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天命と言ってもいい勝利

  • 2016年11月17日(木) 12時00分


人事をつくすだけというその姿勢


 いたずらに都合よき成果のみを期待するのは、天命を知らざることはなはだしいと言わねばなるまいと、松下幸之助は述べている。だから、この都合よき成果を計算してもいい競馬に魅力を感じるのではあるまいか。これだけは別と、めまぐるしい利害の波の中にいる日常から、しばし遠ざかることのできる幸せ、だから競馬は面白い。その競馬で、これぞ天命と言ってもいい勝利に接することがある。実に、爽やかな勝利と言ってもいい。

 エリザベス女王杯で初めてGI制覇を達成したクイーンズリングの吉村調教師が取材で述べていた言葉、「タイトルは欲しいし、馬にとっても、繁殖に上がった時に変わってきますから。チャンスでしっかり勝たせられるきゅう舎になっていかないといけないと思います。ただ、だからといって、特に普段と変えることはありません」と、人事をつくすだけというその姿勢が印象に残っていた。もちろんどの陣営もその精神でのぞんできたのには間違いないにしろ、開業5年、GI挑戦8度目でつかんだ栄光だったからこそ、人事をつくして天命を待ったことが報われたという思いを強くした。そして、立役者のミルコ・デムーロ騎手、GIは今年4勝目、通算で18勝目だが、いつも必らず、まず最初に馬を褒める言葉から始めるのが気持がいい。クイーンズリングには10回目の騎乗だったが、「いつも一生懸命に走ってくれる。自分も京都のGIを勝ちたかったが、彼女にはどうしてもタイトルを取らせたかった」と熱く語っていた。

 勝つときには、なにもかもがうまくいくものだが、スタートのタイミングが合わず遅れて思った位置取りにはならなかったが、前にマリアライト、ミッキークイーンを見る格好になり、2200米だからあわてることもないと気持を切り換えていた。直線は一番内を狙ったものの、先頭を行くシングウィズジョイがいて入れず、外からはミッキークイーンが来て前に出にくくなったところ、一瞬開いた間を突いてラストスパートに入れたのだった。ただひたすらの思いが通じ、天命が下って勝利することが出来たようなものだった。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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