前回とはまさに一変
秋の天皇賞2000mに向けて始動する
モーリス(父スクリーンヒーロー)に距離延長は大丈夫だろうか。土曜日からの雨の影響は大きく、日曜日は洋芝の「重馬場〜不良馬場」になる危険が大きい。
このコンディションで札幌の2000mをこなせば、スタミナ不安の大きいマイラーどころか、一転、パワー兼備の素晴らしい万能型のトップホースの評価を受けることになるが、あまりに厳しい距離延長初戦になった。
転厩して本格化した4歳以降、体調一歩で前半からかかってしまった前回の安田記念2着以外は、マイルは無敵の6戦6勝だから、名マイラーの評価を受けるのは当然だが、外に出してかかり通しながら1分33秒2(上がり34秒0)でがんばったモーリスには、素晴らしいエンジンが搭載されていることが分かった。58キロの東京のマイル戦である。
まだ若さ丸出しだった3歳春の京都新聞杯2200mも、負けたとはいえ2分11秒5であり、本物になる途中だった昨春の中山1800mのスピカSでは、後方から大外を回って上がり33秒8(最後の1ハロンは楽々と11秒を切る勢い)だった。
2走前の香港のチャンピオンズマイルは、今回と同じモレイラ騎乗で、馬なり楽勝の1分34秒0。1600m以上の国際G1を馬なりで圧勝する馬などめったにいるものではない。検疫明けで不安を感じさせた前回とはまさに一変、今回の動きは迫力にあふれ、併せた同厩の
ネオリアリズム(父ネオユニヴァース)とは、時計だとか、脚いろだとかではなく、スケールの違いを感じさせた。
父スクリーンヒーローを送ることになった、その父グラスワンダーも、スクリーンヒーローの祖母に登場するダイナアクトレスも、最初はスピード系のマイラーと評価されていたことを思い起こしたい。
メジロ牧場が育て上げた母メジロフランシス(父カーネギー)、祖母メジロモントレー(父モガミ)、3代母メジロクインシー(父フィデイオン)の長距離向き牝系でさえ、4代母メジロボサツが朝日杯1600mを制した当時は、まだ万能系とは思われていなかった。祖母の父モガミ(父リファール)は、メジロラモーヌの父であり、シリウスシンボリの父でもある。ノーザンダンサー系リファールの評価を「体型はマイラーでも、距離延長は平気な万能型じゃないか」と認識させた種牡馬である。見方によっては首差しからマイラー型とされるモーリスの体つきは、毛色こそ異なってもモガミの影響を感じさせている。
渋馬場の洋芝2000mをこなせない危険はある。だが、一方で、2000mが不安どころか、全然平気じゃないかとなる可能性もある。危険に重きを置くか、可能性に賭けるか。モーリスの札幌記念は興味を呼ぶ。可能性に注目したい。