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57キロと出遅れと取りこぼしと奥秩父

  • 2016年11月03日(木) 12時00分



G1の狭間の週は毎年「呪い」でくくって馬券検討している。
ここにムーアがいるとなると、そこに費やす時間が必要になるけれど、ムーアは大忙しで今週末はアメリカ(ブリーダーズカップ)で騎乗だから、ムーア・タイムの必要もない(BCフィリー&メアターフを買う場合は必要。セブンスヘブンに騎乗予定)。だから今年も「呪い」でくくってみる。

そういえば、「呪い」のニュアンスを説明するのに毎回引用している大リーグ・シカコ・カブスの「ヤギの呪い」(ワールドシリーズに勝てない呪い)だけど、今年はついに71年ぶりにワールドシリーズに進出した。残念ながら、インディアンスに負けて、ヤギの呪いは解除できなかった…と書こうとしてたら3勝1敗から粘って3勝3敗になってしまった! このコラムがアップされてる頃には結果が出てると思うけど、カブスが勝ったら108年ぶりのワールドチャンピオンで、ヤギの呪いの封印が解けたとシカゴでは大騒ぎだろう。結末やいかに!?

では今年のこちらの呪いはどうかな?

アルゼンチン共和国杯・57キロの呪い
京王杯2歳S・1人気出遅れの呪い
ファンタジーS・1人気取りこぼしの呪い
みやこS・奥秩父の呪い

去年同様に今年も4本立てにしてみた。ヤギの呪いほどの悠久さはなく、ときどき解除もあるゆるい呪いだけど、G1の骨休みにちょーどいいので、毎年注視している。

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アルゼンチン共和国杯・57キロの呪い
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「アルゼンチン共和国杯で57キロを背負わされると、基本的には勝ち負けできない。最高で3着まで」

「ただしそれでも57キロで1着した馬は、G1で勝ち負けできるポテンシャルあり」

57キロ馬の成績
この22年間で、2-0-5-32。

1着馬はトーセンジョーダン、フェイムゲームの2頭。
トーセンジョーダンはその後天皇賞秋を1着した。
フェイムゲームはその後天皇賞春をクビ差2着した。
どちらも4歳での勝利だった。

つまり、アルゼンチン共和国杯で57キロを背負わされると、なかなか勝ち負けできないし、あっても3着までだけど、のちにG1で勝ち負けできるような逸材だったら、57キロでも1着できる、ということだ。

去年は4頭の57キロ馬が出走して、0-0-0-4だった。
マイネルフロスト4歳 10人気6着
ラブイズブーシェ6歳 12人気8着
フラガラッハ8歳   13人気17着
ヒラボクディープ5歳 6人気18着

人気のない馬ばかりだから、呪いというにははばかれる。ただ57キロの中では4歳馬が一番頑張れるという点では、4歳のマイネルフロストの着順が一番よかったことは覚えておきたい。

ちなみに「3歳55キロの2択」という呪いというより、丁半博打的な項目もあるけれど、今年は3歳の登録がないので、スルーしておく(3歳はマイナス2キロと仮定すると55キロに該当する)。

そのアルゼンチン共和国杯に今年は3頭の57キロ馬がいる。

アルバート 5歳牡馬
クリールカイザー 7歳牡馬
ムスカテール 8歳牡馬

4歳がいない時点でトーンダウンだけど、今年は3人気が予想されるアルバートがいる。クリールカイザーも伏兵だ。検討の必要はある。

はたして、この中にG1で勝ち負けできる逸材はいるのか?
勝った2頭には、4歳で、人気があって、数は少ないながらも、それなりに濃い東京実績があった。

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トーセンジョーダン 4歳 1人気1着 前走アイルランドT(オープン)2人気1着
当時の東京成績1-1-0-0(共同通信杯2着)

フェイムゲーム 4歳 2人気1着 前走オールカマー4人気6着
当時の東京成績1-0-0-1(ダイヤモンドS1人気1着)
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アルバート 前走天皇賞春 6人気6着
東京 3-0-2-3
東京重賞実績・なし

クリールカイザー 前走オールカマー 4人気4着
東京 1-4-2-6
東京重賞実績 14年アルゼンチン共和国杯4人気2着(56キロ)

ムスカテール 前走新潟記念 16人気7着
東京3-1-0-4
東京重賞実績 13年目黒記念4人気1着(56キロ) 12年アルゼンチン共和国杯3人気2着(55キロ)

みんなそれなりに実績があるけれど、クリールカイザーは57キロを背負うようになってから、以前ほどの走りが見られなくなった。絶対的逃げ馬がいないここは、田辺の変幻自在の先行・攪乱戦法が炸裂するかもしれないけれど、今は中山の方が変幻しやすいと見て、軽んじてみる。

ムスカテールも年齢とともに少しずつ勢いが落ちて来ていて、57キロだと重賞では苦しい感じだ。

まだノビシロがありそうなのがアルバートで、人気になるのもわかる。でも、そういう馬が敗れるから「呪い」なわけで、この馬こそが今回の呪いのターゲットとみて、やっぱりナイガシロにしてみる。

アルバートは、走っても3着まで!

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アルゼンチン共和国杯・注目馬
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ワールドレーヴ 52
プレストウィック 54

ハンデ戦だけど、54キロ以下の馬がぜんぜん走れてない。
馬券になったのは、この10年で6頭しかいない。しかもここ5年では1頭だけだ。

だから軽んじるという考え方もあるだろうけど、だからそろそろ食い込むという考え方もある。その向こうの5年では5頭も馬券に絡んでいいたからだ。

今年は上位人気陣がしっかりしてそうに見える。それゆえに激突し合うような気がしている。強そうな馬たち(強い馬という意味ではない)が激突したら、1着2着、4着5着に分かれ、3着の席が空くような気がする。で、4着5着の掲示板狙いの馬が3着に食い込む。そんな期待。そんな淡い淡い期待をしてみた。

プレストウィックは前走4着に負けたから54キロのままで出走できる。それでも上がりは3位だった。ここ数戦安定して上がり(3位以内)を使えていて、淡い期待を抱きたくなる。

ワールドレーヴもここ数戦安定して上がりを使えており、2着・4着・8着・4着・3着。掲示板狙いの競馬が得意そうだ。ここ2戦より3キロ減って、さらに掲示板狙いに磨きがかからないか? 中1週でも出走してくるようなら、どさくさに紛れて3着! そんな淡い期待を抱きたくなる。

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京王杯2歳S・1人気出遅れの呪い
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京王杯2歳Sの1人気は本当によく出遅れる。
なんだってこんなにまた!
と思うほど1人気が出遅れる。

この10年で7回出遅れ(出負け)していて、一昨年まで5年連続で出遅れ(出負け)ていた。

14年 ニシノラッシュ 田辺 3着
13年 モーリス    ムーア 6着
12年 テイエムイナズマ 池添 9着
11年 モンストール  柴田善 4着
10年 オルフェーヴル 池添 10着

3年前は鞍上がムーアだから、大丈夫と思ったら出遅れた。あのモーリスでも出遅れて6着だった。

去年はシャドウアプローチが1人気で、出遅れず好スタートをきって、3着だった。鞍上はCデムーロ。好スタートをきれても3着なら、1人気をリスペクトしすぎる必要はない。

今年1人気になりそうなのはレーヌミノルかな。ファンタジーSがあるのにこちらに出走することで、ことさら人気を集めそうだ。それはそうだ。でも、こういう挑戦の場合は馬主の理解が必要だ。はたしてどんな文句で馬主の理解を得たのだろう。

「京王杯の方がくみしやすし」「ファンタジーのミスエルテは脅威」
そんな目先の勝利を理由にはしてないはず。もっとスケールの大きいことばで夢を語っているはずだし、語っていて欲しい。

どんな理由であれ、話題になってしまったら、いっそう人気になってしまう。この1人気はなんだか危なっかしいような…。出遅れ、出負けの呪いが発動するような…。

馬は自分が何番人気か知らないからプレッシャーを受けるとしたら鞍上だろう。騎手だってきっとドリーミーな物語を聞いてるはず。そこから緊張感が生まれ、それが繊細な若駒に伝わって、出遅れ・出負けを誘発してしまのかもしれない。

ちなみにこのレースで出遅れ・出負けした馬の中にはオルフェーヴル、モーリスといったのちに超大物になる逸材もいるから1人気馬は覚えておきたい。

はっ! もしかしてそれか!?
「レーヌミノルはオルフェーヴルやモーリスになれます!」
うむ、すごいスケールだ!

「オークスまで目指すなら、今から遠征の練習をしておくべきです」くらいに思っていたけど、話としてはオルフェーヴルやモーリスの方がドデカイ! デラックスだ! これならたとえここで負けても馬主様も納得だ! 一石二鳥だ!

おっと、妄想がスパークしすぎてしまった。悪い癖だ。

ちなみにここで、お行儀よくスタートを切って、馬券になった2頭の1人気馬は、直後のG1(朝日杯)で5人気2着(フィフスペトル)、11人気3着(シャドウアプローチ)してるから、それも覚えておきたい。

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京王杯2歳S・注目馬
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レーヌミノルのことを考えていたら勝手に盛り上がってしまった。
こうなったら、堂々たる1人気になって、出遅れ・出負け、それ以外でもなんでもいいから、なにかをしでかして欲しい。

レーヌミノルに大注目しつつ、馬券的には前走・戸崎の3頭に注目。

モンドキャンノ ルメール 前走戸崎
タイムトリップ 田辺 前走戸崎
ドウディ   蛯名 前走戸崎

みやこSでもいっぱい発生しているけれど、京王杯でも前走戸崎がいっぱい発生している。
戸崎の騎乗する馬はコウソクストレート。

はたして戸崎は純粋に自己選択しているのか? とても興味深い。
いや、自己選択した、しないの「真意」はどうせわからないから、それはどちらでもいい。とにかくこういう場合に戸崎はきっちり1着、もしくは上記3頭に先着するタイプなのか、そこが知りたい。

これはリーディング・ジョッキーの宿命で今後もいっぱい出現するはず。
予想オッズを見ると、戸崎の騎乗するコウソクストレートが、当たり前だが前走戸崎馬たちより人気になりそう。ならば、自分は疑ってかかって、コウソクより人気のない3頭に注目してみたい。

コウソクストレートの前走は10/23。他3頭の前走はそれより前。ふつうに考えたら、コウソク優先で騎乗選択したとは解釈できる。

だが、しかし。モンドキャンノは新馬からわざわざ函館まで騎乗しに行った馬で、今回はルメール騎乗。とても気になる。

タイムトリップは田辺騎乗で捨て難い。京王杯2歳Sは、七夕賞、京成杯AH、アルテミスS同様に田辺臭の漂うレースだからだ。

ドウディは重馬場ならしぶとそうだ。

というわけで、京王杯2歳Sは、浜中のレーヌミノル、戸崎のコウソクストレートを大鑑賞しながら、モンドキャンノやタイムトリップやドウディらから買ってみたい。前走・戸崎馬の正体やいかに!?

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ファンタジーS・1人気取りこぼしの呪い
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この10年の1人気馬成績0-2-3-5。
5回の馬券圏外のうち4着が4回。5着が1回。
3着〜5着が8回。取りこぼしが多いのがわかる。

1人気になるような馬は、次走で阪神JFを見据えている馬が多いから、京都1400の外回りのここで控える競馬を試したくなるのかもしれない。

今年の1人気は間違いなくミスエルテ。
しかも抜けた1人気になりそうだ。もしこの馬も阪神JFを狙っているのなら、きっと後方競馬だろう。ベストポジショニストの池江師が先行競馬をさせるわけがない。理想は先週のスワンSをぶっこ抜いたサトノアラジンのような競馬か? でもサトノアラジンほど切れる保証はまだない。

となると大評判のミスエルテといえども取りこぼすリスクは回避できない。池江師が阪神JFを狙うのは珍しい。つまりマイルまでの馬と判断しているということだ。

フランケルの牝馬産駒がどんなレースをするのか大変興味深いけれど、ファンタジーSの1人気の取りこぼしの呪いを採用して、こちらも鑑賞にとどめておきたい。

ファンタジーS・注目馬
ドロウアカード
モンロー

ミスエルテに勝とうとしたら、逆の脚質、つまり先行するのが一番だろう。だから逃げるかもしれない馬に注目してみる。

ドロウアカードは前走ルメールで逃げ切った。今回、福永だけど、ベストポジショニストの福永が大本命馬と同じ戦法を使うとは思えない。すべてを見越した上で逃げか番手を選んで、連対を狙うのではないか?

新馬を2着か3着に負けて,次走で1着するクロフネ牝馬は大好きだ。それは芝だろうと砂だろうとどっちでもいい。とにかくクロフネ牝馬は新馬を負けて、2戦目か3戦目で勝ち上がる方が期待できる。

だからモンローに淡い期待を抱きたくなる。新馬を出負けして差して3着。2戦目をダートで逃げ切り。クロフネ牝馬特有のカッタリーノ成分が配合されてる可能性はある。あくまでも可能性だけど、人気がないならそれは魅力だ。

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みやこS・奥秩父の呪い
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ダートのレースは1、2人気の馬が激突するケースが多い。
だから1、2人気のワンツーが少ない。その最たる例が旧ジャパンカップダート、現チャンピオンズCだ(本当に1、2人気のワンツーがない!)。

チャンピオンズCの前哨戦でもあるみやこSも1、2人気のワンツーは少ない。
過去6回中ワンツーしたのは第1回のみだ。

第1回 1着2人気 2着1人気 3着9人気(以下、人気省略)
第2回 1人気 4人気 5人気
第3回 1人気 3人気 5人気
第4回 2人気 7人気 1人気
第5回 2人気 9人気 4人気
第6回 7人気 6人気 4人気

激突して、1、2人気が共倒れもしにくいのがわかる。どちらかは踏ん張って、勝つ。つまり1人気か2人気のチョイスを間違えなければ当たる。そう思っていた。しかし、去年は1、2人気が共倒れした。

自分は勝ったロワジャルダンと2着のカゼノコと1、2人気を絡めた馬券を買っていたから、けっこうなドランクを味わった。1、2人気は激突していただきたいけれど、ダブルで吹っ飛ぶのは勘弁して欲しい。

予想では
1人気 アスカノロマン
2人気 ラニ
(モーニンは回避で想定)

どちらが弾き返されるのかな…。今年はどちらか1頭は馬券圏内にいて欲しいな。

こう書くと、みやこSで激突してるのは1、2人気だけみたいに思われるけれど、全馬がチャンピオンズ出走を目指して(?)、激突し合ってるのもわかる。

それは過去6回中3回で、奥秩父(単100倍以上)の人気薄が奮闘していることからも伝わって来る。
10年 単147.9倍 14人気 アドマイヤスワット 4着
12年 単122.2倍 11人気 タガノロックオン  4着
14年 単321.8倍 16人気 イッシンドウタイ  4着

惜しい! もうちょっと。
もうちょっとで馬券になったのに…………!!!
そんな買ってた人の地団駄な呪い。

今年はどうかな?
タムロミラクルの単が100倍以上ついてたら、4着覚悟で少し買ってみたいけど、予想では69倍。惜しい! 

みやこSの注目馬
カゼノコ
タムロミラクル

今年はアスカロマンVS3歳勢(ラニ・キョウエイギア・グレンツェント)が激突ポイントだろう。きっとそうだ。
だから後方で力をためていそうなカゼノコとタムロミラクルに淡い期待を抱いてみた。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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