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ヌーヴォレコルトが競馬史に新たな1ページを…BCフィリー&メアターフ展望

  • 2016年11月02日(水) 12時00分


死地から生還したレディイーライが1番人気


 ヌーヴォレコルト(牝5、父ハーツクライ)が出走予定のG1ブリーダーズCフィリー&メアターフ(芝10F、サンタアニタ)の発走が、現地時刻5日(土曜日)午後0時43分、日本時間の6日(日曜日)午前4時43分に迫っている。

 26日(水曜日)未明に現地に到着したヌーヴォレコルト。同馬にとって初めての海外遠征となった、昨年12月の香港国際競走の際には、輸送機のストールに入るのを嫌がるなど、周囲をてこずらせる場面もあったが、今回は実にスムーズに輸送をこなしたようで、まずは第一関門突破である。相手は揃ったが、芝の中距離路線といえば我が国のお家芸でもあり、本馬の父ハーツクライは海外競馬に強い種牡馬である。牡馬の一線級を相手に奮闘してきた同馬が、牝馬相手のここを狙ったからには、目指すべきは頂点で、持てる力を存分に発揮して日本の競馬史に新たな1ページを書き加えて欲しいものだ。

 アメリカのデイリーレーシングフォームも、イギリスのブックメーカー各社も、ほぼ横並びで1番人気に推すのが、地元のレディイーライ(牝4、父ディヴァインパーク)である。一昨年8月のデビューから、G1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)、G1ベルモントオークス(芝10F)という2つのG1を含めて、無敗の6連勝をマーク。鋭い末脚を武器にした馬で、ぶっちゃけて言えば、筆者は当時からこの馬の大ファンであった。

 ところが、彼女を悪夢が襲ったのが、ベルモントオークスの直後であった。勝ち馬としてドーピング検査のために立ち寄った馬房から自厩舎に戻る途中で、レディイーライは釘を踏んでしまい、左前肢の蹄を負傷。釘はすぐに抜かれて、当初は軽症と見られていたのだが、1週間ほどすると同馬が右前の蹄を痛がる素振りを見せ、精密な検査を施したところ、右前の蹄に蹄葉炎が原因とみられる変位を発症していることが発覚。そしてその後まもなく、左前肢にも蹄葉炎の兆しがあるとの診断が下ったのである。

 このニュースが伝わったのが、ベルモントオークスからちょうど10日後の、昨年7月14日のことで、筆者を含めて世界中の競馬ファンが衝撃を受けることになった。詳述するスペースはここにはないが、蹄葉炎とは馬にとって、生命の危険に晒されることもままある怖い病気で、アメリカから逐次伝わってくるニュースを、祈るような思いで目にしたものである。

 その彼女が、命を取りとめ、のみならず現役復帰を果たしたのだ。1年2か月振りの復帰戦となったサラトガのG2ボールトンスパS(芝8.5F)では、2着に敗れてデビュー以来の連勝がストップしてしまったが、10月8日にベルモントパークで行われたG1フラワーボウルS(芝10F)を鮮やかな競馬で快勝。自身3度目のG1制覇を果たすとともに、完全復活をアピールしたのである。

 ヌーヴォレコルトも大好きな馬で、同馬の優勝を心から祈る気持ちがあると同時に、死地から生還したレディイーライに、この路線の頂点に立って欲しいという思いも、筆者にあることを吐露させていただく。

 芝のレースゆえ、充分に警戒しなくてはならないがヨーロッパ勢である。実績面で最上位は、G1愛オークス(芝12F)に加えて、あのファウンドを破ってG1ヨークシャーオークス(芝12F)を制しているセブンスヘブン(牝3、父ガリレオ)で、アメリカのデイリーレーシングフォーム、イギリスのブックメーカー各社とも、2番人気に支持している。

 能力は非常に高い馬だと思うが、しかし一方で、サンタアニタの小回りコースをこなす器用さを備わっているかどうかは、未知数だ。また、10Fという距離もこの馬には短すぎる懸念を、抱かざるを得ない。

 英国のブックメーカー各社が、ここへ来て人気を急浮上させているのが、10月15日にアスコットで行われたG1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝12F)で3着となって(同競走でセブンスヘブンは5着)、ここへの参戦を決めたクイーンズトラスト(牝3、父ダンシリ)である。春の3歳クラシックには乗れず、7月にグッドウッドのG1ナッソーS(芝9F192y)でマインディングの2着となって、一躍脚光を浴びた馬、その後、G1ヨークシャーオークス3着を経て、G1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ3着だから、BC遠征に踏み切ってしかるべき実績の持ち主と言えよう。ただし、この馬もセブンスヘブン同様に、小回り馬場をこなせるかという疑問を拭うことが出来ない。

 こうしたヨーロッパ勢よりは、フランス在籍時の昨年、G1ヨークシャーオークス3着、G1ヴェルメイユ賞(芝2400m)3着などの実績があり、アメリカ移籍後の今季8月、アーリントンのG1ビヴァリーディーS(芝9.5F)を制しているシーカリシ(牝4、父ユムゼイン)の方が、信頼性としては高いと見るのが筆者の見解である。

 このレースも、枠順が確定して以降、netkeibaのページ上で予想を発表させていただく予定ですので、最終結論はそこまでお待ちいただきたいと思う。なおレースの模様は、グリーンチャンネルで生中継をする予定ですので、ぜひご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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