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グレイスフルリープが圧巻の逃げ切り/サマーチャンピオン・佐賀

  • 2016年08月19日(金) 18時00分


◆昨年より時計がかかる馬場

 1番枠に入った地元のテイエムチカラがハナを主張するかとも思ったが、グレイスフルリープが好ダッシュを見せると、テイエムチカラの田中純騎手は中央オープン馬とまともに競り合ってもと思ったか、すぐに控えた。これでグレイスフルリープは難なく先頭に立ち、ピタリと追走したのが連覇を狙うタガノトネール。向正面に入ると先行した人気2頭と3番手以下とはやや離れたが、中団から早めのスパートを見せたのがワンダーコロアール。結果的に、ハンデ55kg以上で単勝ひと桁台の人気を集めた3頭の争いとなり、4着馬には6馬身差がついたから、まずは実力通りの結果だった。

 勝ちタイムの1分25秒7を見て、あれ?と思った。昨年タガノトネールの勝ちタイムが重馬場で1分26秒2。今年は乾いた良馬場ゆえ、それ以上に時計がかかると思っていたからだ。実際に過去10年の勝ちタイムを見ると、良馬場のときは1分26秒以上を要している。2009年ヴァンクルタテヤマが勝ったときは良馬場で1分25秒2のレコード(当時)だったが、このときはレースの1時間ほど前にスコールのような雨が降り、馬場の表面はかなり湿っていたから例外的な良馬場だった。

 サマーチャンピオン当日は条件戦も昨年と今年で同じような番組が組まれていて、C1級やC2級の1400m戦の勝ちタイムでは今年のほうが0.1〜0.8秒程度時計がかっていたから、やはり良馬場の今年は昨年より時計がかかる馬場だったことは間違いない。

 昨年は先行争いが激しくなって、先行3頭は総崩れ。それを前に見て4番手からレースを進めたタガノトネールが4コーナー手前で抜け出して勝利というレース。対して今年は、冒頭にも触れたとおりハナ争いにはならず、グレイスフルリープがすんなりと先頭に立って、タガノトネールはこれをマークしての追走。見た目には昨年のほうが厳しいペースに思えたが、ラップタイムを見ると、3F-4Fの通過が、昨年の36.1-48.3に対して、今年は36.2-48.2とほとんど同じ。

 タガノトネールにしてみれば、昨年より1.5kg重いトップハンデを背負い、それでいて昨年と同じペースを今度はピタリと2番手で追走したのだから、直線で失速したのもうなずける。そもそも前2走のレースぶりから昨年ほどの調子にはなかったとも考えられる。

 強いレースをしたのは、もちろん2着に4馬身差をつけて逃げ切ったグレイスフルリープだ。昨年、逃げて7着に沈んだシゲルカガと同じペースで先行して、しかも今年は乾いた良馬場で、直線さらに伸びたのだから、そのレースぶりには価値がある。昨年タガノトネールが勝ったときよりも明らかにレベルの高いレースだった。先行できなかったときの危うさはついてまわるようだが、今回のようにすんなり先行できれば確実に力を発揮する。地方コースは今回が初めてで、コーナーを4つ回るレースの経験があまりないことがどうかと思ったが、地方が舞台のダートグレードでは能力差があるメンバーが少なからずいるため、激しい先行争いになることもあまりない。むしろコーナーを4つ回る地方の1400mでこそ力を発揮するという可能性はある。

 昨年のタガノトネールとほとんど同じレースをしたのが、2着に入ったワンダーコロアールだった。前半は控えて脚を溜め、向正面中間からのスパートで先行した2頭との勝負に加わった。今回は、勝ったグレイスフルリープよりも2kg軽い55kg。準オープンは57kgで勝った経験があるが、オープン入りしてからは56kgまでしかないので、グレードで勝ち負けするには、もうワンランクのパワーアップか、よほどメンバーに恵まれるかが必要と思われる。

 地方勢では、馬券圏内からは離れていたものの、今回もがんばったのは高知勢だった。ミッキーヘネシーは10番手からの追走とはいえメンバー中最速の上り3F37秒3で掲示板に食い込む5着。そしてスタート後の直線で先頭のグレイスフルリープに並びかけようかという勢いがあったのがカッサイ。普通なら最後は失速してしまいそうなところだが、ミッキーヘネシーに4馬身差で6着に入った。どちらもダートグレードは初挑戦。こうした経験が間違いなく今後のレースで生きてくる。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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