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このあとの活躍は約束されたに近い/アルゼンチン共和国杯

  • 2016年11月07日(月) 18時00分


佐々木主浩オーナーの馬運はすごい

 秋シーズン最大の出世レースにふさわしく、快勝したのは4歳馬シュヴァルグラン(父ハーツクライ)だった。これで最近10年のアルゼンチン共和国杯の勝ち馬は、8頭までが4歳馬。ハンデ戦ながら、4歳から勝ち馬出現パターンの連続となった。

 トップハンデ馬として4歳馬が勝ったのは、このレースがハンデ戦になった1984年以降、2000年マチカネキンノホシ(57.5キロ)2010年トーセンジョーダン(57キロ)につづいて史上3頭目であり、トーセンジョーダンはのちに天皇賞・秋、アメリカJCC、札幌記念を制している。58キロで勝ったシュヴァルグラン(ジャパンC予定)のこのあとの活躍は約束されたに近い。

 ハーツクライ産駒の成長力には定評があるが、ハーツクライは今年2016年の「2歳種牡馬総合ランキング」でも現在2位に浮上する絶好調サイアーでもある。

 母の父に登場するマキャベリアン(父ミスタープロスペクター)のタフな影響力にも定評があり、直系サイアーラインはストリートクライを経て大きく広がると同時に、日本ではホワイトウォーターアフェア産駒の「アサクサデンエン、スウィフトカレント、ヴィクトワールピサ」を筆頭に、3代母にグロリアスソングを持つハルーワスウィート産駒の「ヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィブロス」など、母の父として登場した際にもきわめて大きな存在である。

 昨年末に1600万下を脱出し、今春からオープン入りしたシュヴァルグランは、キタサンブラックの天皇賞・春0秒2差3着など、古馬のオープンで【2-1-1-1】。今回、58キロを背負って、初コースの東京で「1分15秒5-(6秒4)-1分11秒5」=2分33秒4というスローの2500mを上がり33秒7で鋭く伸びて快勝の内容を考えると、東京2400mのジャパンCでは、天皇賞・春→宝塚記念で連敗しているキタサンブラック逆転も十分に可能だろう。

 ゴール寸前で2着に押し上げたアルバート(父アドマイヤドン)は、休み明けのためかスタートもう一歩。道中は前のシュヴァルグラン、人気のモンドインテロ(父ディープインパクト)を見て進む位置だったが、予想以上の超スローのなか、自在型とはいえ予定よりだいぶ後方の位置取りになってしまったのが誤算か。直線に向いてシュヴァルグラン、同じく佐々木主浩オーナーのヴォルシェーブ(父ネオユニヴァース)に少し挟まれるようになったあと、坂上から2頭の間を割って突っ込んだが、勝ち馬に半馬身だけ及ばなかった。だが、半年ぶりでこの内容なら、勝ったシュヴァルグランとともに十分ジャパンCで通用する。これで2400〜2500mは【2-1-0-2】。平坦巧者の多い一族だが、東京の芝コース【3-1-2-3】。距離もコースにも不安はない。

 佐々木主浩オーナーの馬運はすごい。とくに友道調教師と、所有馬の将来を見据えた出走ローテーションに対しての信頼関係は強力。脚部不安で約1年半も休んでいた5歳ヴォルシェーブは、ようやく立ち直って条件戦を勝ったあと、ここが古馬になって初の重賞挑戦だった。期待通り、あとちょっとでシュヴァルグランとの「1着〜2着」独占が実現するところだった。5歳ヴォルシェーブは12月の「金鯱賞」に向かう予定。

 1番人気のモンドインテロは、この日、神がかりのC.ルメール騎手が騎乗機会8R連続連対中(土曜日から通算10R連続)とあって、途中から1番人気に躍り出た。1番枠から終始好位のインキープに出たが、スローで馬群が固まったため、最後までインから抜けだせなかったのが不利だった。インが伸びる芝コンディションではなかったから、バラけていればルメール騎手は少し外に回りたかったかもしれない。最終レースを多分に祭り上げられた形の単勝2.6倍にまでなったペプチドウォヘッドで勝ったルメール騎手は、これで今年JRA156勝(土日で10勝)。トップ独走とみえた戸崎圭太騎手の157勝に並びかけるところまで一気に追いついてきた。年末まで競り合ってくれると、ファンも助かることが多くなるはずである。

 伏兵陣では、6歳になって去勢手術をされたフェイムゲーム(父ハーツクライ)が、今回はちょっと細いように映ったが最後はインから鋭く伸びて勝ち馬と0秒4差。上がり33秒7だった。来季は7歳になるが、ここまで再三の休みをはさんで22戦しただけ。もともと息長く活躍する一族でもあり、もうひと花は十分に可能だろう。

 ムリ筋は承知で単騎逃げに注目した7歳クリールカイザー(父キングヘイロー)は、意外性を発揮するまでに至らず7着止まり。途中でペースアップするくらいの厳しい先行を期待したが、望外の超スローの単騎逃げになって、逆にわざわざ失速覚悟で動く必要がなくなってしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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