エンドスウィープ系の真価
6Rの古馬500万下の芝1200mが、1分08秒3(32秒8-35秒5)であり、10Rの古馬1000万特別が1分08秒4(34秒3-34秒1)の決着だったから、スプリンターズSの「1分07秒6」の勝ち時計は予測された通りか。だが、33秒4-34秒2のレースの流れは、中山の1200mのスプリンターズSとすると非常に緩い流れで、14年からの芝の整備方法変更によるコンディションの変化により、高速のスプリント戦ではなくなっているという思いがどの騎手にもあった。
ちょっとムリな先行策をとると、後半が怪しくなる芝である。前回のセントウルSを1分07秒6で完勝した
ビッグアーサー(父サクラバクシンオー)の自身のレースバランスは決して強引にとばしたものではないが、「33秒1-34秒5」。そのラップバランスを振り返った福永祐一騎手には、今度はムリに先行せず、好位のインで我慢するのがベストではないか、というレース前の展望があったのではないか、と思われる。
好位のインにおさまることには成功したが、レースの流れはスペチアーレが逃げ切った6レースの古馬500万下より、前半の3ハロンが「0秒6」も遅くなっていた。
とくに1ハロン過ぎ、2ハロン通過手前で2回も引いたビッグアーサーは、このラップだから他の有力馬が好位でひしめき合う中、中間地点では7-8番手まで下がっている。直線に向いてもみんな楽な脚いろで伸びようとしているから、前の馬に接触しかかってつまずき気味になるなどレースにならなかった。
福永騎手が「申しわけない。具合は文句なしに良かったが、ボクがうまくさばけなかった」と頭を下げるのは当然で、前回が強気に自身でレースを作っての完勝。同じことをしては、最後に急坂のある中山だと寸前に差される危険を否定できない。大事に好位のイン追走に出ようとしたのは自然なことだが、道中で下げ過ぎてしまった。こういうビッグレースで不甲斐ないレースをした場合、今回の福永騎手のように、他馬のせいなどにせず、素直に振り返る姿勢はどの騎手にとっても一番大切なことだろう。
スペチアーレで、(32秒8-35秒5)=1分08秒3で逃げ切ったデムーロ騎手は、それは最下級条件のこと。10Rの1000万特別の1番人気馬ダノンアイリスでは下げて進んで11着凡走。このメインレースではしっかり中位の外につけ、ひしめき合う馬群の外を回ってフルに追っての味を引き出した。メインのために乗っていたようにも映った。
勝った
レッドファルクスの父である種牡馬スウェプトオーヴァーボード産駒は、多くはダート巧者に出ることが多いが、種牡馬になったパドトロワ、プリンセスメモリーなど、芝で切れる産駒も含まれるあたりが幅広く広がるエンドスウィープ(その父フォーティナイナー)系の真価で、自身も芝のグループレースを勝っているように、中には芝のほうが合う馬がいる。レッドファルクスは、4勝しているダートも、これで4勝となった芝もOK。このあとはダートのJBCスプリント(11月3日)、そのあとは芝の香港スプリントが視野に入っている。
ミッキーアイル(父ディープインパクト)は、昨年と同じように休み明けで挑戦して今年は小差2着(昨年は4着)。使って2戦目には凡走の多い特異な成績を残しているので、このあとのローテーションは未定とされる。うまく好位で進んだ
ソルヴェイグ。
シュウジが3-4着に流れ込み、復調していた
スノードラゴンが5着に突っ込んだ。多少は衰えたとはいえ、自己最高に近い内容で善戦した8歳スノードラゴンは偉いものである。
凱旋門賞について
凱旋門賞のJRAの売り上げが約41億円に達したという。先週のオールカマー並みだからすごい。主催者の発表するプレレーティングは、欧米の馬が人気馬の場合あてにならない目安であることが多いが、牝馬ファウンドの122は、事実上の実績No.1であり、あれだけ連勝していながら牡馬で124止まりのポストポンドは、今年の全体レベルの高くない凱旋門賞の1番人気馬としても決して強くないことを示していた。これは今後の教訓。だから、ポストポンド級なら差はないだろうと期待されたわれらの
マカヒキ(ハイランドリールと同じ121)も、見方は間違っていなかったが、ポストポンドも現時点のマカヒキも細かいことは別に、レベルがあまり高くなかったということである。マカヒキはコースレコードの快時計になった息の入れにくいきついペースで、外々をまわらされたロスが大きかった。