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サマーセール終了

  • 2016年08月31日(水) 18時00分
サマーセール

過去最高の売り上げを記録したサマーセール

過去最高の売り上げを記録


 セール期間中に台風が上陸するという前代未聞のアクシデントに襲われた今年のサマーセールだったが、3日目からは天候も回復し、何とか5日間の日程を消化できた。

 台風上陸による水害の発生で、23日〜24日の両日は、新ひだか町から西側の苫小牧方面に向けて国道235号線が通行止めになり、2日間で復旧したものの、影響が大きかった。購買者や上場馬を抱える牧場関係者が会場入りできなくなる事態に陥り、一部の馬は最終日に再上場されることになった。そのため日高軽種馬農協では、急きょ、最終日に回された上場馬の別名簿をコピーし、購買者に配布する措置を取ったが、上場順は1000番台の途中に300番台、400番台の上場馬が挟まることになり、まったく混乱がなかったとは言い難い。やはり、台風直撃によるさまざまな影響が、見えない部分にもあったのは間違いないだろう。

 にもかかわらず、セリ自体は、5日間を通じてサマーセールとしては過去最高の売り上げを記録した。最終的には牡659頭、牝608頭の計1267頭(名簿上では1366頭)が上場され、うち牡456頭、牝349頭の計805頭が落札された。

 上場頭数は昨年より28頭増加したものの、落札頭数は逆に-7頭となり、その結果売却率は前年の65.54%に対し、2%減の63.54%であった。

 売り上げ総額は40億1436万円(税込)。前年より2億2615万2000円の増加である。落札馬の平均価格は、前年より32万1502円高い498万6783円となった。

 ただ、今年は上場申し込み頭数の多さから、4日間の日程を1日延長して5日間開催としたため、予想されていた通り、最終日の数字がやや落ち込む結果になった。

 従来より、サマーセールでは、開催日によって売れ行きにややばらつきが見られる傾向があったのだが、今年はそれがよりはっきりと表れた形だ。最終日は、前記の通り、23日に上場できなかった馬たち30頭が改めてこの日に上場されたり、最後に追加としてセレクト、セレクションなどからの主取り馬や欠場馬が18頭(名簿上では20頭)上場されたこと、また初日〜4日目までと比較すると上場頭数が少なかったこともあり、数字が伸び悩んだ。

 最終日に限れば、239頭が上場され、153頭が落札されて売却率こそ64.02%を記録したが売り上げ額は6億7608万円、平均価格も441万8824円にとどまり、それまでの4日間と比較すると明らかに価格が落ちた印象だ。どの日のどのあたりの順番に上場されるかが販売者にとってはかなり大きな関心事である。同じ馬であっても、セリのムードが盛り上がる2日目か3日目の中盤あたりに順番が回ってくる場合と、最終日の大半の購買者が帰りかけていて場内が閑散とした中で上場されるのとでは、かなりイメージが異なる。まして今年のように5日間の長丁場にもなれば、どうしたって最終日の今半はある種のダレたムードが出てきて、なかなか価格が上昇しない。まして、多くの購買者は、すでに予定した頭数を落札済みであり、会場にも来場しない人も少なくない。同じようなムードを保つのは難しいのだが、全日程をできるだけ波のないように市場運営されることが望ましい。

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静内農業高校「叶夢」の落札場面

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静内農業高校上場馬「叶夢」

 さて、ひとつ明るいニュースを書いておく。4日目に登場した道立静内農業高校の生産馬のことだ。961番「叶夢(かのん)」と名付けられた父バゴの牝馬で、母はゴートゥザノース。昨年もこのサマーセールにて半姉が360万円(税抜き)で日本中央競馬会に落札されたのだったが、今年もまたお台付け価格150万円で上場され、10万円ずつの競り合いの末にまたJRA育成馬として半姉と同じく日本中央競馬会に190万円(税抜き)で落札されたのであった。

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取材を受ける静内農高生と叶夢

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静内農高のみなさんと叶夢

 今後、「叶夢」は日高育成牧場に移動し、来春のJRAブリーズアップセールを目指すことになる。半姉は未だ競走名もついておらずしたがってデビューもしていないが、またもう一度、夢の広がる明るい話題が提供されたことを喜びたい。

 なお、日高軽種馬農協の木村貢組合長は「台風によるアクシデントがあり、混乱を極める中で役職員一同、本当にできるだけのことをやってくれたと思います。またそんな不利な条件の下にもかかわらず、40億円を超える売り上げを記録できたことには十分満足しています」と語り「90点は付けられるセリでした」と結んだ。

 次回のセリは10月初旬のオータムセールになるが、これまでトレーニングセールとセレクションセール、そして今回のサマーセールと順調に売り上げを伸ばしてきており、ざっと計算すると、11億1866万円(トレーニングセール)、25億2590万円(セレクションセール)、さらに今回の40億1436万円の合計が76億5892万円となる。

 因みに昨年の全市場の売り上げ合計は84億1320万円だったので、オータムセールで7億5428万円以上を売り上げたら、昨年の実績を超えることになる。昨年のオータムセールでは656頭が上場され432頭が落札、14億7690万円という実績であった。今年は若干上場頭数が減少しそうな予感もあるが、おそらく年間の売り上げ総額は間違いなく増加することになるものと思われる。

 なお、前回紹介した2頭(牡、325番アグネスワルツ27、父ルーラーシップ、2700万円=税抜き、牝、130番ローズアダージョの2015、父キングカメハメハ、2050万円=税抜き)がそのまま牡牝それぞれの最高落札価格馬であったことを付記しておく。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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