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求む!新人騎手

  • 2016年09月16日(金) 18時00分


◆意欲ある優秀な人材を広く募集する

 9月12日、地方競馬全国協会より、『地方競馬教養センター騎手課程募集の変更について』というリリースがあった。

 ひょっとして、JRAの競馬学校と騎手候補生の募集を一本化するというようなお知らせか?と思ったが、そんなことはなかった。なぜそう思ったかというと、地方と中央で交流や移籍が盛んになった現状で、騎手の養成課程が別々に存在する必要があるのかという意見も多くあり、たしかに近年では地方と中央で年間に一桁の人数しかデビューしないような状況で、そのための施設や人的な資産が別々に存在するのも無駄ではないかと思うからだ。騎手養成の一本化は、将来的に検討されるべき課題と思う。

 さて、『地方競馬教養センター騎手課程募集の変更について』だが、主な変更点は以下のとおり。

 (1)春・秋の年間2期制への移行
 (2)入学金及び授業料徴収を廃止
 (3)入所試験での体重制限の緩和

 (1)について、かつて2004年度までは春(4月)・秋(10月)の2期制での募集だったものが、候補生の減少にともない2005年度からは4月入所のみとなっていたものが、再び2期での募集となる。12名×2期(年間24名)程度の募集になるとのこと。

 (2)については、近年、2年間の騎手課程では入学金・授業料で併せて704,000円必要だったものが無償となる。

 (3)については、これまで年齢に応じて1kg刻み3段階で設定されていた体重制限が、0.5kg刻み7段階に緩和される。

 こうした変更の意図として、リリースには「意欲ある優秀な人材を広く募集することで、安定的に新人騎手を輩出し、魅力あるレースを提供、地方競馬のさらなる発展に向けて努めてまいります。」とある。

 たしかに、90年代の地方競馬では半年ごとに10〜15名の新人騎手がデビューしていたのが、年1回の募集となって以降、少ないときにはデビューがわずか4名という年もあったように、近年ではデビューする新人騎手が減っている。

 騎手の供給不足となっているのは、騎手候補生の試験に合格しても体重調整や自信をなくしたための中途退所や、騎手としてデビューしても若いうちに廃業してしまう者が以前より増えている傾向にあるため。

 そもそも騎手というのは、一流になれば収入も多く華やかだが、若いうちは世間でよく言われる“3K”的な職業であることも間違いない。それゆえ騎手課程の応募者自体も減っていると聞く。

 地方競馬の競馬場の数も、90年代には「地方競馬30場」と言われていたのが、2000年代に入って廃止が相次ぎ、現在ではばんえいも含めて17場。そのうち中京、姫路ではしばらく開催がないので、実際に稼働しているのは90年代のちょうど半数の15場となっている。それでも騎手が足りないのは、上記のような理由からなのだろう。

 ところで近年では、期間限定騎乗の制度が浸透し、騎乗機会がなかなか得られない若手騎手が、騎乗機会を求めて一時的に他場に移籍するようなこともめずらしくなくなった。もちろん騎手本人にとっては意欲的に活躍の場を求めての移籍ではあるのだが、一方で受け入れる側には、実は騎手不足を補うためという理由も多分にある。それは単に騎手が足りないというだけでなく、地方競馬では多くの騎手が厩務員としての作業も兼務しているという状況もめずらしいことではなく、つまりは単に厩舎の人手不足ということでもある。期間限定騎乗の活発化と騎手不足は、じつは表裏一体でもあるのだ。

 売上げがピークだった1991年以降、落ち込み続けた地方競馬の売上げも、ここ4年ほどは全国的に上昇に転じている。競馬が盛り上がっても、若い人材が育たないのでは、その先がない。

 これをきっかけに、地方競馬に限らず競馬業界全体に、競馬にかかわりたいという若者が増えてくることを期待したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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