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泥まみれの女王!史上初の3冠牝馬チャームアスリープ/関東オークス

  • 2016年06月14日(火) 18時00分
DGに魅せられて

▲チャームアスリープ(船橋)とグレイスティアラ(JRA)の名勝負 2006年の関東オークスを振り返る(撮影:高橋正和)


偉業達成の瞬間、場内は大きな歓声に包まれた


 6月15日(水)、川崎競馬場で行われる『第52回関東オークス』。2000年からダートグレード競走となり、JRAと地方競馬の3歳牝馬のダート女王決定戦となりました。例年JRA勢が優勢ではありますが、ここに至る臨戦過程はさまざまで初対戦となる馬も多く、力の比較が難しいレースです。

 また同時に関東オークスは、南関東牝馬3冠路線を締めくくる戦いでもあります。1戦目・桜花賞は浦和の左回り1600m、2戦目・東京プリンセス賞は大井の右回り1800m、関東オークスは川崎の左回り2100m。

 開催競馬場も距離も異なり、さらに3戦目はJRA所属馬たちが加わるダートグレード競走とあってこの3戦すべてを制するのは至難の業。これまで3冠を達成したのは2006年のチャームアスリープ(船橋・佐藤賢二厩舎)1頭のみとなっています。

 今回はまず、チャームアスリープが史上初の南関東牝馬3冠の栄光に輝いた2006年の関東オークスを振り返りたいと思います。

 この年1番人気に推されたのは牝馬ながら全日本2歳優駿、兵庫CSなどを制した重賞3勝のグレイスティアラ(JRA・手塚貴久厩舎)。2番人気はJRAの芝のクラシック路線を歩んできたシェルズレイ(JRA・松田国英厩舎)。そして3番人気が浦和・桜花賞、東京プリンセス賞を制した2冠馬チャームアスリープ。さらに前走、芝のスイートピーSに出走したモンヴェール(JRA・畠山吉宏厩舎)が4番人気と続きます。

 コーナーを6回まわる2100m戦。JRAから転入初戦・川崎のフローレンスガールが逃げ、モンヴェールは3番手。少しかかり気味だったグレイスティアラは中団後方。その前にチャームアスリープ。レースはスローペースで淡々と進みます。

 2周目の3コーナーで外からモンヴェールが動き、それに続くようにグレイスティアラ、チャームアスリープも上がっていきます。直線に入るとグレイスティアラが先に抜け出し、2番手内にモンヴェール。さらに外からチャームアスリープが力強く追い込み、グレイスティアラを追い詰めて2頭並んだところがゴール!

 僅かクビ差でチャームアスリープが1着。南関東競馬史上初の3冠牝馬誕生の瞬間、川崎競馬場の場内は大きな歓声に包まれました。

 鞍上・内田博幸騎手はレース後のインタビューで「並べばしっかり伸びて、必ず交わしてくれる馬です」と、高く評価。稍重の馬場で、顔も体も、ピンクのシャドーロールも泥んこになりながら差し切ったチャームアスリープ。体中に付いた泥は、一生懸命走り、追い込んで勝った勲章です。その姿は最高に素敵で、美しく輝いていたことを今でも忘れられません。

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▲一生懸命走り切ったその姿は、最高に素敵で美しく輝いていた(撮影:高橋正和)


 2008年に引退し、繁殖入りしたチャームアスリープ。ローレルアウェイク(2009年生まれ、父キングヘイロー)、パラボリカ(2010年生まれ、父ゴールドアリュール)、イントゥレジェンド(2011年生まれ、父マヤノトップガン)等の産駒に加えて、今年2016年には父セレンの牡馬が誕生しました!

 実はチャームアスリープの馬主だった山口美樹(やまぐちよしき)さんは、セレンの馬主となった山口圭子(やまぐちけいこ)さんの亡き夫。山口ご夫妻の夢の結晶である2頭の子供は、我々地方競馬ファンにとっても夢の配合です。ちなみに13歳になった現在も、前年に続いてセレンの仔がお腹にいるそうです。この父母の産駒がどんな走りを見せてくれるのか、デビューの日が今から楽しみでなりません。

昨年の覇者との共通点が多いディーズプラネット


 それでは『第52回関東オークス』、今年の出走馬を紹介していきましょう。

 最初に取り上げるのはディーズプラネット。昨年の覇者ホワイトフーガ、2008年のユキチャンと同じクロフネ産駒。さらに前走、牡馬に混じって端午S(OP)を制しての臨戦過程もホワイトフーガと同じ。後方馬群で脚をため、直線勝負で馬群を割って抜け出しての勝利で、その戦いぶりからも距離延長は好材料です。

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▲前走、牡馬に混じって端午Sを制したディーズプラネット(C)netkeiba.com


 同じくクロフネ産駒のアルセナーレ。初勝利はデビューから8戦目と遅かったものの、続く4月10日中山の500万下を連勝。このレースには先日、東京ダービーを制したバルダッサーレも出走していました(8着)。逃げて結果を出しており、今回も前に行きたい1頭です。

 タイニーダンサーは、中央転入後2戦、結果が出ていませんが、ホッカイドウ競馬時代にエーデルワイス賞と北海道2歳優駿の2つのダートグレード競走を制している素質馬。これらのレースでは北海優駿を勝ったスティールキング、浦和・桜花賞を勝ったモダンウーマンも破っていることからも、本来の力を発揮できれば十分上位争いができる存在。

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▲ホッカイドウ競馬所属時代のタイニーダンサー(レースは栄冠賞、撮影:田中哲実)


 キャリア3戦のブライトリビング。前走・東京の500万下では大外枠からの競馬で好位を進み、直線で牝馬らしい切れ味を見せて1着。トランセンド、ナイキマドリード、クラーベセクレタなどダートの活躍馬を多く出しているワイルドラッシュ産駒です。

 JRA勢を迎え撃つ地方勢ですが、今年はリンダリンダ、モダンウーマン、スアデラら南関東牝馬クラシック戦線で上位にきていた馬たちが東京ダービーに参戦。そのため例年に比べると手薄な状況かもしれません。

 そんな中、東京プリンセス賞で4着だったワカチナ、5着だったポッドガゼール、6着だったエメンタールベルン、7着だったマテリアメディカがどこまで食い込めるか、期待しています。

 昨年の覇者ホワイトフーガが秋にJBCレディスクラシックを制したように、この後は古馬牝馬の重賞戦線にも繋がっていく大事な戦いです。最初に述べた通り臨戦過程もさまざまで、一筋縄ではいかないレース。すべての馬にとって初めて経験する2100m戦だけに、展開はもちろん、騎手の手腕にも注目して観戦したいと思います。

※次回の更新は6月28日(火)の18時。ホッコータルマエも参戦予定の「帝王賞」をお届けします!



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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