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ちゃぶ台のエチュードとGO WEST の魔法

  • 2016年10月13日(木) 16時00分


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今年は、今年の今年こそは、2人気1人気の乗ったちゃぶ台をひっくり返せるか?
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秋華賞は2番人気VS1番人気。どっちが強いか見極めるレースである。
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面倒ならば2番人気から買えば、2連系なら10年で6回、3連系なら10年で7回も当たる。
1人気からなら、2連系なら4回、3連系なら7回当たる。
2人気、1人気が同時に馬券圏内に入ったのは5回もある。
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実は極めて短考ですむレースでもある。
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だが、しかし。しかし、だが。だがしかし………
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ここのところ秋華賞はずっとこの出だしだ。
っていうか、秋華賞は1・2人気の吟味レースだから、替える必要もない。
そういいながら自分は、10年に1度来るはずの1・2人気が同時に沈むときを待っている。いつだって、ちゃぶ台に手をかけて、それをひっくり返す準備をしている。
1・2人気同時ちゃぶ台返し……。あ〜寺内貫太郎ばりに豪快にひっくり返してみたい……。

だがしかし。

結局、1,2人気の牙城を崩せずに終わる。

でもそれも当然だ。
この10年で、
2人気 4-2-1-3
1人気 3-1-3-3
1、2人気が同時に連対圏外に吹っ飛んだことは1回しかない。
同時に馬券圏内に来たことは5回もある。

だが、しかし。だが。
毎年のようにちゃぶ台をひっくり返そうと試みている。
実際、革命のエチュードが聴こえた年は何度もあった。
しかし、その音色はゴール寸前で途絶えた。

10人気のアカンサスを狙ったけど、4着に敗れた。
15人気のチェリーメドゥーサを狙ったけど、5着に敗れた。
12人気のリボントリコロールを狙ったけど5着に敗れた。

みんな見せ場は十分にあった。3着との着差はわずかだ。途中までは「革命」が響き渡っていた。チェリーメドゥーサのときなんて、ほぼ貰ったと思ったけれど、ゴール数十メートル手前で「革命」の音は、プツッと途切れた。

10人気以下で「穴馬」として輝いてみえる馬は、頑張っても4着か5着。これが秋華賞なのかもしれない。ド人気薄馬は、奇襲攻撃、凶器攻撃が必要となるけど、京都2000内回りのG1は、そういう攻撃で遊ばせてくれても、最終的にはそれを許さない。

去年は、結局、奇襲攻撃をあきらめて、1、2人気に敬意を表しつつ、5人気のクイーンズリングや8人気のマキシマムドパリを買ったら、当たった。サイレンシーオ。バタバタしないで静かに当てる。それが秋華賞なんだろう。

だが、しかし。
しかし、だが。
だがのしかしだ。

今年こそは、ちゃぶ台をひっくり返せるような気がしている。最後まで「革命のエチュード」を聴けるような気がしている。
理由はカンタンだ。今年は、今年こそは1、2人気が揃って、圏外に消える可能性があると思いこんでいるからだ。

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1人気を心配してみる
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予想1人気 ビッシュ

オークス3着
前走・紫苑Sを大外枠から走って、1人気1着した。

位置取りは、15-13-6-2
豪快に回ってきて、2着に着差0.4の圧勝。

前走・紫苑S組で、秋華賞で馬券になった馬は、2年前のショウナンパンドラしかいない。しかしその年は新潟で開催され、いつもの角4競馬ではなく、大回りの角2競馬でもあった。だから例外の紫苑Sとは言えた。

今年は例年どおりに中山の2000。だからビッシュが心配! というわけではない。今年から紫苑Sは重賞に格上げされ、2着でも賞金が上乗せされるようになった。これは大きい。今までのオープン・トライアルとは違って、重みが増したはずだ。ここから勝ち負けする馬が出てもなんら驚けない。

#1 前走の豪快な勝ち方が心配だ。

15-13-6-2

向こう正面から進出し、ぐるりとマクリ気味にひと飲みした。その競馬がなんだか心配だ。

3年前、1人気のデニムアンドルビーを心配したときと同じだ。
秋華賞は3角から動く馬が通用しにくいレースだ。
デニムアンドルビーもマクリ系の競馬で4着に敗れた。

この10年でも3角〜4角にかけて3つ以上動いて(前に進出して)、馬券圏内に入った馬は1頭しかいない。

2年前に1着したショウナンパンドラの3角9番手→4角5番手のみだ。
しかし、この年の秋華賞は、馬群が真ん中で前後2つに割れる珍しい隊列で進んだレースで、3角〜4角で前後の馬群が一体化したときに内がガラリと空くレースだった。

パンドラは後ろの馬群の先頭で、しかも内ラチを走っていて、空いた内をそのままついて、直線に向いたときには5番手にいることができた。そういうレースは狙ってできるものではない。だから例外というわけだ。

つまり、紫苑Sと同じようなレース運びだと馬券圏内にも入れない可能性もあるということだ。ビッシュのスケールがなにもかも規格外だとしたら、通用するだろうけれど、そこまでの馬にはまだ至ってないように思える。

中山芝2000だから、あのような騎乗をしたまで。
京都芝2000では違う騎乗をするかもしれない。

だとしても、心配は払拭できない。ビッシュはデビュー以来、常に外を回るような競馬をしている。デビュー戦は内を突いているけれど、直線で大きく広がった馬群があっての内突きだった。2戦目は1枠だったけど、すぐに外に出して(少頭数だったからできた?)、外を回って勝った。フローラSはフルゲートの2枠だったから最後方に下げたのではないか? Mデムーロに乗り替ったオークスは中団につけたけれど、やっぱり外に馬を置かないように走っていたように見える。もしかしたら周囲を馬に囲まれるのが嫌なのかもしれない。

去年勝ったミッキークイーンは馬群の真ん中8番手を追走し、馬群の中から抜け出した。おそらく大外にこだわっていたら、1着は間に合わなかったかもしれない。

どう騎乗するのかわからないけれど、外にこだわるようだと、内で脚を上手に貯めた馬に出し抜けをくらう可能性もある。京都の内はまだまだ生き生きとしているように見えるし、たとえ生き生きとしてなくても、死んでいなければ内は有利だ。

#2 鞍上が京都内回りの2000のフルゲートになれていなさそうで、心配だ。

鞍上は、今年重賞12勝と絶好調の戸崎だけど、西の重賞は2勝で、どちらも直線の長い外回りの競馬だった(毎日杯・阪神芝1800、京都新聞杯・京都芝2200)。京都2000内回りはまだ慣れていない可能性もある。しかも1人気濃厚でフルゲート必至。ビッシュの能力が高かったとしてもそんなに簡単ではないだろう。

ちなみに戸崎騎手の西のG1での成績はこんな感じだ。

戸崎(13年以後)・G1・WEST
1-1-0-16
勝率5.6% 連対率11.1% 複勝率11.1%
単勝回収率81% 複勝回収率28%

これから、もっともっといい馬に乗っていくであろう騎手だ。この成績にはそれほど意味はない。ただ今年の活躍が東の競馬場に慣れてきた証だとしたら、西の競馬場に慣れるのはもう少し先とも考えられる。

#3 ついでに馬体重も心配だ。

桜花賞、オークス、秋華賞、共通して言えるのは、450キロ以上がベスト、430キロ以上がベターで、430未満はヤベー。秋華賞は特にその傾向が強い。
430未満で馬券になった馬はこの10年で2頭いるけど、どちらも3着だった。

ビッシュは、前走420キロ。
オークスを416キロで3着した。だから心配ないという見方はできる。今年は他も小さめで弱いという見方もできる。
それでも1人気というなら、自分は心配材料の一つに加えたくなる。

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2人気を心配してみる
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2人気はどうやら桜花賞馬のジュエラーになりそうだ。

2人気は1人気以上に成績がよく、心配ご無用感いっぱいだけど、今年は例年より心配できる。心配できてしまう。

#1 ジュエラーの前走成績が心配だ。

ローズSは4-5-6の位置取りで11着に敗れた。
この戦法は理解できる。おそらく秋華賞の内回りを意識しての戦法だろう。Mデムーロは去年2着のクイーンズリングでも同じような戦法でローズSを騎乗した。

クイーンズリング
ローズS 5-5-5 5着 0.9秒差
秋華賞  13-13-14-14 2着

ジュエラー
ローズS 4-5-6 11着 着差1.6秒

「骨折明けで様子見だった」。「重馬場で無理させなかった」。
だとしても、1.6秒差は負けすぎに思える。

前走10着以下で、馬券的に巻き返した馬は10年で3頭いる(3頭しかいない)。しかし、この3頭は11人気1着(ブラックエンブレム)、16人気3着(プロヴィナージュ)、15人気3着(リラコサージュ)と、みな人気薄だった。

どんな理由があれ、前走1.6差で11着に負ける馬の2人気は心配しかわかない。

#2 桜花賞は一世一代の輝きだったかもしれないのが、心配だ。

桜花賞馬は2つのタイプに分けられる。

1 桜花賞は通過点にすぎず、その後もG1レースを勝つ馬
2 桜花賞で一世一代の輝きを放ち、その後はG1を勝てない馬

1はダイワスカーレット、ブエナビスタ、アパパネ、ジェンティルドンナなど。
2はキストゥヘヴン、レジネッタ、マルセリーナ、アユサンなど。

ハープスターは故障しなければ、もう1つG1を勝っていたかもしれない。レッツゴードンキはまだ現役なのでここにはあげないけれど、一世一代の輝き臭は漂う。

ジュエラーはどっちだろう? ローズSの走りをみると、ちょっと心配だ。その後もG1を勝つ馬は、秋以後も惨敗をしていない(惨敗し始めたときが晩年、引退のとき)。その後、G1を勝てなくなる馬は、G2、G3で勝つときはあっても、G1ではほとんど馬券圏内に入っていない。あっても3着だ。

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つまり、ちゃぶ台のエチュードだ。
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ビッシュは、まだ何か気性的な問題を抱えているような気がする。1枠2枠は普通はいい枠だけど、もしかしたらビッシュは外枠からポジションを取りにいった方がいい馬なのかもしれない。たとえ外枠に入ったとしても、3角で10番手以内にはいないと勝てない。

東の競馬で重賞を勝ちまくる戸崎だけど、西の重賞、それもG1の、それもフルゲートの、それも京都の内回りで、ビッシュを上手く操れるか? けっこうなポイントではないか? 逆に言えば、ここで1着させるのならば、戸崎の信頼度はさらに上がるのではないか? 競馬的には大注目だ。でも馬券的には他の馬から攻めてもいい。

ジュエラーも、桜花賞1着は一世一代の輝きではなかったということを証明するような走りを見てみたい。競馬的には大注目だ。けれど、前走の凡走を目の当たりにした以上は、2人気ならば、様子を見たい。

うむ、例年より、1、2人気を心配できた気がする。
よし、1、2人気をちゃぶ台にのせて、いつでもちゃぶ台をひっくり返せる体勢で、秋華賞を見物だ。

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秋華賞注目馬
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で、自分が注目したいのは、もちろん、GO WEST! 蛯名のフロンテアクイーンだ。
(蛯名騎手の西のG1での魔法っぷりは、9月15日付けのコラム参照でお願いします)

クイーンCで先着された1着馬メジャーエンブレムはここにはいない。
フローラSで先着されたチェッキーノとアウェイクはここにはいない。パールコードはここにいる。けれど、パールコードには紫苑Sでは、ギリだけど先着した。
オークスで先着された馬でここにいるのはビッシュただ1頭。
紫苑Sで先着された馬でここにいるのはビッシュとヴィブロス。

机上の世界では、フロンテアクイーンより前にいそうな馬は、秋華賞では、ビッシュとヴィブロスの2頭だけとなる。3着には十分手が届くという想像はできる。

オークスで掲示板に載れなかった馬でも、オークスを10着以内で走れていれば、秋華賞では馬券圏内に届く可能性がいっぱいある。去年のクイーンズリング(オークス9着)、マキシマムドパリ(オークス8着)も馬券圏内に届いた。3年前のリラコサージュ(オークス8着)も届いた。

ここに蛯名のGO WESTの魔法をまぶすと、より視界は開ける。
この10年で秋華賞を勝った関東の騎手は蛯名だけだ(アパパネ)。強い牝馬がいなかっただけとも言えるけど、取りあえず、頼もしい!

ビッシュは先ほど十分心配した。馬体重を持ち出すなら前走414キロのヴィブロスも心配できる。ただ紫苑Sは結果的には不利を受けたヴィブロスの方が秋華賞に向けていい競馬をしていたかもしれない。この2頭なら自分はヴィブロスを上に見立てたい。

フロンテアクイーンに期待する以上は、紫苑Sでハナ差だったパーシーズベストもナイガシロにできないし、フローラSでは0.1差フロンテクイーンに先着し、紫苑Sでは0.1差フロンテアクイーンに負けたパールコードもナイガシロにできない。

というわけで、今年の秋華賞は、
フロンテアクイーン
パールコード
パーシーズベスト
の3頭に注目してみる。

もちろん一番の期待は蛯名の秋のGO WEST シリーズ・第1弾のフロンテアクイーンだ。ちなみにシリーズは今のところ第4弾まである。でも、第2弾以後は人気になりそうだから、できればここでひっくり返して欲しい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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