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さらなるスケールアップを期待/京成杯AH

  • 2016年09月12日(月) 18時00分


まだこれから成長する3歳秋

 衝撃的な勝ち方で昨15年の新潟2歳Sを制したあと、この1年間は勝ち星から遠ざかっていた3歳ロードクエスト(父マツリダゴッホ)が、1600mの京成杯AHで久しぶりに勝った。

 これで、NHKマイルC2着を含め、1600m【3-1-0-0】となり、皐月賞、日本ダービーを含めた1800m以上は【0-1-1-2】となった。

 もともとコンパクトに映る体つきは完成度が高いように思われてきたが、馬体重の変化こそないものの、輪郭にメリハリの出てきた今季の体つきは、3歳春までのこじんまりまとまりかけていた印象を脱し、パンチ力強化を思わせる。

 多くの活躍馬は成長するにしたがい、ひと回り体が大きくたくましくなるケースが多いが、近年ではディープインパクト産駒、ステイゴールド産駒などのサンデーサイレンス系にはそういう傾向が少ない。「ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ」などのディープインパクト産駒も、「オルフェーヴル、ゴールドシップ、ドリームジャーニー」などのステイゴールド産駒も、引退するまで馬体重そのものはほとんど不変だった。

 マツリダゴッホ産駒のロードクエストがそれに当てはまるかどうかはまだ3歳なので判断できないが、ロードクエストの属するクレアーブリッジの牝系の代表馬といえば、古馬になって天皇賞・秋を制したサクラチトセオー(父トニービン)。ロードクエストに似た印象を与えるコンパクトに映る体型で、引退するまで馬体重の変化のない馬だった。

 ロードクエストは1600m以下なら崩れない。やっぱりマイル戦がもっとも合う、というのはここまでは事実に近いが、まだ新潟2歳Sと、京成杯AHを勝っただけ。それで1600mでこその優れたマイラーだとされるのは、素質を高く評価する小島茂之調教師にとっても、ロードクエスト本人にとっても、必ずしも嬉しくない評価だろう。まだこれから成長する3歳秋である。この秋は高い適性をもつマイル路線の頂点を目ざすことになるが、やがては「1600〜2000m」の守備範囲をもつ、マイル〜中距離でスピードと切れ味を爆発させる馬に出世したい。

 自身の中身「58秒8-34秒2-11秒6」=1分33秒0は、現在の芝コンディションもあり、予測された通りか。ただ、まだまだ余力十分だったとはいえ、同日の1000万下のハンデ戦が1分33秒5だったくらいだから、現時点ではGIIIランクである。予定のひとつとされるこのあとの富士S・1600mでは、さらにスケールアップすることを期待したい。

 6歳牝馬として2着したカフェブリリアント(父ブライアンズタイム)は、休養でひと回り体が大きくなった印象を与えるプラス18キロ。2歳秋にデビューし、3歳以降はずっと「420〜430」キロ台だったから、今回は初の450キロ台で結果を出したことになる。内枠を利した戸崎騎手の巧みな騎乗によるところ大としても、男馬相手の重賞で結果を出したのだから立派。快速系ではないから、整備方法が変わった現在の中山は抜群に合っていた。

 残念だったのは3着にとどまったダノンプラチナ(父ディープインパクト)。チャカチャカするのはもともとそういう面があるので気にならないが、減った数字以上にこじんまりみせた。1年前のこの時期、楽勝かと映ったサトノアラジン(ルメール騎手)を、外から楽々と差し切った富士S当時の力強さがなかった。香港でぎくしゃくしてスムーズさを欠くレースをして以降、爪の不安で長期休養になるなど、どうもリズムが悪いが、今回もまだ完全復調とはいえない秋のスタートになってしまった。モーリスに追いつくくらいのマイル路線の期待馬であり、1度使ってこのあと大きく変わって欲しいものである。

 3番人気に支持されたダノンリバティ(父キングカメハメハ)は、素晴らしい状態にみえた。外枠が大きな不利となったところもなく、好位4〜5番手の外で折り合っているように見えたが、外からロードクエストが進出してきたところでひるむように手ごたえを失った。コースが合わなかった面はあるにせよ、このデキで10着はちょっと負け過ぎか。

 ダイワリベラル(父ダイワメジャー)は、最内枠だから隣の戸崎騎手のカフェブリリアントのようなレースがしたかったが、ダッシュもう一歩。内枠の利を生かせる一番いい場所に先に入られてしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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