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上り勝負、鞍上の好判断が光ったストロングサウザー/マーキュリーC・盛岡

  • 2016年07月19日(火) 18時00分

(撮影:武田 明彦)



全体として次につながる競馬になったかといえば…

 レースはスカパー! での観戦だったのだが、当日競馬場で行われていたトークイベントで、『テシオ』の松尾康司さんが「今日は馬場が全体的に速いので、マーキュリーCは2分3秒台の決着になるのではないでしょうか」と話していたが、そのとおり、というかそれ以上にタイムは速く、2分2秒4という決着だった。

 盛岡競馬場のダートコースは馬場状態よりも砂の厚さなどによってタイムが大きく左右されることがあり、たとえば一昨年のマーキュリーCではナイスミーチューが2分1秒9というレコードを叩き出し、さらにその3カ月半後に同じ盛岡2000mで行われたJBCクラシックでは、コパノリッキーが2分0秒8という驚異的ともいえるタイムで逃げ切った。そして昨年は前半がドスローだったとはいえ、途中からまくっていったユーロビートが直線突き放しての勝ちタイムは2分7秒8。マーキュリーCが盛岡で行われるようになった2000年以降の勝ちタイムでは、昨年がもっとも遅いもので、一昨年がもっとも速いタイム。勝ちタイムはかなりまちまちで、タイムだけをもってその年のレベルを判断するのは難しい。

 レースは淡々と流れ、4コーナーを回るところでは7頭がずらりと横に並んでの追い比べ。ラチ沿いを突いたマイネルバウンスは伸びなかったが、内から2頭めのストロングサウザーが直線で突き抜けた。田辺騎手が「スローペースになったのもよかったです」と言っていたように、道中スローに流れて、直線ヨーイドンという展開だった。

 それはラップタイムを見ても一目瞭然。最初の3Fが36秒9で、上り3Fは36秒0。走破タイムを前後半で分けてみると、前半1000mが62秒3で、後半1000mが60秒1というもの(公式発表は走破タイムと、上り4F、3Fのタイムのみ。それ以外はレース映像での計測)。まさに4コーナー手前から上り勝負の競馬だった。

 この日の盛岡競馬場のレースを見ると、4コーナーではラチ沿いをかなり開けて走っている馬が目立った。おそらく内が重かったのだろう。しかしストロングサウザーは内を突いて抜け出した。14頭立ての13番で、向正面では馬群の外目を追走していたのが、3コーナーから内に進路をとっているので狙っていたのだろう。田辺騎手の好判断によってもたらされた勝利だった。

 2馬身差がついて接戦の2着争いは、タイムズアローが直線を向いて一瞬先頭に立つ場面があって、逃げていたマイネルバイカをハナ差でしりぞけた。そして4コーナーで大外を回したユーロビートが1/2馬身差で4着。タイムズアローとユーロビートの差は、通ったコースの差だけだった。

 連覇のかかるユーロビートが単勝5.4倍の3番人気だったのに対して、タイムズアローは49.2倍の9番人気。昨年のこのレースでタイムズアローはマイナス19kgの大幅馬体減などもあって4着だったが、その後のユーロビートとの対戦では、続く東京記念ではユーロビートが先着したものの、浦和記念ではタイムズアローが先着と、1勝1敗のタイ。そのほか地方馬同士の重賞では両馬ともにほとんど掲示板を確保と善戦していて大差はない。ダートグレードを勝ったユーロビートに対して、タイムズアローの重賞タイトルは報知グランプリカップだけ、という印象だけで人気に大きく開きが出てしまったといえそうだ。

 57〜58kgを背負っても地方のダートグレードでは堅実に上位に入っていたソリタリーキングだが、地方のダートグレードではじつに18戦目にして初めて掲示板を外す7着。4コーナーを回るところで前7頭横一戦から一段うしろの8番手、そこから58kgを背負ってのヨーイドンではさすがに厳しかった。7カ月の休み明けに加えて年齢的な衰えもあったのかどうかという判断は、次走へ持ち越しとしたい。

 ぼくも本命にはしたが、ケイアイレオーネが単勝で1番人気に支持されたのにはちょっとびっくりだった。マイネルバイカのぴたりと2番手を追走したが、直線を向いての追い比べで失速して8着。中央時代もときに二桁着順の大敗はあったので、今回は走れる状態にはなかったというだけなのかもしれない。

 全体として、次につながる競馬になったかといえば、正直難しい。勝ったストロングサウザーこそ5歳でダートグレード2勝目ということでは今後の期待もできるが、1秒以内で2〜5着の4頭は7、8歳馬で、グレード未勝利か1勝馬。ここからの上積みというのも期待しにくい。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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