スマートフォン版へ

まだ完成途上の昨年とは違う/天皇賞・秋

  • 2016年10月29日(土) 18時00分


間隔が詰まった日程も堪えた前走

 負けると大凡走なので、その際の印象が悪すぎて「怪しいエイシンヒカリ」は、海外メディアには「クレイジー・ホース」とささやかれたらしい。

 確かに【10-0-0-3】は難しい馬の成績そのものだが、気合が入りすぎてイレ込んだり、リズムが悪くなって凡走するのは、間隔を空けずに出走した際だけ。

 初戦を含め3カ月以上の間隔があっての成績は、【5-0-0-0】である。そこで、天皇賞(秋)制覇のために今年は毎日王冠に出走しなかった。

 東京では、長い地下馬道でイレ込んでしまうため、カッカしてしまう危険は残るが、フランスに渡って芦毛を伝える母の母の父カロと同じようにイスパーン賞を制し、4代母の父シーバードが伝説を残した凱旋門賞には挑戦できなかったが、確実に本物になった。

 アスコットでの失速は、もともと快速系に重馬場など巧者のはずもなく、間隔が詰まった日程も重なって堪えたため。

 東京2000mには1分58秒3の快走があるが、ちょうど2年前の秋、当時は3歳春デビューの5戦目。オープンへの格上がり、初の左回りの一戦のこと。前半1000m通過58秒2で飛ばしたあと、直線に向くと陣営が心配していたようにまだ左回りに対応できず、外へ外へと斜行。最後は外ラチ沿いまで斜めに走っての圧勝の記録である。

 当時とは総合力が異なる。左回りも平気。同じように先行するなら、本質が快速系のエイシンヒカリ、1分58秒のカベを大きく突破するなど案外たやすいことだろう。昨年の天皇賞(秋)は、毎日王冠のあとでリズムが悪くダッシュ一歩。まだ完成途上で、武豊騎手には脚質の幅を広げたい展望もあったから、前半1000m通過60秒6のスローなのに、敢えてムリにハナを切りに出なかったため。結果、追い比べで0秒7も差されたから、今年はライバルの切れをなしくずしにするような少し厳しいペースの主導と思われる。

「58秒5-59秒0」=1分57秒5くらいの激走に期待したい。追い切りから見て、今年は完調だろう。

 モーリスは太め残りではないか、と思えるくらいのど迫力の動きをみせた。当然、逆転の一番手だが、逃げ切りが決まるようだと、エイシンヒカリの相手はもつれて狂う可能性が高くなる。伏兵として切れないが渋いサトノノブレスも2番手候補に入れたい。鋭い動きをみせた牝馬ルージュバックは、木曜日に追って事前計測(申告)は445キロだった。前回は454キロ。過去、最低体重が9着に凡走した3歳春の桜花賞の444キロなので、当日輸送後の身体作りと、発表馬体重に注目したい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング