スマートフォン版へ

【新規開業】橋口慎介調教師(4)『好成績の秘密!?誰もいない時間に馬を見る』

  • 2016年08月22日(月) 12時01分
おじゃ馬します!

▲交流重賞サマーチャンピオンをグレイスフルリープが勝利、橋口厩舎×小牧騎手コンビで重賞初制覇(提供:佐賀競馬)


橋口慎介調教師のインタビューの最終回。今回は、開業初年度から好成績を挙げている秘密を探ります。そこには父・橋口弘次郎元調教師の背中を見て教わった、真摯な仕事ぶりが関係していました。最後には、18日の交流重賞サマーチャンピオン(佐賀)で、コンビでの重賞初勝利を果たした、縁の深い小牧騎手へのメッセージも!(取材:東奈緒美)


(前回のつづき)

大好きな小牧さん!なるべく長く現役を続けてください


 お父様ですが、引退されて最近のご様子はいかがですか?

橋口 お陰様で体調も良くなりまして、今はもうすごく元気です。この間もゴルフに行ったみたいです。

 お元気になられてよかったです。競馬もご覧になるんですか? 管理されていた馬たちのことは、気になりそうですね。

橋口 それはあるでしょうね。ほとんどが父から引き継いだ馬ですから。調教の後とかレースの後に、電話がかかってきます。「あのレースはどうやった」とか、「あれはブリンカー付けた方がいいんちゃうか」とか、そんなアドバイスをくれることもあります。

 慎介先生とお父様で似ているなと思うところはありますか?

橋口 似ていると思うところですか? スタッフからは、遠くから見ると見た目が似ているとは言われるんですけど…(笑)。どっちかと言ったら僕は母親似なので、自分ではちょっと分からないんですけどね。

 年を重ねると、年々似てくるって言いますしね。

橋口 そうなんですかね。でも、それもなんだか嫌だなぁ(笑)。

 えぇ(笑)。弘次郎先生はダンディで素敵だと思います。改めて、お父様はどんな存在ですか?

橋口 今こうして同じ職業になってみて、改めて偉大さが分かると言いますか。コンスタントにずっといい成績をキープしていたということ、定年が近づいた年にダービーも勝ったということ、そういうところが本当にすごいと思いますね。

 また、海外でも成績を残されていますし。

橋口 それもありますよね。同じ調教師としてとても尊敬しています。直接何か指導してもらったというのはあまりないんですけど、その仕事ぶりを間近で見てきましたからね。

 昔は家族でずっと厩舎に住んでいたんですけど、夜の8時ぐらいになるといつも馬を見に行くんです。どんな時でも、毎晩欠かさずに。常に観察を怠らない、そういう姿勢は見習わないとだめだなと思いますね。

おじゃ馬します!

▲「常に馬の観察を怠らない、そういう姿勢は見習わないとだめだなと思います」


 実際に実践されているんですか?

橋口 そうですね。僕は今厩舎には住んでいないので、夜の8時に見るのはちょっと難しいんですけど、スタッフが帰った後の静かな時間に見るようにしていますね。

 静かなところで見るのが大事なんですか?

橋口 誰もいなくなった後の静かな厩舎だと、馬が自然な状態を見せてくれるんです。「そういう時に一番状態が分かる」と、父も常々言っていました。それは実際そうなんですよね。やってみてよく分かりました。

 リラックスしている時ほど、しんどかったらしんどそうにしているし。

橋口 ええ。気を張っている時は、そういう素ぶりを見せなかったりしますからね。

 橋口厩舎の成績で目をひくのが、出走回数はさほど多くなくて、勝率や連対率が高いですよね。何か秘密があるんでしょうか?

橋口 秘密は特にないです(笑)。飼い葉も特別なことはやっていないですし。本当にスタッフがよくやってくれているので、うまく回っているのかなと思います。それが結果にも出ているんじゃないでしょうか。

 厩舎全体として、一番大事にしているポリシーは何ですか?

橋口 一番気をつけているのは、馬の走る気持ちを大事にすることですね。気持ちを維持してあげるというか、無くさせないことを心がけています。

 それは、先ほどの“馬をよく観察する”というのにもつながっているんでしょうか?

橋口 そうですね。よく観察しないと分からないところですからね。そのためには、僕だけが観察するんじゃなくて、厩務員や持ち乗り助手だとか、一番近くにいて馬のことをよくわかってる人にも「どう?どう?」ってしょっちゅう聞きます。乗っている人の感覚と、僕が見て感じたことをすり合わせて。そこを大事にしていますね。

おじゃ馬します!

▲「僕だけが観察するんじゃなくて、一番馬の近くにいる人の感覚ともすり合わせる。そこを大事にしています」


 これからの厩舎を担う、注目の新馬を教えてください!

橋口 期待する2歳馬と言ったら、本当に全頭がそうなんですけど、個人的に期待しているのがダノンスターズという馬です。牡馬なんですけど、お父さんがハーツクライで、お母さんがディープインパクトのお姉さん。言ったら“因縁の血統”という。

 ハーツクライとディープ、その戦いを私たちはずっと見てきましたもんね。どんなきっかけで預かることになったんですか?

橋口 去年のセレクトセールで、一番いいなと思った馬なんです。その時は「あぁ、いい馬だな」って眺めていただけなんです。「ダノックスさんが落としはったんや」と思っていて。

 それからしばらく経って、ダノックスさんが僕に馬を預けてくれることになって、「まだ厩舎が決まってない馬が何頭かいるんだけど」というお話の中で、その馬のことを思い出して、「もしかしてあの馬もまだ…?」って聞いたら、決まってないということだったので、やらせていただけることになったんです。

 ご縁ですね。

橋口 はい。その馬は本当に縁を感じてるので、そういう意味で個人的にすごく期待しているんです。馬もいい馬で、デビューは秋以降になると思います。

 ワンアンドオンリーやクラレントの秋のローテーションは決まってますか?

橋口 ワンアンドオンリーはオールカマーから、秋の天皇賞、ジャパンCのつもりでいます。クラレントは毎日王冠から天皇賞に行こうかなと思ってます。開業1年目からこうしてGIに出させてもらうのはありがたいですね。結果を出すというのは、そんなに簡単ではないですが、引き継いだ馬なのでそういう責任もありますしね。なんとかいい結果を出したいです。

 これからますます注目して見させていただきます。最後に、厩舎と縁の深い小牧騎手へのメッセージをお願いいたします!

橋口 小牧さんには、普段の調教からすごくお世話になってて、競馬でも結果を出してくれていますし、本当に頼りにしています。「太論」の読者の皆さんはよくご存じだと思いますが、人柄も本当に良い人で、僕も大好きなんです。なるべく長く現役を続けて欲しいなと思っています。

(了)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング