常石勝義&赤見千尋が見つけた 競馬の職人/常石勝義&赤見千尋

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馬上のスポーツ、ホースボールってなに?!

2016年10月11日(火)18時00分

注目数:16人
ホースボール

馬上のスポーツ(ホースボール)に取り組んでいる西島隆司さん



ポロが元になっているスポーツ

 前回ご紹介した御殿場カルチャーファームで、新しく取り組んでいるのが馬上のスポーツ(ホースボール)。日本ではまだほとんど知られていないこのスポーツについて、御殿場カルチャーファームの野口克之さん、西島隆司さんにお聞きしました。

ホースボール

ホースボールで使用するボール



赤見:ホースボールという言葉自体、初めて聞きました。ヨーロッパで盛んなんですか?

西島:そうですね。20か国以上で行われているスポーツで、フランスならホースボールができる場所は1000個以上ありますよ。国内リーグも盛んで、トッププロ、プロ、アマチュアという3リーグと、女子のリーグもあります。馬術の競技とはまた違う面白さがあって、見ていてすごく楽しいです。例えばアイスホッケーを見るみたいに、詳しいルールはわからないけどスピード感があって、みんなで楽しくやってるみたいな感じですね。

赤見:馬に乗って戦うボール競技といえばポロが思い浮かびますけれども、それとは違うんですか?

西島:ポロが元になっているスポーツなので、基本的なことは似ています。ポロに近い競技でパトというアルゼンチンの国技があるんですけど、パトはサッカーのコートみたいな広い場所で行うんです。その点ホースボールは60m×20mの角馬場でできるので、サッカーで例えるとフットサルみたいな感じですかね。1970年代にフランスで始まった競技なんですけど、パトは広い場所を使うので、それだと普及できないということでコートを小さくしたそうです。

野口:まだ日本では一度も試合が行われていないので、日本人選手はまだ無理だけど、海外の選手を呼んで一度国際試合をやりたいねって話していて。人は呼べるけど、馬までは持って来れないから、とりあえず馬を作ろうかっていう流れで動いています。

赤見:なぜ御殿場カルチャーファームでは、ホースボールの普及に力を入れているんですか?

ホースボール

隣が見える馬房



野口:一番は引退したサラブレッドが使えるっていうことです。サラブレッドのセカンドキャリアって、日本では乗馬以外ないでしょ。うちではホースセラピーにも取り入れてみたけれど、体格が大きいのでなかなか向かないし。ホースボールならもってこいなんですよね。西島くんがポルトガルでホースボールを見て来てくれて、ほとんどがサラブレッドを使っているということで、それなら引退後の生きる道になるんじゃないか、無理にセラピーに使わなくても需要が増えるのではないかと思ったんです。

西島:ホースボールの選手たちに聞くと、体格が大きくて瞬発力のあるサラブレッドがいいそうです。自分は本格的に馬に乗り始めて3年目でホースボールがやりたくてポルトガルに行ったんですけど、まだ馬乗りが下手だなって自分でもわかってるけど、そんな自分の技量でも楽しめるんですよ。馬に乗ってボールをパスしたりゴールに投げたりするので、今までの日本の馬乗りからすると「危ない」って思われますけど、やってみたら面白いですよ。

赤見:馬の上からボールを投げたら、馬が怖がりませんか?

野口:最初はめちゃくちゃ怖がりますよ。馬上から投げることよりも、パスでボールが飛んで来ることを怖がります。今うちで練習してるんだけど、初めはボール自体を怖がったので、馬房にボールを吊るしたりして徐々に馴らしていきました。あとは競技の中で馬同士がぶつかり合うこともあるわけで、馬と馬の相性をよくしておかないといけない。うちの馬房は全部素通しで見えるようにして、隣の馬たちが見えるようになっています。

 最近は子供たちがポニーに乗って、ボールを投げて遊んでいます。ボールを持ったり投げたりすることで自然と手綱から手が離れるから、体重移動だけで馬を動かさないといけなくなるので、バランスも鍛えられるし体幹も強くなりますね。日本だと、馬に乗って何かするっていうことがないじゃないですか。「馬に乗る」っていうこと単独だけですよね。あとはお祭りとか野馬追くらいで。ホースボールは新たな可能性だと思っています。

赤見:西島さんはなぜホースボールをやろうと思ったんですか?

西島:野口さんと、元騎手の鈴木久美子さんが雑誌(乗馬ライフ)でホースボールを紹介しているのを見たのがキッカケです。その頃、人生で体が動く間に一生付き合っていけるものないかなって探している時で。「これやりたいわ」って瞬間的に思いました。小さい頃に京都競馬場の横にある乗馬センターに行ったことがあるくらいで、ちゃんと乗馬をしていたわけではなかったんですけど、そこから乗馬クラブで働き出して、馬に乗ることを学びながらヨーロッパに行く準備をして。3年目でポルトガルに行って来ました。実際に見てみたら、これなら日本でもやれるなと感じましたね。

赤見:(ホースボールの動画を見て)かなりのスピードなんですね。

西島:見ている分にはかなり速いですよね。でも実際にやっていると、馬が下で動いてて、周りは同じスピードで動いているんで、止まって見えるんですよ。ルールでアプローチの仕方とかも決まってて、安全に戦えるようになっています。基本的なルールは、シュートをするまでに味方の異なったプレイヤーに3回以上パスを出すということです。ボールが落ちたら馬上から手を伸ばして拾わないといけないし、相手のパスを阻止したりとけっこう激しいスポーツです。

赤見:またポルトガルに行く予定があるそうですね。

西島:ポルトガルにはホースボール協会の会長がいて、その方の厩舎に行く予定です。留学したいって相談したら、「うちに来いよ」って言ってくれて、前回の時もそうなんですけど本当によくして下さいます。「次来るときは他の日本人も連れてきていいよ」って言われているけど、なかなかよくわからないものに飛び込む人がいなくて(笑)。これからの課題は、よくわからないものを周知して、「俺でもできるんだから誰でもできるよ」ってことを伝えたいです。

赤見:わたしは馬の世界に入って20年以上経つんですけど、馬のスポーツで知らないものがあったなんて…。勉強不足でした。

野口:いや、みんな知らないですよ(笑)。お金儲けを考えたら普及しないので、まずは子供たちの遊びに取り入れています。ポニーや中間種の馬たちでボールに馴らして、子供たちが乗って遊んでますよ。普通の乗馬より面白いみたいで、「ボールやろう」って自分から言い出すようになりました。

赤見:今後の展望というのは?

野口:西島くんがポルトガルに行ったお蔭で、サラブレッドの新たな生きる道があることに気づきました。子供でもできるし、見ている人も楽しいので、馬事普及には絶対に必要なことだと思います。西島くんがポルトガルから帰って来たら、宣伝もそうなんだけど、選手を作って普及していきたいです。とりあえず乗ってボールを投げ合うくらいはできる馬がいますから、それをする人を増やしていきたいです。

西島:日本では環境がないだけで、普通にできるスポーツだと思うんです。馬の前でやっちゃいけないことが目白押しなので(笑)、これまで馬に乗ってた人の方が概念を受け入れるのに時間が掛かるかもしれません。今馬に乗れる人はもちろん、これから乗りたいなという人にもぜひ挑戦して欲しいですね。早急にやりたかったけど、早急にやろうとすると代償も大きいですし、何年か先を見据えて行動していきます。人間の都合だけではなく、自然とお話ししながら普及を続けていきたいです。
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コラムニストプロフィール

常石勝義&赤見千尋
常石勝義&赤見千尋
常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

赤見千尋
1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミックシリーズ」の「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍中。