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地方の小回りで重賞2勝目ケイティブレイブ/白山大賞典・金沢

  • 2016年10月05日(水) 18時00分

撮影:武田明彦



モンドクラッセには厳しい競馬に


 ケイティブレイブが抜群のスタートダッシュを見せ、どちらが逃げるのだろうと思われたもう一方のモンドクラッセはタイミングが合わなかったのか、出遅れてしまった。しかしそれでも二の脚のダッシュでハナを取りに行き、ケイティブレイブが2番手に控える形で落ち着いた。

 スタートで後手を踏んでしまったモンドクラッセには厳しい競馬になった。函館の大沼Sをレコード勝ちしているように、ダート中距離のスピード馬。予想で「中央のスピードが出やすい軽いダートのほうが合うという可能性はある。」と書いたが、最後に脚が上がってしまったのは、出遅れてやや強引にハナを取りに行った影響もあっただろうし、乾いた馬場に苦しんだとも考えられる。互角のスタートを切って、すんなり逃げられれば直線でも粘れたのかどうか。JBCを前にしたこの時期、ダート中距離路線は日本テレビ盃や南部杯にメンバーが分散するため、この白山大賞典は重賞実績がない馬でも出走できる可能性があるが、このクラスの馬は常に除外の可能性があり、今後はレース選択が難しい。

 そして勝ったのは、2番手からレースを進めた3歳のケイティブレイブ。1周目の3コーナーあたりでモンドクラッセに一気に来られたときには行きたがる素振りを見せたが、武豊騎手はうまく折り合いをつけた。先頭のモンドクラッセが3コーナー手前から一旦は差を広げる場面もあったが、ケイティブレイブはみずからとらえに行って4コーナーでは射程圏に。そこでペースアップしたことで、3番手で併走していたアムールブリエ、ストロングサウザーとの差が広がり、そのぶんの貯金で粘り込むことに成功した。レースの上り3Fが39秒5で、ケイティブレイブの上りが38秒9だから、それほど伸びていたというわけではない。今回は同型のモンドクラッセがいてレースが難しかっただろうが、そこはさすがに鞍上がうまくレースを運んだ。ここまで2着が3戦続いたが、兵庫チャンピオンシップに続いての重賞タイトル。今後も活躍の場は、地方の小回りコースでゆったりレースが流れる2000m前後以上の距離ということになるのだろう。

 直線で伸びたといえるのは、勝ち馬に迫ったアムールブリエとストロングサウザーだけで、それ以外の馬は直線では脚が上っていた。乾いた良馬場の勝ちタイム2分15秒1は、2006年に牝馬のレマーズガールが勝ったとき(2分15秒9)以来の2分15秒台という遅いタイムでの決着(地方馬のみで争われた2007年は除く)。その時のレマーズガールの斤量が、今回のアムールブリエと同じ57kg。しかし今回、他の牡馬が55kg以下だったのに対して、レマーズガールのときはスターキングマン60kg(5着)、クーリンガー58kg(9着)と、より重い重量を背負った牡馬がいた。

 アムールブリエには斤量的に厳しい状況にもかかわらず、負けたとはいえ、上がり最速の38秒4で2着に食い込んだ走りは健闘といえるもの。それにしてもこの馬は渋い。向正面の中間あたりですでにムチが入っていたので、一杯なのかにも思えたが、最後にしっかり伸びる余力を残していた。あらためて、1800mくらいでは追走に苦労するというのがわかるレースぶりだった。それゆえ、レディスプレリュード(大井1800m)→JBCレディスクラシック(川崎1600m)の牝馬路線ではなく、斤量を背負ってまでも牡馬との対戦を選んだのだろう。アウォーディー、ラニとの3きょうだいでの対戦も見てみたいが、チャンピオンズCでそれを期待するのは、少なくともこの馬には酷に思える。JpnIIならもう少し別定重量が緩和されるだけに、昨年も楽勝している名古屋グランプリあたりが狙いとなるのだろうか。

 ストロングサウザーは、中央のダートでは準オープン勝ちの白川郷S、オープン勝ちのラジオ日本賞(いずれも2015年)のように先行して結果を残すこともあったが、前がある程度流れ、中団追走からじわじわと長く使える脚が生きる展開になったときにチャンスが生まれるといえそうだ。

 地方勢では、カツゲキキトキトが最先着の6着。中央準オープン勝ちのトラキチシャチョウ(5着)と最後まで競り合い、調子落ちだった地元期待のグルームアイランド(7着)には大差をつけた。走破タイムの2分17秒1は、レベルの高いメンバーに引っ張られて出したタイムとはいえ、同じ2100メートルで地元同士で争われる百万石賞の今年の勝ちタイムより3秒以上も速いもの。3歳ゆえ52kgと斤量には恵まれたが、地方同士ならあらためて全国区で通用する能力を見せた。ジャパンダートダービー(6着)、そして今回と、強いメンバーとの経験を積んだことで、さらなるパワーアップも期待できる。大井・黒潮盃(2着)の直後の話では、この秋の目標は新設の西日本ダービー(11月2日・園田)とのことで、南関東勢がいない同世代同士なら相当に強いレースを見せてくれるのではないか。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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