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ディーマジェスティを運否天賦で、サトノダイヤモンドを神戸天賦で心配してみる。

  • 2016年10月20日(木) 12時00分


秋華賞で、1、2人気をのせたちゃぶ台はひっくり返った。
1、2人気が同時に馬券圏外になるという10年に1度くらいのちゃぶ台返しのことだ。

まあ毎年毎年、なんたらの1つ覚えみたいに「ちゃぶ台」を返そうと準備してたら、いつかは返る。特にエバれたもんでもない。

それはそうと、秋華賞のレース後に福永騎手が「一番欲しい位置を取れたし、道中もいいリズムで運べた。これで負けたら仕方がないというぐらいの気持ちで乗った」とコメントしていた(今週の祐言実行でもそのことに触れていた)。

ヴィブロスの位置取りは、9-9-8-8(コース取りは『中』、直線で『外』)。

秋華賞は3角から大きく動いては勝てないと書いたけど、それはつまり、道中大きく動いてはいけないということであり、突き詰めればスタートして1角に入るまでのポジションが大事ということだ。

福永騎手はそれがわかっているから「一番欲しい位置」にこだわったのではないか。「これで負けたら仕方がない」ということは、差すヴィブロスにとって最高の場所はそこだった(道中8、9番手)ということだ。
(祐言実行では、何番手につけるかについては触れてないけれど、そういう具体的なことを言うはずないと思っているので、そこは気にせず想像猛進していくまで)

そういえば去年1着したミッキークイーン(浜中)も道中8番手(コースは中)を追走していた。

なるほど。
差し馬には差し馬のベストポジション、先行馬には先行馬のベストポジションがあるはずで、一概には言えないけれど(さらに内・中・外の横の位置も大事だろうけど)、秋華賞の差し馬のベストポジションは道中8、9番手なのかもしれない。逆にその位置で競馬のできない差し馬は秋華賞では勝ちにくいとも言える。

いずれにせよ、
「京都内回り2000のフルゲートはスタートが大事」ということではあろう。

もちろん騎手がいくらベストポジションを取りたくても、馬がその期待に応えられないとどうしようもないし、枠がそれを邪魔する可能性もある(実際ジュエラーは内枠が災いして、上手くさばけてなかった)。それでも、秋華賞にはベストポジションがあるらしいことを覚えておいて損はない。来年の秋華賞の参考文献として忘れないようにしよう。

では菊花賞のベストポジションはどこなんだろう?

1着馬の成績を眺めても秋華賞ほどには絞れない。4角2番手〜8番手以内とはいえるけど、ちょっと幅が広すぎる。

3角16番手から4角で8番手に進出して1着した馬(ソングオブウインド)がいたり、3角10番手から4角2番手に進出して1着した馬(オウケンブルースリ)がいたり、2、3番手をずっと追走して1着した馬(ビッグウィーク、エピファネイア)がいたりするからだ。内枠、外枠の有利不利はあっても(内有利)、脚質の確定はしにくい。やっぱり4角で2〜8番手としかいいようがない(4角で先頭はダメ)。

まあ菊花賞は距離3000Mの外回りで、2000の内回りの秋華賞とはぜんぜん違うし、幅が生まれて当然だろう。でも、なんらかの指針は欲しい。だからベストポジショニストと思しき、福永騎手の過去の位置取りを参照してみる。

(昔からポジションにこだわっていたかもしれないけれど)過去何年も見てもなんなので、過去3年の菊花賞を参照。

15年 リアルスティール 7-8-7-7 2着(2人気)
14年 ハギノハイブリッド 8-8-8-8 12着(8人気)
13年 エピファネイア  3-3-2-2 1着(1人気)

前哨戦ではこんな乗り方だった。
神戸新聞杯 リアルスティール 8-8-8-8 2着(1人気)
神戸新聞杯 ハギノハイブリッド 12-11-12-12 6着(5人気)
神戸新聞杯 エピファネイア  8-8-9-4 1着(1人気)

うむ、なんか見えて来た。
道中8番手がくさい。

エピファネイアは、菊花賞では2、3番手だけど、それは逃げて強いバンデがいたからではないか。バンデは実際、逃げて3着だった。エピファネイアが2、3番手につけていなければ、逃げ切っていたかもしれない。強い逃げ馬が出走してなければ、神戸新聞杯で試した8番手前後を追走していたのではないか。

ベストポジショニストの出した菊花賞のベストポジションは、道中8番手!
かもよ!

別の角度からもチェックしてみる。

菊花賞といえば、池江親子だ。この11年で2勝し、7頭が掲示板に載っている。池江師は騎手と作戦を練る調教師だから、ポジションへのこだわりがあるかもしれない。

池添騎手が、オルフェーヴルの3冠のかかったレース前に「ディープインパクトでも中団にいた」と語っていたのが思い出される。

ディープインパクトの位置
7-7-7-7 1着

オルフェーヴルの位置
8-10-6-3 1着

途中までは似たような位置だ。臭う。
この11年で掲示板に載った他の馬にも同じような傾向が見られる。

15年 サトノラーゼン 8-9-12-12 5着  
13年 サトノノブレス 8-7-6-4  2着
09年 フォゲッタブル  9-7-9-7  2着
07年 ドリームジャーニー 18-18-15-8 5着(出遅れ)
05年 フサイチアウステル 6-5-5-5 5着(ディープインパクトといっしょに出走)

うむ、やっぱり8番手前後を追走している。
他にも池江厩舎は馬を出走させているけれど、掲示板に載る馬は、結果的に同じような感じだ。この位置で競馬をして、頑張れれば馬券圏内、うんと頑張れれば1着、そんな感じだ。そこには池江師の考えが反映されてるとしか思えない。

というわけで、菊花賞のベストポジションは道中8番手と決定していいんじゃないか? 
もちろん、そこにいれば必ず勝つわけではない。前述したように菊花賞1着馬の道中の位置取りの幅は広い。でもある程度の指針にはなる。

たとえば、人気馬はどのような競馬をしそうか? それがわかれば1人気を大いに心配できる。そう、今週も先週の味をしめて、1、2人気なんぞを心配してみようと思うわけだ。うは!

1人気は池江厩舎のサトノダイヤモンドで間違いない。
はたして、サトノダイヤモンドはどのような戦法を取りそうか? って、考えるまでもない。8番手前後に決まっている。

でも一応前走なんぞを見て、万全を期してみる。池江厩舎は前走から練習をする、準備を怠らない厩舎だ。

神戸新聞杯 7-8-8-8 1着

おっと! 
やっぱり準備万端だ!

ギブ!

では、2人気のディーマジェスティはどうかな?
蛯名はGO WESTジョッキー! きっと自分なりの菊花賞ポジション哲学があるはず。

タンタアレグリア4着 8-9-7-8
前走・セントライト 4-8-8-5 6着

サウンズオブアース2着 9-10-8-4
前走・騎乗なし

トーセンラー3着 11-12-8-6
前走・セントライト 8-9-8-7 2着

マンハッタンカフェ1着 10-9-7-6
前走・騎乗なし

おっと、やっぱり8番手を意識した騎乗をしてる。そして、セントライトでも同じような位置で競馬をしている。前走未騎乗の馬でも菊花賞では同じように騎乗している。原点は、マンカフェでの成功体験か?

ディーマジェスティの前走は、

セントライト 10-9-9-4 1着

おっとぉ、こっちも準備万端だ!

ちなみにセントライトを1人気で1着して、天皇賞秋に進んだ2頭、イスラボニータ、フェノーメノとは、同じ1人気でも明らかに違う戦法だ。

イスラボニータ 4-6-6-6 1着(新潟開催だったけど、考え方は同じ)
フェノーメノ 6-4-3-1 1着

天皇賞秋の準備は菊花賞の準備よりちょっと前につけるってことだろう。ここからもディーマジェスティが菊花賞モードで走っていたことがわかる。

で、1着!?
これまたギブ!

ルメールと蛯名のベストポジションの取り合いか?
ダービーみたいに同じような位置での凌ぎ合いか?(ダービーではサトノダイヤモンドの後ろにディーマジェスティ)

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それでも、1人気を心配してみる
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「神戸新聞杯を1人気で1着した馬が菊花賞で1人気になったら1着する」(だが…)

ここ数年書いていて、それを書いてもなお、ゴールドシップもエピファネイアも上記を満たし1着した。
しかし、2年前の菊花賞では神戸新聞杯を1人気で1着して、菊花賞でも1人気になるであろうワンアンドオンリーを心配した(2年前のコラムにて心配)。

理由は神戸新聞杯の勝ち方が僅差だったからだ(アタマ差)。過去、僅差で勝って、距離不向きを理由に天皇賞秋に向かったディープスカイが脳裏にちらついて、心配したわけだ。

で、ワンアンドオンリーは1人気になって、9着に惨敗した。で、これを教訓として追記した。

「ただし、神戸新聞杯をギリで勝った場合はヤバイ可能性あり」

京都新聞杯が春に移動し、神戸新聞杯が今の時期に移ったのは2000年。
以下は、それ以後の神戸新聞杯を1人気1着した馬と着差と次走の成績だ。

14年ワンアンドオンリー 0.0 アタマ差 →菊花賞1人気9着
13年エピファネイア 0.4 2馬身1/2 →菊花賞1人気1着  
12年ゴールドシップ  0.4 2馬身1/2 →菊花賞1人気1着
11年オルフェーヴル  0.4 2馬身1/2 →菊花賞1番人気1着
08年ディープスカイ 0.0 クビ差 →天皇賞秋3番人気3着
05年ディープインパクト 0.4 2馬身1/2 →菊花賞1番人気1着
04年キングカメハメハ  0.2 1馬身1/4 →天皇賞秋目指すも引退
02年シンボリクリスエス  0.4 2馬身1/2 →天皇賞秋3番人気1着
01年エアエミネム 0.0 クビ差 →菊花賞3人気3着

菊花賞を勝った馬は奇しくも神戸新聞杯を0.4差(2馬身1/2)で勝っている。
クビ差、0.2差で勝ったディープスカイとキングカメハメハは目標を天皇賞秋に置いていた。
シンボリクリスエスは0.4差で勝って、天皇賞秋に進んで1着した。菊花賞に出走していても勝っていたかもしれない。

ディープスカイもキングカメハメハもシンボリクリスエスも最初から目標は天皇賞秋と公言していた記憶がある。シンボリクリスエスはともかく、キングカメハメハもディープスカイも最初から3000は長いと考えていたわけだ。そして、その2頭は神戸新聞杯では1人気で1着したけれど、0.4秒の着差をつけられなかった。

タイム差なしで勝ったディープスカイは天皇賞秋に向かい3着し、ワンアンドオンリーは菊花賞に向かい9着に敗れた。

神戸新聞杯を叩いて、さらに状態アップ!
との声があちこちから聞こえてくる。実際、そのとおりだろう。でも、本質的に距離が長かったら、状態はよくても取りこぼす可能性はある。

陣営の「距離はベストではない。あとは騎手に任せる」というコメントはあながちウソではないだろう。
状態がすべてを凌駕するか、距離適性には勝てないか? 

1人気ならば、神戸新聞杯の勝ち方を重視したい。だから自分は心配する。

サトノダイヤモンドの魅力を「加速」と表現したルメールだけど、春のクラシックではサイボーグ009ばりの「加速装置!」っぷりは自分には確認できなかった(勝手に期待を膨らませただけかもしれないけど)。

もし、距離不安があるのならば、菊花賞でも自分の思い描く加速装置は発動しないことになる。ルメールの腕がどこまで発動するか。

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それでも、2人気を心配してみる
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ディーマジェスティはやや出負け気味なところがあるのが心配だ。
だいたい2回に1回出負け気味で(あくまでも『気味』、完全なる出遅れはない)、前走も出負け気味だった。

セントライトは12頭立てだったからことなきを得たけれど、18頭フルゲートだとどうであろう。

皐月賞も出負け気味だったけれど、皐月賞は展開的にそれが功を奏した。京都ではたとえ長距離でも、皐月賞のような後方からの競馬では勝ち目はないだろう。ポジションを奪うことが使命ならば、些細でも出負けはない方がいい。

面白いのは、出負け、出遅れ癖のある馬は、枠入りが後になる偶数番を希望しがちだけど、ディーマジェスティは後入りの偶数番で出負けする傾向があること。

初戦  1番 ○
2戦目 4番 ×
3戦目 14番 ×
4戦目 4番 ○
5戦目 18番 ×
6戦目 1番 ○
7戦目 4番 ×

ディーマジェスティはゲートに入って、少し落ち着かせてからスタートした方がいいのかもしれない。

それよりもっと心配なのは、偶数、奇数かよりも内か外かだ。もちろん内枠の方がいい。

鞍上のGO WEST蛯名騎手が、京都3000と3200では内枠名人であることは、菊花賞のコラムでも天皇賞春のコラムでも書いている。

以下は蛯名騎手の菊花賞の成績。

過去21年で13回騎乗。
15年 2枠3番 タンタアレグリア 6人気4着
14年 2枠4番 サウンズオブアース 4人気2着
13年 6枠11番 ヒラボクディープ 17人気17着
11年 1枠1番 トーセンラー 3人気3着
09年 8枠16番 ナカヤマフェスタ 4人気12着
04年 7枠14番 ハイアーゲーム 3人気11着
03年 8枠16番 ヴィータローザ 7人気7着
02年 6枠11番 タイガーカフェ 11人気13着
01年 2枠2番 マンハッタンカフェ 6人気1着
00年 5枠9番 ジョウテンブレーヴ 5人気8着
99年 3枠5番 ラスカルスズカ 4人気3着
98年 4枠7番 ダイワスペリアー 4人気6着
95年 7枠15番 ホッカイルソー 7人気3着

3枠より内に入ったのは5回。やったー! すべてで掲示板だ。そして4回馬券になっている(ゆえに去年の4着はパンチドランクだった)。4枠より外で馬券になったのは21年前のホッカイルソーのみ。天皇賞春はここでは書かないけれど、内枠ほど強いのがわかる。フェノーメノ1着だけでなく、アルナスライン2着もマンハッタンカフェ1着もカレンミロティック3着も内枠だった。

1、2人気の馬で菊花賞に騎乗したことはないから、ディーマジェスティは別という考え方もできるけれど、外枠での負け方が派手なのは気になる。

以上のことを組み合わせると、
枠は「内枠の奇数番」がいいことがわかる。

とはいえ、枠番だけはどうしようもない。あとは運を天に任せるだけだ。

つまり、
ディーマジェスティは運否天賦、
サトノダイヤモンドは神戸天賦、
で心配ってわけだ。

ディーマジェスティは蛯名のGO WEST、サトノダイヤモンドは加速装置。
どちらにもここで発揮してもらい、ブラボー!と喝采を送りたい。
けれど、やっぱり心配は心配だ。

ディーマジェスティは外枠に入ったら心配してみよう。
サトノダイヤモンドも距離不安説を採用したから、外枠に入ったらこれまた心配してみよう。
つまり、両方が外枠に入ったら、大いに心配してみようってことだ。結局、運否天賦だ。

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菊花賞注目馬
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コスモジャーベ
シュペルミエール
プロディガルサン

ポジションで攻めたならば、注目馬もポジションで攻めたい。
今年の1、2人気が8番手前後で競馬をすると決めつけた以上は、相手は「3角5、6番手以内」にいそうな馬を狙ってみたい。

菊花賞は、1頭は「そこ」にいる馬が馬券に絡むからだ。

先行しそう部門
シュペルミエールとジュンヴァルカンを比較して、より直近で使われたシュペルミエールを選んだ。距離3000のG1のぶっつけが通用しないとは思わないが、前走が1000万の馬のぶっつけは厳しいと思うからだ。Mデムーロ騎乗は魅力的だけど、福永、川田が騎乗して、今回Mデムーロというのはなんか気に入らない。

ならば、前走狙いすまして、GO WESTし、1人気で1着し、権利を獲得して、そのままWESTに居座ったシュペルミエールに魅力を感じる。前走の北村宏の乗り方を見ていたら、去年菊花賞を勝ったキタサンブラックが見えた。一瞬だけど見えた。

競馬印象派の錯覚!? 戯言!? それは十二分に考えられる。一切否定しない。でも、向こう正面でちょっと見えた。ちょっとでも見えちゃったんだからしょうがない。

表のGO WESTが蛯名のディーマジェスティ、裏のGO WESTが北村宏のシュペルミエール。うむ、バランスが取れた! どちらも1枠が欲しい系! そこも表裏一体だ!

逃げ部門
コスモジャーベとアグネスフォルテとサトノエトワールで比較して、コスモジャーベを選んだ。コスモジャーベは逃げ馬ではない。しかし、自分は逃げはあると思っている(抽選で通る前提)。

なぜ、前走まで騎乗していた津村ではなく、丹内なのか? 津村は6年前に同じ岡田繁幸氏系のコスモラピュタで逃走し、5着した。抽選待ちとはいえ、津村も騎乗したかったのではないか? 
しかし、鞍上・丹内。そこに岡田繁幸氏の壮大な仕掛けが仕込まれていると思っている。

丹内だから逃げる。理由は省略! とにかく丹内だから逃げる! 逃げは基本ダメなんだけど、岡田系と武豊系はあり(ただし、掲示板系!)。コスモジャーベが出られるなら引っ掛けたい。

おまけ部門
前へ前へ前へ! 展開が前へ流れたら、いい線狙う競馬でじっと後方に控えていた馬が3着に突っ込んで来る。

プロディガルサンとレッドエルディストを比較して、プロディガルサンを選んだ。
レッドエルディストはダービー9着で神戸新聞杯3着、プロディガルサンはダービー10着でセントライト記念3着。似たような着順なら人気のない方を取りたい。

netkeiba.comの予想を見ると、レッドは3人気で、プロディガルサンは10人気。ならばプロディガルサン。

プロディガルサンは田辺に替わって、いい線狙う競馬の差し系に変わったとみた。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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