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能力の違いを見せつけたアムールブリエ/ブリーダーズゴールドC・門別

  • 2016年08月12日(金) 18時00分

(撮影:田中哲実)



今後の路線にも注目

 実績断然のアムールブリエが、昨年経験している57kgで、このメンバーならまったく相手ではなかったということを確認したレースだった。予想で本命にしたビービーバーレルが3着だったのはまったく恥ずかしい限りだが、前走が初ダートで古馬オープンとの対戦ということでは未知の部分もあったわけで、しかし牡馬相手のグレードを勝っているアムールブリエとでは経験の差を見せつけられたという結果だった。

 スタートして速かったビービーバーレルがそのまま逃げるかと思われたが、ノットフォーマルが掛かって抑えきれず先頭に立った。とはいえそれでペースが速くなったわけではなく、2コーナーを回るあたりでペースが落ち着いた。1200m通過が1分17秒5だからどの馬にも楽なペース。それゆえ中央5頭に、地元馬では実績上位のジュエルクイーンを加えた6頭が前で一団となってレースが進んだ。

 3コーナー過ぎでノットフォーマルが徐々に後退。4コーナーでは有力5頭が2馬身ほどの圏内で、直線での力比べとなった。難なく抜け出したのはアムールブリエ。そもそもの能力差に加え、2000m以上で結果を残しているという距離適性も加わっての結果が、楽々と7馬身差。勝ちタイムは、同じ良馬場で行われた昨年よりコンマ6秒遅いだけの2分8秒7。

 門別の馬場は同じ馬場状態でも、年によって、また日によってもかなりタイムが変わるので一概に比べるわけにはいかないのだが、昨年のアムールブリエは断然人気のサンビスタと直線びっしり追い比べとなってのゴールだったのに対して、今回はまったく余裕があってのゴール。昨年はレースの上り39秒0に対して、アムールブリエ自身は38秒3の上りを記録。今年は残り600mのところでアムールブリエは先頭のビービーバーレルにクビほどの差のところまで迫っていたので、レースの上りがそのまま勝ったアムールブリエの上りとなって38秒5。昨年のように拮抗した実力の相手がいれば、タイムはさらに詰まっていたに違いない。

 盤石の競馬を見せたアムールブリエだが、このあと今年後半のレース選択は難しくなりそうだ。昨年はレディスプレリュード、JBCレディスクラシックともに4着で、「流れに乗れなかった。距離は2000m以上あったほうがいい」と浜中騎手は話していた。レディスプレリュードは毎年同じ大井の1800mだが、JBCレディスクラシックは今年は川崎の1600mと距離が短くなる。さらにその先、チャンピオンズCでは、ラニ、アウォーディーとのきょうだい対決という報道もあるようだが、牝馬同士の1800mで流れが忙しいというのでは、流れが緩むことがない中央が舞台のGIに対応するのはさらに難しい。とはいえまだ時間はあるだけに、1600〜1800mの流れにも対応できるような調教を積んで臨んでくるということは考えられる。2000m以上にこだわるなら、シリウスSもしくは白山大賞典から、JBCはレディスクラシックではなくクラシック、そして浦和記念から名古屋グランプリか東京大賞典ということになる。距離適性に目をつぶって強敵はホワイトフーガくらいしかいない牝馬同士の対戦を選ぶのか、牡馬が相手でも2000m以上の路線に行くのかは、今後注目となろう。

 直線を向いて4頭による2着争いは、残り200mのあたりで3歳馬同士の追い比べとなり、1kg重いタイニーダンサーがビービーバーレルを振り切って1馬身半の差をつけた。タイニーダンサーは、サウスヴィグラス産駒とは思えない幅広い距離適性を見せている。そういう意味では、1600〜2100mに設定されている牝馬限定のダートグレードで、今後も活躍が期待できそうだ。端午S、青竜Sでは馬群にもまれて結果が出せなかったように、馬群がバラけて息の入る流れになりやすい地方が舞台のレースでこそ力を発揮するタイプともいえそうだ。

 ビービーバーレルは、残り100mでタイニーダンサーに振り切られた。芝も含めて2000mは今回が初めてで、経験の差が出た。今後は芝でもダートでも活躍が期待できそう。

 4着は、さらに1馬身半差で地元のジュエルクイーンで、走破タイムは2分10秒8。昨年9月には同じ門別2000mのハーツクライ・プレミアムを稍重で2分9秒2というタイムで勝利、前走1800mのノースクイーンCでも重馬場とはいえ1分53秒0(2着)という好タイムで走っているだけに、自身の能力は発揮した。

 ティンバレスは、道中最後方を追走していたクライリングに交わされて6着。3着に入ったエンプレス杯では、勝ったアムールブリエから1+3/4馬身とわずかの差だったが、そのときはかなりスローに落としてのマイペースの逃げで、アムールブリエもゴールで少しでも前に出ていればいいという相手なりの競馬をしていたという展開にも恵まれてのもの。重賞・オープンの実績馬に早めに勝負にこられてしまう展開では厳しい。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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