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見えてきた日本最多勝記録

  • 2016年08月05日(金) 18時00分


◆サンタアニタトロフィー勝ちは地方通算6901勝目

 あっ、ここで来るのか!と、レースを見ていて思ったのが、サンタアニタトロフィーをリアライズリンクスで制した的場文男騎手。すでに報じられているとおり、自身の持つ地方競馬最高齢重賞勝利の記録をまた更新した。

的場文男騎手鞍上のリアライズリンクスがサンタアニタトロフィーを制した


 ところで、ちょっと気になっているのが、地方競馬全国協会のウェブサイトでも使われている“最高齢重賞勝利”という表現。“高齢”というのは絶対的な年齢の表現で、“高齢者=おじいさん”というような印象を受ける。ここは相対的な表現として“最年長重賞勝利”としたほうがいいように思うのだが、どうだろう。まあそれはここでの本題ではないので、置いておく。

 的場騎手の地方競馬最高齢重賞勝利の更新記録は以下のとおり。

 2014年4月16日 川崎・クラウンC(ワタリキングオー) 57歳7カ月9日
 2015年5月6日 船橋・東京湾C(ドライヴシャフト) 58歳7カ月29日
 2016年3月30日 川崎・クラウンC(ガーニーフラップ) 59歳6カ月23日
 2016年5月18日 大井・大井記念(ケイアイレオーネ) 59歳8カ月11日
 2016年8月3日 大井・サンタアニタトロフィー(リアライズリンクス) 59歳10カ月27日

 スゴイと思うのは、2014、2015年には重賞1勝ずつ(2014年の重賞勝利は上記クラウンCのみ)だったものが、今年はすでに3勝もしていること。もっとスゴイのは、記録更新の上記5レースのうち、ドライヴシャフト、ガーニーフラップ、リアライズリンクスの3頭は、いずれも初騎乗で重賞勝利に導いていること。

 ちなみに、ガーニーフラップのクラウンCは、主戦の中野省吾騎手が2日前のレースで使用する鞍を取り違えたことによる騎乗停止で、枠順発表後の的場騎手への乗替り。もしそのクラウンCで的場騎手に騎乗馬があったら、このコンビは実現していなかった。さらに今回のリアライズリンクスは、主戦の左海誠二騎手が7月22日のレース中の怪我でしばらく戦線離脱となって巡ってきたチャンス。運も実力のうちとは言うが、予定にはなかった騎乗で今年2つも重賞を勝ってしまったのだから、もはや神がかってるという表現も大げさではない。

 的場騎手には2010年、地方通算6000勝を達成したあと、とある競馬雑誌の企画でロングインタビューをさせてもらったことがある。そのとき、佐々木竹見さんの通算7153勝(中央2勝含む)という記録について聞いたところ、当時54歳だった(記事掲載が9月なので、9月7日のその年の誕生日は迎えていた)的場騎手は次のように答えていた。

「もう無理、無理です。トシだから。25歳か30歳くらいから、ほかの競馬場にも、もっと乗りに行ってれば、竹見さんの記録も夢じゃなかったのかなとは思いますけど、でもそうしていたら、もっと早くに衰えていたかもしれない。竹見さんの記録は、ちょっと信じられないくらいすごい記録です。比べるのは、竹見さんに失礼です」

 ここで注釈を入れておくと、南関東でも平成のヒトケタくらいまで、日常的に所属場以外の競馬場で騎乗するという騎手はほとんどいなかった。的場騎手ですら、浦和や船橋では、重賞のときか、もしくはよほど有力なお手馬が遠征するときくらいしか騎乗していなかったような印象がある。中堅以上の騎手なら所属に関係なく南関東の4場で毎日のように騎乗するようになったのは、せいぜいここ15年ほどのことなのだ。

 的場騎手のサンタアニタトロフィー勝ちは地方通算6901勝目で、その前日に6900勝を達成していた(ほかに中央4勝、海外1勝)。そのときの新聞やネットの記事などを見ると、的場騎手は自身の言葉として通算7000勝を明確な目標として語っている。

 先の2010年のインタビュー記事で、ぼくは、<5年後とは言わないまでも、7年後か8年後、60歳を過ぎたあたりで佐々木竹見の通算7153勝という記録を超えることができるのではないかと考えてしまうのである。>と書いていた。

 書いてはいたものの、半分は期待も込めて記事を盛り上げるため。もう半分は、さすがに無理ではないかと思っていたのも正直なところ。<考えてしまうのである>という表現は、実はそういう含みをもたせたものだった。

 地方通算7000勝まで、100勝を切った。竹見さんの記録までは250勝ほど。今年ここまで的場騎手は77勝(8月4日現在)。順調なら、今年も100勝はゆうに超える。32年連続33度目の年間100勝以上はほぼ確実だ。とてつもない記録である。

 2010年の記事に書いたとおりの8年後、つまり2018年頃。不滅と思われていた佐々木竹見さんの記録を、的場騎手が超えることが現実のものとして見えてきた。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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