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偉大な兄姉に迫れるか、ヘヴンリーロマンスの娘キエレ

  • 2016年11月02日(水) 12時00分
アレラーモ(牡 栗東・高野友和 父ルーラーシップ、母リビアーモ)
 父ルーラーシップは現時点でJRAファーストシーズンサイアーランキングで第1位。勝利数は現在9勝と、ディープブリランテ(10勝)に逆転を許したものの、収得賞金では依然としてトップの座にある。本馬の2代母ラトラヴィアータはスピード型の名種牡馬サクラバクシンオーの全妹で、母リビアーモは府中牝馬S(GIII)4着馬。半姉バリアーモ、半兄ジャガンツ(いずれも父シンボリクリスエス)は1勝馬で、近親にミッキードリーム(11年朝日チャレンジC-GIII)がいる。トニービンのクロスを持つルーラーシップ産駒は現在3頭がデビューして1頭が勝ち上がり、残り2頭のうち1頭は新馬戦3着、もう1頭は新馬戦4着なので、デビューしている馬はいずれすべて勝ち上がる可能性が高い。本馬はこのパターン。母の父アドマイヤベガは「サンデーサイレンス×トニービン」なので、父が持っていないサンデーサイレンスの血も持っている。ルーラーシップ産駒は1800m以上でとくに強く、スタミナ色が強いので、サクラバクシンオーの全妹の血は有効に働きそうだ。芝向きの中距離タイプだろう。

エピューレ(牝 栗東・沖芳夫 父ゴールドアリュール、母コンスヴァール)
 母コンスヴァールは新馬戦(ダ1200m)を勝ち上がったあと、故障もあって順調に使うことができず、通算5戦1勝の成績で競走生活を終えた。マッシヴプリンス(1000万下)の全姉、エンシャントアーツ(準OP)の半妹であり繁殖牝馬として期待できる。本馬は「ゴールドアリュール×ブライアンズタイム」という組み合わせ。これはエスポワールシチー(09年ジャパンCダート-GI、10年フェブラリーS-GIなど)と同じで、パワーと底力に特長がある。ゴールドアリュールの娘は、息子に比べてダート向きの大物がほとんど出ていない。パワーを本領とする血統なので、それが活きやすいのは牝馬よりも牡馬だからだろう。ただ、母コンスヴァールはファレノプシス(98年桜花賞-GI、98年秋華賞-GI、00年エリザベス女王杯-GI)とほぼ4分の3同血で、日本ダービー馬キズナの近親でもある。芝でもやれそうな雰囲気はある。芝・ダート兼用の中距離タイプ。

キエレ(牝 栗東・松永幹夫 父Distorted Humor、母ヘヴンリーロマンス)
 母ヘヴンリーロマンスは牝馬ながら天皇賞・秋(GI)を制したほか、札幌記念(GII)、阪神牝馬S(GII)を勝った名牝。日本で産んだ3頭の子のうち、ウイニングサルート(父フレンチデピュティ)とヴェイロン(父キングカメハメハ)が1000万下まで出世している。その後、渡米して繁殖生活を続けているが、アメリカで誕生した産駒は素晴らしく、アウォーディー(父ジャングルポケット/日本テレビ盃-Jpn2など重賞4勝)、アムールブリエ(父Smart Strike/エンプレス盃-Jpn2など重賞5勝)、ラニ(父Tapit/UAEダービー-首G2)とすべてダート重賞を勝っている。本馬の父Distorted Humorは競走馬としてはさほど目立つ存在ではなかったが、種牡馬として成功し、Drosselmeyer(11年ブリーダーズCクラシック-米G1)、ファニーサイド(03年ケンタッキーダービー-米G1、03年プリークネスS-米G1)、本邦輸入種牡馬フォーティナイナーズサンなどを出している。11年には米リーディングサイアーに輝いた。日本で走った産駒はダート向きが多く、エーシンクールディ(11年根岸S-GIII・4着)が代表産駒。本馬もダート路線で重賞級の実績を残しそうだ。

ダノンキングダム(牡 栗東・安田隆行 父ステイゴールド、母ヴィヤダーナ)
 京都2歳S(GIII)で2着となったダノンメジャー(父ダイワメジャー)の4分の3弟。同馬はスランプの時期を乗り越えて逃げに活路を見出し、オープンクラスに返り咲いた。今後は重賞戦線で再び名前を見ることになるだろう。フランス産の母ヴィヤダーナは出走歴こそないものの、Visindar(06年グレフュール賞-仏G2)、Visorama(03年フロール賞-仏G3)、Visionary(97年仏2000ギニー-G1・3着)、Visionnaire(99年仏オークス-G1・3着)などを兄弟に持つ良血。フォーティナイナー(米2歳牡馬チャンピオン)やSwale(84年ケンタッキーダービー-米G1、84年ベルモントS-米G1)などが出たアメリカ由来の名牝系で、2代母Visorをアガ・カーン4世殿下が購買してフランスに移した。本馬はステイゴールド産駒。兄ダノンメジャーとの共通点はノーザンテーストとNight Shiftの相似な血のクロス(4×3)を持つこと。血統的には中距離タイプだが、ステイゴールド産駒なので気性面を考慮するとマイル前後が合っているかもしれない。

フラワーシップ(牝 栗東・須貝尚介 父ステイゴールド、母ポイントフラッグ)
 中長距離の芝GIを6勝したゴールドシップの全妹。「ステイゴールド×メジロマックイーン」はドリームジャーニー(最優秀2歳牡馬、最優秀4歳以上牡馬)とオルフェーヴル(年度代表馬)の兄弟やフェイトフルウォー(11年セントライト記念-GII)などが出ている。「ステイ×メジロ」なら何でも走るわけではなく、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟はノーザテーストのクロスを持ち、ゴールドシップは母方にThe Minstrelを、フェイトフルウォーはNijinskyを持っている。いずれもNorthern Dancer系の血だ。とくにゴールドシップのThe Minstrelは、ノーザンテーストと同じ「Northern Dancer×Victoria Park」という組み合わせなので、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟と配合の骨格がよく似ている。これらの活躍馬はすべて牡馬。本馬は牝馬なのでそのあたりが未知数ではあるが、大いに期待してみたい。兄と同じ須貝尚介厩舎なので仕上げ方も手の内に入っているだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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