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世界的な名種牡馬となることは間違いない(村本浩平)

  • 2016年09月27日(火) 18時00分


◆Frankel産駒は期待に違わぬ走り

 久しぶりに「ぞくっ」とするようなメイクデビューを見た。

 この世代が初年度産駒となるFrankelの持ち込み馬として、2014年の4月7日にノーザンファームにて誕生。24日のメイクデビュー阪神でデビューしたミスエルテ。ノーザンファーム早来牧場での育成時から注目をしていた馬であり、赤本「オススメ10頭」における穴馬としても取り上げたのだが、その期待通り、いや、穴馬の評価が失礼と思えるような、とんでもないレースを見せてくれた。

 道中は折り合いを重視して馬群の中で待機したミスエルテだが、最後の直線で鞍上のゴーサインが出ると一気に先頭へと躍り出る。その加速も桁違いだったが、何よりも驚いたのがフットワークの大きさ。跳ぶような走りというのか、一完歩、一完歩が非常に大きく、最後は手綱を持ったままでゴール。上がり3ハロンは33秒7とのことだが、最後まで追っていればそれより速いタイムが出たことは間違いない。

 その走りを見て、育成時に岡真治厩舎長と話した言葉を思い出していた。

「動きの良さもそうですが、今までに感じたことの無いような乗り味をした馬ですね。これがFrankel産駒なのかな、という印象も受けます」

 これまでに様々なGI馬に跨がってきた岡厩舎長ですら、感じたことの無いような乗り味というのも、ミスエルテの高い評価の裏返しと言える。だが、それはディープインパクト産駒に代表される、サンデーサイレンス系種牡馬の一流馬とはまた違った乗り味、とも言えるのだろう。

 ミスエルテの高い評価を語るエピソードとして、坂路での行きっぷりが他の馬とはまるで違っていたという話も聞いている。仕掛けられた時の反応の良さという表現は、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒に良く聞かれる言葉だが、ミスエルテは仕掛けなくとも坂路をあっという間に駆け上がっていくような走りを見せていたという。

 そう聞くと、最後の直線で見せた完歩の大きさも納得がいくところだが、坂路の行きっぷりのいい馬は、パワータイプの馬にもよく見られる。こうした走りをする馬はダート色が強くなる印象もあり、芝でのデビューでサンデーサイレンス系種牡馬の産駒に切れ負けした後に、ダートで快勝という結果も幾度となく見てきた。

 しかし、ミスエルテのメイクデビューぶりを見て、ダート馬だと思った人はまず皆無だろう。いや、むしろダートでも苦にしないほどのパワーで、サンデーサイレンス系種牡馬の産駒たちが武器とする、「切れ」を封じ込んだとも言える。

 同じFrankel産駒では、メイクデビュー札幌に出走したソウルスターリングも、他馬をねじ伏せるような強いレースを見せている。こちらも洋芝を苦にしない力強さが印象に残ったが、いずれにせよ、Frankel産駒が日本の馬場を苦にしないことが2頭の走りからも証明されたと言える。

 Frankel産駒は海外でデビューした産駒たちも期待に違わぬ走りを見せており、今後、世界的な名種牡馬となることは間違いないだろう。そして、ミスエルテとソウルスターリングが、来年のクラシック戦線でもサンデーサイレンス系種牡馬の産駒たちを退けるような活躍を見せたのなら、「Frankelブーム」が競馬界だけでなく、POG界も席巻しそうだ。

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