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おもしろくて不思議なスポーツの記録

  • 2016年06月18日(土) 12時00分


世界一の評価を受けたエイシンヒカリ

 プリンスオブウェールズSに挑戦したエイシンヒカリ、残念でしたね。

 レース前、アスコット競馬場のあるロンドン周辺は豪雨に見舞われたそうです。不良のイスパーン賞をブッチ切りで制しただけに、これは好材料、という見方もありましたが、希望的観測は木っ端みじんに打ち砕かれちゃいました。当日の馬場は“チンピラ”とは訳が違う“凶悪”な不良。そんなところで走ったことのない馬にとっては、走る気をなくす手強さだったのでしょう。大敗も仕方ありません。今後のこともあるので、しっかりリフレッシュしてもらいたいと思います。

 ところで、ワールドベストレースホースランキング=WBRHRで世界一の評価を受けたばかりの同馬が、あのような惨敗を喫したわけですよね。だったら、「今回勝ったマイドリームボートはどれだけ強いんだ?」って話になってもいいはず。でも、そうはなりません。ここが、競馬の難しいところでもあります。

 私個人の見解ですが、WBRHRというのは、「さまざまなレースで競走馬が見せたパフォーマンスのレベルを評価するもの」と解釈しています。エイシンヒカリを例に取れば、同馬のイスパーン賞の走りっぷりが、今年これまでの世界ナンバーワンパフォーマンス、ということ。「あの時のあの馬は強かったね」という証しがレーティングだと思うのです。だからと言って、エイシンヒカリをけなすつもりは毛頭ありません。どうか誤解のないように。

 今週、イチローが日米通算4257本目のヒットを放ち、その数がピート・ローズのメジャー記録を上回りました。これをどう評価するかについては、いろいろな意見があります。

 でも、メジャーリーグの最多安打記録保持者はピート・ローズで間違いありません。日米通算の最多安打記録を更新し続けているのはイチローです。どっちが世界一か?という話ではないですよね。他にそういう記録を作った人がいないんですから、どっちも世界一、じゃないですか?

 それでもなお、どちらが世界一かを決めたいというのなら、“机上の計算”に持ち込むしかないのでは?そう思って、試しに計算してみました。イチローが、日本で初めて首位打者になった94年の翌年、95年(21歳5カ月)からメジャーでプレーし始めたとします。そこからの6年間(日本で活躍したのは2000年まで)に、実際に移籍した2001年からの6年間と同じ、1354本のヒットを打っていたとしたら、現時点でのイチローのメジャー安打数はとっくにローズの記録を更新し、4330本以上は打っている、という計算になります。95〜00年が上記の9割だったとしても約4200本には達していて、今ごろはローズの記録まであと5〜60本ほどに迫っていたはず。じゃぁ、どっちが世界一でしょう?

 ヘンな計算しちゃって、どうもスミマセン。なにはともあれ、スポーツの記録って、おもしろくて不思議なものですね。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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