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今年の新種牡馬は掘り出し物ばかり(辻三蔵)

  • 2016年06月21日(火) 18時00分


◆個人的に驚いたタートルボウル産駒シーハリケーンの変わり身

 6月から始まった2歳新馬戦では新種牡馬の活躍が目立つ。6月4日の東京5Rメイクデビュー東京(芝1400m)でジョーカプチーノ産駒のマイネルバールマンが勝ち、2016年のファーストクロップサイアーでJRA初勝利第1号となった。その後、ルーラーシップ、ストリートセンス、タートルボウル産駒が中央競馬で勝ち名乗りを挙げている。

 個人的に驚いたのはタートルボウル産駒のシーハリケーンの変わり身だ。新馬戦(阪神芝1400m)は見せ場もなく、9着に大敗。パドックでは厩務員に引っ張られる感じで歩いており、前を歩く馬にどんどん離された。体が伸び切った胴長の体型は中距離馬のような印象を受けた。

 しかし、2戦目の未勝利戦(阪神芝1400m)で文字通り一変。中1週にも関わらず、馬体重は20キロ減の470キロ。パドックでは馬体がギュッと引き締まり、胴が詰まったマイラー体型に変わっていた。しかも厩務員を引っ張り、前向きに歩く姿は別馬のようだった。

 レースでは気合を入れてハナに立つと、果敢に先行。直線では闘志を剥き出しにして後続の追撃を振り切った。ブービー人気(7番人気)の単勝80.7倍が示す通り、叩き2戦目でこれだけ変わる馬も珍しい。

 直前の栗東坂路での調教時計が[4F54秒1-3F39秒6-1F13秒8 一杯]。終いはバテたが、これでも4F時計は前回と比べて2秒近く詰めている。前半のラップを速めることで走る気を促し、実戦での変貌につながった。

 6月19日の東京5Rメイクデビュー東京(芝1600m)で2着したファストソレルもタートルボウル産駒。スタート自体は遅かったが、押してハナに行き、2着に踏ん張った。

 ハードトレーニングでおなじみの田村康仁厩舎らしく、坂路2本追いと坂路(1本追い)→美浦ウッドコース(5F追い)のインターバル調教を行い、ビシビシ鍛えていた。

 タートルボウルはノーザンダンサー系種牡馬。現役時代は仏マイルGIを勝っているが、欧州での産駒実績を調べると、マイルから芝長距離路線まで幅広く活躍馬を出している。本質的にはスピードよりもスタミナが勝っており、先行して持久力を生かすタイプなのだろう。ただ、気性面ではおっとりとした一面もあるので調教では厳しく動かすことで気合を乗せた方が良い。タフな欧州血統らしく、運動量を増やしてもへこたれない体力も魅力だ。

 一方、ソフト調教が合うのはルーラーシップ産駒。6月12日の東京5Rメイクデビュー東京(芝1800m)ではルーラーシップ産駒のイブキ、レジェンドセラーがワンツーフィニッシュ。両馬が美浦ウッドコースで「4F追い」を主流に行う奥村武、木村哲也厩舎に所属しているのが興味深い。

 産駒の特徴として気性が勝った面があり、入厩期間を3週間ぐらいに設定し、調教を詰め込めすぎないように細心の注意を払う。本質的にスタミナがある血統背景なので、調教では上がり重点の調整を行い、瞬発力強化を促す。

 ルーラーシップは晩年、出遅れ癖に悩まされたが、産駒も精神面で追い詰めないことが必要だろう。調教量をセーブし、気持ちを整えることで実戦でも好結果を出している。

 また、新馬戦に滅法強いのがストリートセンス産駒。昨年まで導入された持ち込み馬(外国産含む)の新馬成績は[5-2-0-2](勝率56%、複勝率78%)。今年、日本で共用された初年度産駒もロジセンスが6月11日の東京5Rメイクデビュー東京(芝1400m)で初勝利を挙げている。2013年のエルムSを勝ったフリートストリートの影響でダート向きの印象はあるが、芝でも走るのが特長だ。

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