞きしたんですよ。沖先生は、ナリタトップロードのカラーと渡辺の字をアレンジしてるとおっしゃっていました。調教師になってくれて嬉しい。また応援してやってやーと言ってました。優しい先生ですね。

渡辺 そのとおりですが、沖厩舎カラーの青もプラスしています。

常石 かっこいいですよね。僕も先日頂いたキャップをかぶってると「いいね、うらやましい」と言われましたよ。渡辺厩舎へ入ったんか? と言われました(笑)

渡辺 沖先生は尊敬する大きな存在です。沖先生、ありがとうございました。

常石 騎手時代に先輩とはよく一緒に過ごしてたり、落馬後もいっぱいお世話になっていたので感謝しています。ふっと「なべちゃん」と呼んでしまったりため口になったり、失礼がいっぱいの取材で申し訳なかったです。これに懲りずによろしくお願いします。新馬戦前はいっぱい取材に寄らせていただきます。

渡辺 取材をしてもらえるような馬を作っていきたいですね。よろしくお願いします。つねちゃんもがんばってるなー、けどもっと頑張ってほしいな!

競馬の職人

「つねちゃんもがんばってるなー、けどもっと頑張ってほしいな!」(写真は厩舎開業前の技術調教師時代のもの)



常石 今日は貴重な時間ありがとうございました。

***

 渡辺先輩は僕にとって兄のように慕い、尊敬し、友達としても遊ぶなどとても大きな存在でした。

 一緒に過ごした思い出が山盛りですが、僕が落馬して小倉の病院から京都の病院へ転院する時、京都駅に元パープルサンガの大ちゃんと迎えに来てくれました。「やっと帰ってきたんや」と実感して、嬉しかったです。

 記憶障害でいろんなこと忘れてるけどこの瞬間だけはしっかり覚えてる。嬉しかったわ! ありがとうございます。調教師としての活躍がとても楽しみです。これを機会に何度も取材に行きたいと思います。皆さんも競馬をライブ観戦し「なべちゃん」コールを送りましょう。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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