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小回りがむしろ味方になったダノンレジェンド/JBCスプリント・川崎

  • 2016年11月04日(金) 18時00分

撮影:高橋正和



陣営にとっては1年越しの悲願成就


 前走東京盃では内枠が仇となり、重賞を使われるようになってから初めて馬券圏内を外したダノンレジェンドが、今回はまた不運にも最内枠に入ってしまった。3番人気という評価はそれゆえだろう。コーナーがきつく難しいといわれる川崎コースであれば、なおさらのこと。

 しかし今回、決していいスタートとはいえないまでも、まずまず互角のスタートを切ったことで、コーナーのきつい小回りコースが、逆にダノンレジェンドに味方することになった。

 ハナ争いは、ソルテかコーリンベリーかと思われたが、ダノンレジェンドも出遅れずにスピードに乗ってしまえば速い。ソルテもいつもどおりの好ダッシュを見せ、大外枠のコーリンベリーは早々とハナをあきらめた。おそらく、さきたま杯でソルテと競り合って失速したことを思ってのことだろう。

 1コーナーまで、ダノンレジェンドとソルテが馬体を併せて競り合ったため、見た目にはハイペースにも思えた。ところが最初の3Fのラップは、12.5-11.5-12.7で、36秒7。ハイペースどころか、1400m戦としてはスローな流れ。普段南関重賞すら行われていない川崎1400mは、1コーナーの入口までそれほど距離がない。中ほどの枠からのスタートだったソルテにとっては、ダノンレジェンドが出遅れていれば楽にハナをとれただろうが、そうでなければハナをとるために、相当に仕掛けていかなければならない。さらに、コーナーがきついため1コーナーに入ってまで突っ張るわけにもいかない。もしそうすればレースが壊れてしまう。結果的にソルテの吉原騎手は控えざるをえず、しかも大外枠のコーリンベリーが早々と引いてくれたことで、ダノンレジェンドにとってはきわめて楽な展開になった。

 さすがに盛岡では60kgを背負って圧勝した能力の持ち主。コーナーを4つ回る1400mの実績もあり、しかも定量戦で、自分の展開に持ち込めればさすがに強い。ダートの短距離馬が目標とする1400m以下のGI/JpnIは、日本ではこのJBCスプリントが唯一で、ダノンレジェンド陣営にとっては1年越しの悲願成就となった。

 2着のベストウォーリアは、戸崎騎手がうまく立ち回った。レディスクラシックを勝ったホワイトフーガ同様、川崎のベストポジションとされる3番手のラチ沿いを追走。直線では唯一ダノンレジェンドに食い下がったものの、最後は振り切られて3馬身差をつけられた。この馬の強さは、相手次第で、逃げることもできるし、控えることもできること。一昨年のフェブラリーSで13着だったあとは、1600m以下に限れば3着以内を外したのは一度だけ。それも昨年のフェブラリーSの4着で、勝ち馬からはコンマ2秒差だった。強敵相手に崩れることもないが、JpnIでの勝利は一昨年、昨年と連覇したマイルチャンピオンシップ南部杯だけで、勝ち切るには展開やメンバーに恵まれてというところはありそう。

 コーリンベリーは、さすがに大外枠に入って勝ちに行く競馬ではなかったぶん、3着に入った。それでも2着のベストウォーリアからは5馬身差、勝ったダノンレジェンドからは1秒7の差がついただけに、ここでもダノンレジェンドの強さが際立つ結果だった。

 ここを目標にやってきたソルテには、掲示板にも乗れずの6着という厳しい結果となった。かしわ記念2着、さきたま杯を勝ったレースぶりから、これが実力ではないはずで、勝たなければいけないというプレッシャーはあったかもしれない。ただこの馬にはマイルのかしわ記念や南部杯も目標となるだけに、選択肢は少なくない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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