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勝者の策に学ぶことの多かった凱旋門賞

  • 2016年10月06日(木) 12時00分


オブライエン勢の見事な駆け引きに屈したマカヒキ


 人物を楽しみ、その策に学ぶといえば「三国志」が一番なじみのあるところだが、そこから読み取れる虚々実々の駆け引き、はまっている者は多い。ひと昔前なら吉川英治の「三国志」、近ごろは漫画でと様変わりしているが、そこから受け取るものは似ている。楽しみながら、自然に身につくことがありそうで、なかなかの魅力だ。複雑で動きの激しい現代社会を生き残っていく知恵をそこから授かりたいと、楽しみながらもそう願っているのかもしれない。

 願うといえば、今年の凱旋門賞こそはと応援したのに、報われなかった。もちろん勝てると確信できる筈もないが、今年の日本ダービー馬が遠征したのだから、応援しないわけにはいかない。馬券検討した向きでも、心の底ではそう思っていたに違いない。それが情と言うものだから。結果、マカヒキは自分のレースをさせてもらえなかった。

 ディープインパクトのときも思ったのだが、虚々実々の駆け引きに負かされてしまった。勝ったファウンドをはじめ、1-3着を独占したアイルランドのエイダン・オブライエン調教師のレースの読み、いや、そうではなく3頭の戦い方をどうするかの策が、見事に適中したのだと言いたい。ライアン・ムーア騎手の位置取りの巧みさ、いつの間にか内に潜り込み、ポジションを上げていった。前を行くデットーリ騎手が、一瞬はやく先頭に出てこれを誘導し、横をすり抜けていくムーア騎手にエールを送る表情を見せていた。オブライエン勢のもう一頭、ハイランドリールが、これを読んでいたかのように2番手に上がり、見事に1、2、3着。マカヒキは、いつもより前々の位置をと出て行ったが、終始外々を回されて失速してしまった。オブライエン勢の3頭のあうんの呼吸だったのか、策だったのか、見事な駆け引きと言うしかなかった。

 日本馬20頭目のこの敗戦から、何かを学ばねばならないとしたら、その策、戦い方だろう。これまでも経験したように、こちらを強いと認めたときの欧州勢の対策は並大抵ではない。今後は、馬の強い弱いに加え、虚々実々の駆け引きまで考えなくてはならない。勝者の策に学ぶことの多かった凱旋門賞だった。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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