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競馬界の“二刀流”アグネスデジタルの軌跡/マイルチャンピオンシップ南部杯

  • 2016年10月09日(日) 18時01分


南部杯から天皇賞・秋へ 異例のローテーション


 10月10日(祝・月)、盛岡競馬場で行われるRoad to JBC『第29回マイルチャンピオンシップ南部杯(以下南部杯)』。1997年からダートグレード競走の統一GIレース(当時の格付け)となり、これまでメイセイオペラ、アグネスデジタル、トーホウエンペラー、アドマイヤドン、ユートピア、ブルーコンコルド、エスポワールシチーら数々の名馬を輩出してきたビッグレースです。

 今回はその中から、中央、地方、さらに世界の舞台でも大活躍したオールラウンダー・アグネスデジタルの戦いを振り返りたいと思います。

DGに魅せられて

▲芝・ダート・中央・地方・海外で活躍したアグネスデジタル(写真は2001年天皇賞・秋優勝時、撮影:下野雄規)


 1999年にデビュー。その年の全日本3歳優駿(現・全日本2歳優駿、当時は統一GII)、2000年の名古屋優駿(現・東海ダービー、当時は統一GIII)、ユニコーンSと次々とダート重賞を制し、2000年11月に今度は芝のレース、マイルCS(JRA)でGI初制覇を果たします。

 2001年には京都金杯(3着)、京王杯スプリングC(9着)、安田記念(11着)と芝で不振が続き、秋初戦は再びダートに戻り日本テレビ盃を快勝。続いてのレースは南部杯を選択します。

 2001年の南部杯は超豪華メンバー。前年にフェブラリーSとジャパンカップダートを勝ったウイングアロー、2001年のフェブラリーSを制したノボトゥルー、南部杯の前年の覇者ゴールドティアラ、地元岩手のスター・トーホウエンペラーなどが揃う中、アグネスデジタルは単勝2.1倍の1番人気に推されました。

 レースは逃げるハイフレンドピュア、ゴールドティアラに続いてアグネスデジタルは3番手からの競馬。最後の直線で先に抜け出したゴールドティアラを捕らえ、追い込んできたトーホウエンペラーとノボトゥルーを抑え、見事に勝利を挙げます。

 次のレースに選んだのはなんと天皇賞・秋。2000年にマイルCSを制してはいるものの、当時は“ダートホース”というイメージが強く、「なぜ天皇賞に?!」という声も聞かれましたが、テイエムオペラオー、メイショウドトウを下して快勝。その後は舞台を海外に移し、12月の国際GI・香港Cでも勝利。さらに翌2002年には再びダートに戻ってフェブラリーSを制し、2003年には安田記念も制覇しました。

DGに魅せられて

▲芝のGIを2連勝後(天皇賞・秋、香港C)、ダートGIのフェブラリーSを勝利(撮影:下野雄規)


 芝でもダートでも、中央でも地方でも海外でも、どんな舞台でも力を発揮。自らの力で道を切り開き、どんな条件・舞台でも活躍したスーパーホース。今年、野球の世界で北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手が“天才・二刀流”として話題になりましたが、競馬界の“二刀流”アグネスデジタルの存在を改めて評価したいと思います。

コパノリッキー、田辺騎手と久々のコンビ


 さあ、今年も個性あふれる豪華メンバーが盛岡競馬場に集結。注目馬を紹介していきましょう。

 一昨年、盛岡競馬場で行われたJBCクラシックを制したコパノリッキーが南部杯に初登場! フェブラリーS連覇(2014年、2015年)、かしわ記念2勝(2014年、2016年)、JBCクラシック連覇(2014年、2015年)、そして前走・帝王賞でGI・JpnI 7勝目を挙げた文字通りのトップホース。

 近走の鮮やかな勝ちっぷりを見ると、他馬がその牙城を崩すのは容易なことではありません。田辺裕信騎手とのコンビは2014年の東京大賞典(2着)以来となりますが、盛岡でJBCクラシックを制した時の鞍上ですし、同じ盛岡で行われた7月のマーキュリーC(優勝馬:ストロングサウザー)での好騎乗も光り、心強いパートナーです。

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▲田辺騎手&コパノリッキー、人馬共に初GI勝利となった2014年フェブラリーS(撮影:下野雄規)


 3連覇を狙うベストウォーリア。3連覇を達成すれば、ブルーコンコルド以来2頭目となります。南部杯はこれまで、そのブルーコンコルド(2006年、2007年、2008年)の他にもトウケイニセイ(1993年、1994年)、ユートピア(2004年、2005年)、エスポワールシチー(2009年、2012年、2013年)とリピーターが大活躍するレースですので、ベストウォーリアにも大きな期待がかかります。

 アスカノロマンは盛岡競馬場に初登場。今年1月の東海Sで重賞初制覇。フェブラリーSでは3着でしたが、ベストウォーリア(4着)、コパノリッキー(7着)に先着しています。父は先ほどご紹介した2001年の覇者アグネスデジタル。父子制覇も夢ではありません。

DGに魅せられて

▲2016年東海S優勝時のアスカノロマン、鞍上の太宰啓介騎手にも初GI・JpnI制覇の期待がかかる(C)netkeiba.com


 GI・JpnI 10勝を誇るホッコータルマエも忘れてはならない存在。盛岡競馬場ではこれまで2戦し、2013年の南部杯でエスポワールシチーの2着、2014年のJBCクラシックで4着、と勝ってはいませんが、ダート王者として恥ずかしいレースはできません。

 レーザーバレットは1600m戦で3歳時に2勝、6歳時に1勝と、3勝を挙げていますが、近走は短距離を中心に使っています。前走・テレ玉杯オーバルスプリント(1400m)を勝っていますが、久しぶりのマイル。距離延長と初コースがポイントです。

 ラテンロックも初コースで、ダートグレード競走も初出走。さらに1600mも初と、初めて尽くし。クロフネ産駒で距離は持ちそうですし、鞍上に地元のリーディングジョッキー山本聡哉騎手を迎え、トップホースたちにどこまで食い込めるか注目です。

 今年もまた凄いメンバーが揃った南部杯。盛岡競馬場の1600m戦は、2コーナー奥の長い引き込み線からスタートし、途中は坂のアップダウンもあるタフなコース。アグネスデジタルやユートピアがこのレースを勝ったのちに海外競馬でも活躍したことからもわかるように、本当に力のある馬が勝つ“まぎれの少ない”チャンピオンコースです。大注目の一戦、南部杯で秋の3連休を締めくくりましょう。

※次回の更新は10月12日(水)の18時。門別競馬場で行われる「エーデルワイス賞」のコラムをお届けします!



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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