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波乱の歴史が続く、難解な結末/中京記念

  • 2016年07月25日(月) 18時00分


関屋記念の新潟は合うかもしれない

 荒れることで知れ渡る一戦。予測されたように、人気は上位6番人気までが単勝オッズ「10倍」以下に分散したが、勝ったのはそこには入らなかった7番人気のガリバルディ(父ディープインパクト)。2着にも伏兵6番人気のピークトラム(父チチカステナンゴ)が粘って入り、上位「1〜3番人気」に支持された3頭は、順に「10着、12着、15着」の凡走だった。

 波乱の歴史は守られたことになり、中京記念の1番人気馬はついに「17連敗」となり、最近10年間で上位3番人気までに支持されて勝ったのは、2011年の2番人気ナリタクリスタルだけ。

 1600mになった2012年以降、連対した計「10頭」は、すべて5番人気以下の伏兵に限定されることになった。人気が分散しているので、今年はそう高配当になったわけではないが、人気上位馬がどこにもいないという点では、難解な結末だった。そろそろ人気上位馬も1頭くらいは好走できるかと考えたが、逆張りは甘かった。

 ガリバルディに騎乗していた福永祐一騎手(39)は、この週だけで9勝の固め勝ち。コースロスは承知で直線は「外に回る」騎乗が次つぎと決まった。ガリバルディは外の13番枠だったから、最初からずっと芝状態のいい外を回り、馬群に突っ込む素振りもなかった。

 ルメール騎手の1番人気馬ダッシングブレイズ(父キトゥンズジョイ)と、田辺騎手の2番人気トウショウドラフタ(父アンライバルド)は、もともとインを狙うことも珍しくないタイプだから仕方がないが、なんとか馬群の外に回るチャンスはないものかと、道中で外に出すスペースを探す気配がなかったのと好対照だった。人気の2頭は内で馬混みをさばけなかった。中京記念の難しさは、なにも芝コンディション(今年の場合は最後の直線は外に出した馬有利)だけが要因ではないが、先週まで好タイムが出ていても、「これで最終週になったら、内を衝いたら明らかに不利だろう」という1週前からの素直な予測が必要だったかもしれない。

 この時期は、どの競馬場も馬場が天候に左右される心配が大きいから芝コンディションの整備は大変なことだが、中京競馬場はこの春、芝状態がたった1週で著しく変わったことで日本中のファンに驚かれたから、さすがに今開催の場合は、最終週とはいえ「先週の今週で激変はありえない」と考えるべきだったのだ、というすごい読みも聞こえたりした。

 かつて、「七夕賞」の1番人気馬が26連敗もしたことがあった。30年以上も前の、秋の福島最終週だから、それは馬場の整備は大変だったのである。1番人気馬の歴史的な連敗をファンは大いに喜んだが、当時の担当者はつらかったろう。梅雨時を乗りこえた中京記念も、馬場の内側の芝が傷んでしまうのは仕方がないことなのだ、と現実の中京コースも発表してしまったほうがいいかもしれない。使用する回数が増え、雨にたたられたりする季節である。開催の後半に芝が傷むのはごく当然なこと。自然(天候)にさからってまで、ずっと馬場の内も外も大きな差のない芝を保つほうが人為的すぎる、と。

 勝ったガリバルディは、オープンに上がった今年はやや足踏みしていたが、マイル戦を中心に重賞で活躍したマルカシェンク(父サンデーサイレンス)や、ザレマ(父ダンスインザダーク)の下になる注目馬。このあとはサマーマイルシリーズの関屋記念になる可能性があるが、上のマルカシェンクは08年に福永祐一騎手とのコンビで、上がり勝負になった「関屋記念」を1分32秒8で快勝している。超スローで自身の上がりは32秒3だった。少々タイプは異なってもガリバルディも関屋記念の新潟は合うかもしれない。2歳夏の18頭立ての新潟の新馬1800mを2着している。

 2着したピークトラムは、追い込みタイプが上位を占めた中、「47秒2-46秒4」=1分33秒6の流れに巧みに乗り、もう少しで押し切れそうな惜敗だった。こちらは春の谷川岳Sを勝っているほか、ハープスターの勝った新潟2歳Sを3着した星もあり、2着イスラボニータとはタイム差なしの記録がある。8月14日の関屋記念は最初から予定に入っているはずである。3世代を送っただけで急逝したチチカステナンゴ(グレイソブリン→フォルティノ直父系の芦毛)は、残念ながら日本ではまだ重賞勝ち馬を出していないが、この馬は1分32秒1(京都)の記録もあり、自在型の強みが全開するときチャンスがありそうに思える。

 1番人気ダッシングブレイズの凡走は、前述のようにルメール騎手が馬場状態をつかみ切れていなかったことが大きいだろう。詰まって伸びる気力を欠いたあたり、道中もまれすぎたのも敗因のひとつか。イン強襲の勝ち星も、大外一気の勝ち鞍も、両脇の馬を封じてすり抜けた印象がないから、今回のように終始馬群の中は歓迎ではないかもしれない。

 2番人気トウショウドラフタも、ごちゃついた馬群を気にして下がってしまったあたり、まだ多頭数の接戦は慣れていなかった。NHKマイルCでもスペースを探すのに苦労したあたり、厳しいレースの経験不足が、初の古馬との対戦でもまれ弱さに映った。イン狙いは無理だった。

 3着に突っ込んだ4歳ケントオー(父ダンスインザダーク)は、ここまで計6回の連対が「9、7、5、7、3、4番人気」というちょっと地味なタイプだが、今回の組み合わせを56キロで好勝負したから立派。それも良績なしの左回りだった。少し時計がかかる馬場が合う。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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