スマートフォン版へ

エイシンヒカリをはじめ日本馬4頭がコックスプレートの招待リストに

  • 2016年06月15日(水) 12時00分


豪州における春の最強馬を決めるレース・コックスプレート

 豪州スプリングカーニヴァルにおける10F路線の最高峰、G1コックスプレート(10月22日、ムーニーヴァレイ競馬場、芝2040m)の第1次招待リストが9日(木曜日)に発表され、11頭の招待馬リストに4頭の日本調教馬が含まれていることが明らかになった。

 今後、主催者であるムーニーヴァレイ競馬協会から、関係者に対して文書で招待が届くのは、エイシンヒカリ(牡5)、モーリス(牡5)、キタサンブラック(牡4)、ラストインパクト(牡6)の4頭である。

 春の豪州競馬を代表するレースと言えば、G1メルボルンC(芝3200m)があまりにも有名だが、そのメルボルンCと対峙する春の基幹競走として関係者やファンから篤い支持を受けてきたのが、豪州競馬繁栄の礎を築いた人物で、ムーニーヴァレイ競馬協会の創設者でもあるウィリアム・サミュエル・コックス氏の名を冠し、1922年にスタートしたコックスプレートである。

 メルボルンCの、国を代表する一大イベントとして地位は揺るがないものの、一方で、メルボルンCの3200mという距離は、短距離戦や2歳戦を重視する豪州の競走体系からするといかにも異端で、しかもハンデ戦であるゆえ、チャンピオン決定戦という性格は帯び難いのがメルボルンCである。それでは、豪州における春の最強馬を決めるレースは何かといえば、距離2040mの馬齢重量戦であるコックスプレートが、その位置にある競走なのである。

 過去の勝ち馬を見れば、20世紀前半のファーラップ、アヤックス、20世紀後半のハイドロジェン、キングストンタウン、サンライン、そして今世紀に入ってからのマカイビーディーヴァなど、豪州競馬史を彩る錚々たる名馬たちがずらりと並んでいる。

 1999年から2005年まで施行されたエミレイツワールドシリーズでも、その一角に名を連ねていたから、日本にもご記憶のファンの方が多いと思う。

 コックスプレートは2011年から国際招待競走となり、海外から遠征する馬たちの渡航費用はすべて主催者が負担する「完全招待制」として施行されている。2014年には愛国のエイダン・オブライエンが管理し、ライアン・ムーアが騎乗するアデレイドが優勝し、招待馬による初優勝が実現している。

 今年の総賞金は305万豪ドル(約2億4千万円)、1着賞金180万豪ドル(約1億4200万円)で、豪州における馬齢重量戦ではザチャンピオンシップスのG1クイーンエリザベスS(芝2000m)次ぐ2番目という豪華版である。

 招待競走となって以降、本番まで5か月余りとなったこの時期に、主催者から第一次招待リストが出るのが恒例となっている。この段階で招待リストに名前が載っているのは、あくまでも、主催者が来て欲しいと願っている馬たちで、例えば2012年には欧州に出現した史上最強馬フランケルにも招待状が届いている。

 ちなみに今年、現時点で日本馬以外に招待リストに名前のある7頭のうち、4頭は15日(水曜日)のG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)に名前の挙がっていた馬である。具体的には、英国調教馬のタイムテスト(牡4)、ザグレイギャツビー(牡5)、トリスター(セン5)、愛国調教馬のハイランドリール(牡4)である。残る3頭は、4月のG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)を制した香港調教馬ワーザー(セン4)、昨年秋にG1カナディアン国際(芝12F)を制している英国調教馬キャンノックチェイス(牡5)、先日のG1イスパーン賞(芝1800m)でエイシンヒカリの4着だった仏国調教馬ヴァダモス(牡5)だ。

 舞台となるムーニーヴァレイ競馬場は、左回りコースで、馬場は平坦。日本馬でも充分に対応可能なトラックである。ただし、最後の直線が173mと極めて短く、極端な後方一気はなかなか通用しない馬場である。逆に言えば、2000m〜2400m路線の水準が極めて高く層も厚い日本から、ある程度先行出来る馬を選んで送れば、十分に勝機のあるレースと言えよう。

 ただし、である。日本馬にとっての問題は、その開催時期だ。

 10月22日と言えば、G1天皇賞・秋(芝2000m)の1週前である。2000mに適性のある一流馬ならば、日本人にとっては特別の意味がある競走で、しかも種牡馬選定の観点からも極めて重要視されている天皇賞・秋を目指すのが当然で、これを見送って豪州へ行くという選択肢は、なかなか取りづらいのが実情であろう。

 日本馬の参戦が、現実的には容易ではない状況にあることは、主催者のムーニーヴァレイ競馬協会も承知しているが、それでも4頭の日本調教馬に招待状を出したのは、日本との関係強化を何とかして図りたいという、主催者側の強い意思の表れであると、ムーニーヴァレイ競馬協会のチーフエグゼクティヴを務めるマイケル・ブロウウェル氏は語っている。「世界の舞台で力を発揮している日本と強い絆を築きたいと、当協会は考えています。日本はワールドクラスの中距離馬を生産しており、彼らはコックスプレートでも主力となる力量の持ち主です」。

 今後、招待状を受け取った11頭の中から、どの馬が招待を受け、地元馬を含めてどのようなメンバーになるのか。果たしてそこに、日本調教馬の名前はあるのか、コックスプレートを巡る動静を、今後もフォローしていきたいと思う。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング