原田ジョッキーのインタビューも今回で最終回。障害レースに救われた彼ですが、障害レースで地獄を見たそうです。さらに減量復活前にもいろいろとあって…。減量効果の有無など、さまざまなことを語っていただきます！
(取材・文/大薮喬介)

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医務室で自分のふがいなさに泣きました

――障害に騎乗するようになって、気持ちにも変化が現れましたか？

原田　ええ。まだ必要とされているんだという実感もあって、当時の自分を受け入れることができるようになりました。今思うと、あの時の自分は人間ができていなかったんだと思いますね。それこそ、障害で2勝目を挙げた時ですよ、「せっかくジョッキーになったんだから、自分にできるところまでやってみよう」と思えたのは。悪くいえば、あきらめですけど、1番人気になるような馬に乗りたいとか、望んでも叶わないことを考えても一歩も前には進めませんから。今騎乗させていただいている馬を、ひとつでも上の着順に持ってこられるようにしようと思えるようになりました。

――3年目は障害で4勝、平地で8勝して、自身初の2ケタ超えでしたね。

原田　おかげさまで3年目は勝たせていただきました。ただ、4年目は減量がなくなりましたから(苦笑)。

――ああ、当時は4年目からは自動的に減量がなくなるんですよね。

原田　はい。ただ、4年目の最初は、減量が切れても1日6鞍騎乗させていただいたりして、結構乗っていたんですよ。3年目にいろいろな厩舎を手伝わせていただいていたこともあって、騎乗数は減らなかったんです。減量が切れることは知っていたので、ある程度は覚悟していたんですが、これなら大丈夫かなと思っていたんです。

――順調だったわけですね。

原田　そうなんです。でも、中山グランドジャンプで落馬してケガをしてしまって…。

――カントリースノーに騎乗されていた時ですよね。

原田　ええ。3年目の終わり頃に勝ち出して、これからという時だったんです。自分の中でもケガだけはしてはいけないと思っていた矢先でしたから。鎖骨骨折だったんですが、僕自身は骨折していたのがわかったので、医務室で自分のふがいなさに泣いてしまいました。

――ケガの状態はひどかったんですか？

原田　1か月ほどで完治しました。戦線離脱している間はもう放心状態で、競馬も観たくありませんでした。観ることがあっても心がザワつきましたね。乗り替わって、そこで勝たれてしまったら、もう僕に戻ってはこないですから。自分のせいだとはわかってはいても、耐えられませんでした。障害レースに救われたんですが、今度は障害レースで地獄を見てしまって…。複雑でしたね…。

――復帰されてからの環境はどうだったんですか？

原田　まずは復帰しました、と周囲に知ってもらわないといけないですからね。有名なジョッキーだったら、復帰したことを報道などで知りますが、僕の場合だと復帰して3週間経っても、「復帰してたんだ」って言われることがありますから。

――短い期間でも戦線離脱をすることは大変なことなんですね。

原田　本当に大変ですよ。だいたい馬を使う予定は1か月先まで決まっているわけです。下手をしたら、鞍上まで決まっていて。そうなると、僕が復帰してから、ケガをする前の騎乗数に戻すには完治した時期の倍はかかるんです。

――想像以上に厳しいですね。

原田　しかも、ようやく(騎乗数などが)戻ったと思ったら、また夏にケガをしてしまったんです。さらに追いうちをかけるように、年末に減量期間が5年に延びることが報道されて、周りから「減量が復活するらしいな。来年頼むな」って言われて。それで年末の騎乗数は増えない、しかも減量は翌年の3月からだったので、1〜2月は年末と同じ状態で…。この時期はもう地獄でしたね(苦笑)。

――5年目で減量が復活するといっても、3月からだったんですか。だから、今年の1〜2月は例年と同じような成績だったんですね。

原田　そうなんですよ。もうどうしようもなかったですね。

――ただ、減量が復活してからは勝利数も騎乗数も増えましたよね。とくに夏は北海道で8勝と大暴れでした。

原田　いい馬に騎乗させていただいて感謝しています。今年が正念場ですよね。減量が復活したといっても、僕の場合は今年限定ですから。

――ああ、そうか。来年は6年目になるから減量が取れるんですよね。

原田　ええ、でも本当は減量が取れても、同じ馬に乗ったら同じ着順に持ってこられる自信はあるんです。

――減量は有利ではないんですか？　よくスタートが違うと聞きますけど。

原田　そういう人もいますし、ベテランの人で「減量いいよな」って言っていることがありますけど、はっきりいって関係ないと思いますね。僕はスタートに自信があるのですが、減量がある時とない時の差を感じたことはありませんから。競走馬は500キロ前後もあるのに、1〜3キロの差がどれほどあるのか、微妙だと思いませんか？

――確かにそうですね。

原田　「減量」があることで騎乗をいただくことがあるのは事実です。だから、今年騎乗数や勝利数が増えたのも「減量」のおかげだとは思いますが、レースに影響があるのではなくて、あくまでもセールスポイントだと思っています。減量がなくても、今年と同じ質の馬に騎乗させていただけるなら結果を出す自信はあります。そのためにも、なんとか今年はいい結果を出して、来年につなげたいですね。

――では、最後に今秋、そして今後の目標を教えていただけますか？

原田　実現は難しいと思いますが、目標を高く持って今年中に「☆」にしたいです。そして、いずれはGIを勝ちたいですね。レース後にインタビューされるようなジョッキーになりたいです！

【次回のキシュトーークU25は!?】
中井裕二ジョッキーの登場です。2度目の登場ですが、前回は「ファンサービス委員会」についてお聞きしました。今回は今思うこと、悩み、今後のことなど、彼の本音をじっくり聞いていきたいと考えています。乞うご期待！