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蛯名騎手はダービージョッキーになる会?

  • 2016年05月26日(木) 12時00分


皐月賞をおえて。
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#1サトノダイヤモンドの加速装置
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サトノダイヤモンドの良い点は「加速するときの脚」だとルメールが語っていた。
そのコメントを読んで、自分はサイボーグ009の加速装置みたいでかっこいいと思い、「目標はダービー」という陣営のコメントを無視して、皐月賞で注視した。

本当に素晴らしい加速があるのならば、中山の短い直線、急坂でも加速装置は発動されると思ったし、それを見てみたいと思ったからだ。

その皐月賞、サトノダイヤモンドは(自分には)わかりにくい加速を発動し(加速はしてたと思う)、3着に負けた。しかも最後の直線で、Mデムーロに寄られ、持ち前の「まっすぐ走れる」特技をも封じられての3着だった。Mデムーロの寄せがなかったとしてもディーマジェスティやマカヒキに勝てたかは疑問だけれど、もう少し差は詰めていたかもしれない。ルメールは去年に引き続き、Mデムーロに行く手を阻まれたかたちだ。

それはともかく、サトノダイヤモンドのダービーに向けて視界は加速したのだろうか?
サトノダイヤモンドの道中の位置は8-8-9-5。
これで上がりは34.8。

サトノダイヤモンドより速い上がりを繰り出したのは、1着、2着馬だけ。
ディーマジェスティ34.0、マカヒキ33.9。

その2頭は4角を回るまで10番手より後ろにいた馬2頭で、道中サトノダイヤモンドのすぐ後ろにいたナムラシングン、ロードクエストらが上がり35.1、35.4で7着、8着だったから、サトノダイヤモンドが中団メンバーの中では一番強い上がりを繰り出したことは間違いなく、みんなが期待していた次元の違う加速は見られなかったけれど、それなりの加速はしてたようには思った。

ルメールは「久シブリデ、最後甘クナッタ」と語っていたけれど、ことダービーを考えると、8-8-9-5の位置はどうしても体験させたかったはずで、取りたかったポジションでレースを進められたのではないか?陣営は見込みと違って、ペースが速くなりすぎた。あのペースならば、後方競馬でもよかった的なことを語っているけれど、それを鵜呑みにはできない。たとえ、見込みとは多少違ったとしても、経験させたかった位置取りだったと思うからだ。

負かされた相手も後方待機組だからある意味では納得のはずで、最後甘くなったのは事実だとしても、陣営はまったく悲観していないのではないか?
そもそも最初から目標はダービーと語っていたから、悲観するなんてことはないんだろうけど、心のどこかで「それでも勝っちゃう?勝っちゃったらすげー馬だぜ」とは思っていただろうから(ここは決めつけてみます)、悲観があるとすれば、そこまで人智を超えていたわけではなかったということくらいだろう。

デビューから勝ち続け、3連勝目がきさらぎ賞で、そこから皐月賞というサトノダイヤモンドのローテは、同じ池江厩舎のトーセンスターダムと同じローテだった。トーセンスターダムは4戦目の皐月賞で躓いて(3人気11着)、ダービーでも5人気16着に負けた。しかし、サトノダイヤモンドは踏ん張った。それは池江厩舎がダービーを勝つために仕込む執念のローテのはずで、その期待にまずはサトノダイヤモンドは応えたのではないか。

だとしたら、ダービーへの視界は良好のはず。東京で自慢の加速装置を発動させてくれるのではないか。

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#2リオンディーズの布石
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よくわからないのはリオンディーズだ。Mデムーロは「今日ノ競馬ヲ見テ、前ニ行ッタ。掛カッテ速イペースニナッテシマッテ…」とコメントしていたけれど、自分にはそれが信じられない。なんだかMデムーロのアドリブみたいに聞こえるけれど、本当なのだろうか?Mデムーロといえども、皐月賞=角居厩舎=キャロットの馬をフリースタイルで任されているとは思えない。

でもこれがダービーのための布石だとしたら納得できる。8枠16番枠に入ったことで、先行するか後方待機かの選択を迫られて、ダービーを想定して、後方待機ではなく、先行を選んだのではないか?キズナはダービーを4角14番手から差し切ったけれど、ダービーを勝つのに後方待機はリスクの大きすぎる戦法だからだ。少なくとも角居師の過去の東京2400実績と照らし合わせると、ダービーが勝負ならば、後方待機を望む系ではないことがわかる。つまりMデムーロのアドリブではなく、関係者とコンセンサスが取れた上での先行だったと思うのだ。ただ、想定とは少し違ったのはペースではなく、先頭に立つのが早すぎたことではないか。

位置取り2-2-1-1。
理想は2-2-2-2。4角で先頭に並びかけるような競馬だったのではないか?
あのペースでも、最後は凌げるという自信もあったと思うけど、3角で先頭に立つのは想定外だったように思える。

実際、あとになって、マウントロブソンに外から被せられるのが嫌で前にいったというコメントが陣営から出た。やはり先頭に立つのが早すぎたということだろう。でも、これは先行競馬を否定するものではない。つまり、やっぱりこれもまた角居師のダービーを勝つための必殺の仕込みだったのではと思うのだ。

もし、何もかもMデムーロのアドリブで、それが角居師の意向とは違うものだったとすれば、ダービーで乗り替りがあってもおかしくなかった。勝負どころで鞍上をチェンジするのも角居師の勝負手の一つだ(非情のライセンス)だからだ。しかし、鞍上はMデムーロのまま。他に替わりもいないのだろうけど、コンセンサスはあったと思いたい。

ノーザンFの馬はダービーをいっぱい勝ってるけれど、馬主キャロットとしてはダービーを勝っていない。「すべてはお客様の旨いのために」。うむ、ダービーを勝ちたい動機は十分だ。そもそも角居厩舎は東京2400と東京1600で強い馬を集め、仕上げていると思っているので、皐月賞をダービーを勝つための伏線と考えていても驚けない。

兄貴のエピファネイアは、弥生賞4着で、皐月賞2着で、ダービーは2着だった。しかし3角手前のアクシデントがなければダービーを1着していたとも言われている。
リオンディーズは弥生賞2着、皐月賞4着(結果5着へ降着)。うむ、似たようなもんだ。

騎乗停止明けのMデムーロはぜんぜん勝ててないけれど、ダービーのために大人しくしているように思えて、なんだか不気味だ。
もしくは角居師から、馬のデキはいいから絶対に騎乗停止になるなと非情命令が出ているようにも思えてしまう。

だとしたら、ダービーへの視界は良好のはず。Mデムーロが「ムズカシイ馬ネェ〜」といいながら、去年と同じような爆発的な騎乗を見せるか?

サトノダイヤモンドの池江厩舎、リオンディーズの角居厩舎、日本を代表する二大厩舎が皐月賞の舞台で、ダービーを勝つための伏線を張り巡らせていた。考え過ぎだとしても、そう考えたほうがダービーでエキサイトできる。ならば、それがけしからん方向だとしても、やめられない、止まらない。

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#3 隣の芝生はヤバい。
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ライバル陣営からしたら、皐月賞のタイムを作ったのはリオンディーズという認識のはずで、あの馬にダービーで、兄貴のエピファネイアのジャパンカップみたいなレース(道中3-2-3-4)をされたら、ヤバいヤバい。
同じようにサトノダイヤモンドもダービーを想定した競馬をちゃんとしてしまったと…ライバル陣営は感じてるかもしれない。これまたヤバいヤバい。

では皐月賞を勝ったディーマジェスティはどうなのか?実は自分はディーマジェスティこそ…

と、ここまでを皐月賞の翌週のここで書いた(翌週書いたものに少し加筆してある)。

では、ディーマジェスティはどうなのか?

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#4スマートオーディンの視点
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その前にもうひとり、独自の視点で仕込んでる(ように見える)調教師がいる。それがスマートオーディンの松田国師だ。

出たかったろうなぁ〜。NHKマイルに。
ダノンシャンティで上手くいかなかったパターンをその子供のスマートオーディンで達成する。カタルシスだだもれだったろうに。

でも目的はあくまでもダービー。それゆえにカタルシスを封印して京都新聞杯にしたのかな。
実際、ダービーのために京都新聞杯を使ったとコメントしている。そこで京都新聞杯にした理由をいくつか語っていたけれど、自分は「1周競馬を経験させたかった」が一番大きかったのではと思っている。デビューから5戦、ずっとコーナー2つ、もしくはコーナー2.5の1800だったから、十分理解できる。マツクニ・ホースのタニノギムレットだって、クロフネだって、キングカメハメハだって、ダノンシャンティだってダービー前のどこかで1周競馬を経験させていた。

でも、それだけではないような気もしている。
皐月賞を見て、このローテにしたのではないか?そんな気がしてならない。
皐月賞レコードの1:57.9の極限的時計の結果を見て、ダービーは消耗してない馬にチャンスがあると睨んだかもしれない。
松田国師はキズナを例にあげて、このローテにした理由を語っていたけれど、あのときの皐月賞がまさに今年のように皐月賞レコード(1:58.0)での決着だった。

キズナの勝ったダービーは、2着に皐月賞2着のエピファネイアが来たけれど、3着、4着は青葉賞2着(アポロソニック)、京都新聞杯2着(ペプチドアマゾン)の人気薄たちだった。皐月賞馬のロゴタイプは5着、皐月賞3着のコディーノは9着、皐月賞4着のカミノタサハラは故障で回避した。

松田国師は管理馬を種牡馬にしてあげることを使命と語るような調教師だ。
普通ならば。自信のあったはずのNHKマイルを勝ちに行くような気がする。しかし、今回はそこをパスした。スマートオーディンに関しては、すんでのところで出走回避した父の無念込みで、狙っていると語られているし、自分もそう思ったりしている。でも、そんな個人的感情だけで動くはずがない(馬主も違うから余計にそうだ)。勝つための最善策を選択する客観的な視点も持ち合わせているはず。

自ら作り上げた必殺の大種牡馬ローテを封印してまで、一周競馬を使い、それにスマートオーディンは一発回答で合格した(はず)。しかも余力を十分残してのダービー(のはず)。スマートオーディンへの自信は凄まじいのではないか。じ〜〜っと、じ〜〜〜〜〜っとサトノダイヤモンドとリオンディーズとマカヒキの調子を観察しているかもしれない。もしかしたら、もうすでにカタルシスが溢れ出ているかもしれない(こぼれてないと面白くない!)。

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#5 隣の芝生はやっぱりヤバい。
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逆もまた真なり。皐月賞組にとっての心配事は、皐月賞激走の反動がないか?だろう。たとえ疲れがあっても、絶対に言わないだろうけど、もし、疲れが残っているとしたら、余計に相手は皐月賞組ではなく、別路線組と思うのではないか。
そして、その筆頭は間違いなくスマートオーディン。

角居師も池江師も友道師も、実はじ〜〜〜っと、じ〜〜〜〜〜っとスマートオーディンを観察しているかもしれない。

隣の芝生はヤバい。
皐月賞組には、隣(別路線)のスマートオーディンがヤバく見えてしょうがないのではないか。

桜花賞も好時計で決着がついた。
オークスを勝ったのは桜花賞2着のシンハライトだったけれど、2着、3着は別路線組だった。4着も5着も別路線組だった。

おっと、これだとスマートオーディンへ向かっているように思われてしまうな。
まだディーマジェスティに触れてもいないのに。

これは仮に皐月賞組に反動があった場合に備えてだ。そういう反動を心配して、池江厩舎はきさらぎ賞からの皐月賞・ダービーだったはず。
角居厩舎は、厳しい競馬を経験しないと強くなれないという確信のもとに弥生賞、皐月賞で先行させたはず。

オークスだって、1着は桜花賞最先着馬だった。

池江師や松田国師や友道師にしてみたら、皐月賞をあのペースで行って、踏ん張ったリオンディーズは脅威だろう。
角居師や松田国師や友道師にしてみたら、皐月賞で中団競馬をして、それなりに伸びたサトノダイヤモンドは脅威だろう。

というわけで、隣というよりは隣近所すべての芝生が青く輝いてみえて、ヤバいヤバいの三角?四角?五角?関係が出来上がる。それが今年のダービーのマイ・イマジネーションでございます。

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ダービー注目馬
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で、ディーマジェスティ。

蛯名騎手がダービージョッキーに執念を燃やしているのは、ここ何年かの競馬を見てれば自然に伝わってくるし、自分も「蛯名騎手をダービージョッキーにする会」が水面下に存在しているとイマジネーションを膨らまして、何年も書いてきた。

特に4年前のフェノーメノ(ハナ差2着)、2年前のイスラボニータ(3/4馬身差2着)はダービージョッキーの称号を掴みかけたところで、抜けて行って、相当悔しい思いをしたはずだ。

でも、逆に言えば、ダービー2着馬の手応えは十分に掴んでいるとも言える。きっとそれは馬選びの財産となっているはずだ。

その蛯名騎手が選んだのがディーマジェスティ。
2歳戦でいろんな新馬に騎乗して、春のクラシックに向かう馬を決めるのが名手系で、蛯名騎手にもそういう面が見られていたけれど、この世代では有力馬をあまり抱えていない印象があった。

でもどうやら、それはディーマジェスティがいたからではないか?と少しずつ少しずつ思うようになった。それだけディーマジェスティにたしかな手応えを感じていたのかもしれない。

だとしたら、怖いし、ヤバい。
今年は早々と腹をくくっていたか。この馬でダービーに行けなかったら、終了で構わない。
そんなくくり方。

皐月賞では、有力馬がみんな、それぞれの信念でダービーを意識して競馬をしていたと思っているけれど、それはディーマジェスティにも言えたはず。っていうか、ディーマジェスティは完全にダービームードで競馬をしていたように思う(マカヒキはちょっと違う。けっこう本気で皐月賞を狙っていたように思っている。ディーマジェスティの強さを少し低く見積もっていたための敗戦ではなかったか)。

後方から行って、どこまで詰められるか?
なんて思っていたら、思った以上のペースになって、間に合ってしまった。
そんな1着か。

それゆえにか、ディーマジェスティは皐月賞を1着したのにダービーでは1人気になりそうにない。
ちょっとフロック視もされているか?
いや、フロックとは誰も思っていないだろう?フロックではあの時計で皐月賞を勝てるはずがない。
ただ皐月賞は展開に恵まれたとは思われているかもしれない。
実は自分も展開に恵まれたと思う派だ。

でも、だからダメということではない。今回も展開に恵まれればいいだけだ。
そして、今回も展開に恵まれるような気がしてならない。

ここで言う展開とはペースのことではない。
有力馬たちの位置のことだ。

リオンディーズは今回は先行しないような気がする。だからといって後方待機とも思えない。Mデムーロは去年ドゥラメンテで勝ったときの7、8番手くらいを狙っているのではないか。
それは去年、14番手くらいで競馬をして、3着に負けたルメールにも言えそう。
そして、マカヒキは今回も後方待機。

皐月賞と同じようにMデムーロとルメールを前に置いて、蛯名騎手は競馬ができそう。これは好都合ではないか?
特にルメールは、道中無駄な動きをせずにスマートに競馬をするから、マークするのに便利に思える。もし、蛯名騎手がハナ差2着に敗れたフェノーメノよりも手応えを感じているのなら、フェノーメノと同じような7、8番手を狙いそう。つまり、皐月賞のような後方待機ではなく、Mデムーロやルメールのすぐ後ろくらいにいそうと思うわけだ。

本来ならば皐月賞馬にみんなが敬意を表して、レースが進められるのかもしれないけれど、今年は有力馬が多くて、みんな隣の芝生はヤバいと思っていそうだから、マークは分散しそう。それも蛯名騎手には好都合ではないか。しかも、Mデムーロもルメールも勝ちに行く競馬をする。するに決まっている。だから蛯名騎手も頑張れる。そんな妄察。

かくて、ダービーも蛯名騎手に風が吹く。

ディーマジェスティが負けるとしたら、サトノダイヤモンドかスマートオーディンと思っているけれど、今年のダービーは蛯名と決めたから、これ以上は考えない。だから当然、けしからん夢を描くのもやめておく。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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