スマートフォン版へ

これでガラっと良くなる方向に期待/神戸新聞杯

  • 2016年09月26日(月) 18時00分


いい意味でも、悪い意味でも春のサトノダイヤモンド

 この秋は、それにしても人気の中心馬がGIシリーズに向けて順調な滑り出しをみせてくれるものだと感じていたら、神戸新聞杯をサトノダイヤモンドが勝ち、直後のオールカマーをゴールドアクターが制した。9月10日の新重賞「紫苑S」から、オールカマーまで、JRA重賞は1番人気馬が「8連勝」となり、グレード制が導入された1984年以降の新記録だという。

 今週はGIシリーズの第一弾「スプリンターズS」。そして「凱旋門賞」。マカヒキは現地では1番人気ではなくても、この秋からスタートする日本の海外馬券発売では1番人気に支持される可能性が高い。土曜日の「シリウスS」→日曜日の「スプリンターズS」→その夜の「凱旋門賞」…。いい流れがつづいて欲しいものである。ここまで凱旋門賞に挑戦した日本馬は【0-4-0-15】。記念の応援馬券は別にして、マカヒキの2着づけの馬単が一番売れるのではないか、などといわれるが、凱旋門賞がロンシャンではなく、シャンティで開催されるのは初めて。歴史は動くかもしれない。

 サトノダイヤモンド(父ディープインパクト)は、夏場の調整がちょっと遅れ、入念には乗っていたので死角は小さかったが、1ヶ月前に栗東に帰厩しながら長めを追ったのは2本だけ。いい意味でも、悪い意味でも春のサトノダイヤモンドとあまり変わっていなかった。後半「11秒6-11秒5-11秒4-11秒7」=46秒2-34秒6の上がり勝負となり、内から詰め寄ってきた上がり馬ミッキーロケット(父キングカメハメハ)を最後にクビ差封じたのは実力通り。ただ、ねじ伏せたというほどの完勝ではなかった印象もある。

「これで見通しが明るくなった(池江調教師)」のは確かだが、予定通りの余裕残しで本番を見据えた馬体作りで勝ったというより、ちょっと仕上がりが遅れたのを巧みな調整でしのぎ切って期待に応えたという感じも残った。これでガラっと良くなる方向に期待したいが、短い夏の休養(充電)から、ひとたたきして本番3000mは、実績で上回る陣営にとり、息を入れる時間がないから、上がり馬よりずっときびしい日程である。だから、近年の菊花賞の勝ち馬は「日本ダービー組5頭、ダービー不出走組5頭」であり、これは距離適性の問題ではない。3000mを嫌った3歳の日本ダービー出走馬が天皇賞・秋を勝ったのは、天皇賞・秋が2000mになって30年以上、シンボリクリスエスだけ。方向を変えたところで同じである。

 ミッキーロケットは、終始サトノダイヤモンドをマークする位置取り。4コーナーでちょっと詰まる不利があったように見えたが、先に抜け出したサトノダイヤモンドに「クビ差」は、文句なしの好内容。14番人気の皐月賞を13着にとどまった当時より明らかにパワーアップしている。上がり34秒0は最速だった。久しぶりの当日輸送を考えれば10キロ減の馬体も細化ではなく、夏の上がり馬として菊花賞に挑戦できることになった。ファミリーは、ディーマジェスティやトレヴなどと同じくマルガレーゼン(USA)から広がる一族。右回りの芝だけに出走し【3-5-0-2】。3着以下には3馬身も差をつけたから陣営は強気になった。

 レッドエルディスト(父ゼンノロブロイ)は、前の2頭に最後は3馬身も離されてしまったのでそう評価は上がらないが、勝負どころから一気に進出した内容は悪くない。レース前の落ち着いた印象も良く、距離延長にも不安は少ないだろう。芦毛は母方に流れるクリスタルパレス譲り。牡馬3冠レースの中で芦毛馬の快走が驚くほど多いのが3000mの菊花賞である。

 4着カフジプリンス(父ハーツクライ)は、直線に向いて前に十分スペースがあったように見えたが、反応が鈍かったのか、前に取りつくのがちょっと遅かった。でも、ゴール寸前の脚は光っていた。条件賞金1500万だとちょうどボーダーライン上と推測され、再三の乗り替わりでコンビの騎手がいないのも痛いが、出走がかなえば侮れない。

 人気のエアスピネル(父キングカメハメハ)は、春からずっと同じようなレースで同じような結果がつづいてきたので、思い切って行くか、下げるか、これまでと同じようなレースを繰り返すのを嫌っての後方待機策と思われる。一転、直線一気に伸びて…とはいかなかったが、大外を回ってそれなりの脚は使っている。ただ、落ち着いてはいたが、馬体全体の与えるイメージが春ととくに変わっていなかった点が死角か。皐月賞4着、頂点の日本ダービーも小差4着であり、ふつうの2〜3勝馬とはわけがちがう。陣営にしても、武豊騎手にしても、このままでは…の努力と試行を重ねるが、最強の相手にも大きく崩れることはない。よって挑戦はつづけるしかない。

 3番人気のナムラシングン(父ヴィクトワールピサ)は、直線に向いてもまだ十分に手ごたえは残っているように見えたが、並ばれて追い出すとまったく抵抗できなかった。折り合っているようにみえて、道中のスタミナロスが大きいタイプなのだろうか。あれで失速は残念だった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング