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おそらくマイルこそベストのはず/マイルCS

  • 2016年11月19日(土) 18時00分


鋭いフットワークはパワフルになっている

 大種牡馬サンデーサイレンスの初年度産駒として、故障のため早々と種牡馬入りしたフジキセキは、競走馬として長く活躍したわけではないから、「初、早…」の形容とともになんとなく最初から早熟系のイメージがあった。

 また、大物ふうではない産駒がコツコツ活躍し、ランキングの首位争いをできなかった(父がずっと上に君臨していた)ことも重なり、やや地味な種牡馬の印象がなくもない。

 しかし、近年になってフジキセキの評価は上がっている。代表産駒のキンシャサノキセキは軽いスピード型と思われていたが、7歳、8歳時にGI高松宮記念を連覇した。牝馬のストレイトガールは、短距離の軽いスピード型と思われていたが、6歳、7歳時に底力がなければ好走さえ難しい東京1600mのヴィクトリアマイルを、快時計で連覇した。

 初期にフジキセキの代表産駒の1頭となったカネヒキリは、再三の脚部難と屈腱炎を克服し、何回も休みながら、JRA、公営をあわせGIを7つも制してみせた。早逝は残念。

 3歳秋のセントライト記念まで、皐月賞制覇を含み【6-2-0-0】のイスラボニータは、フジキセキが16年間の種牡馬生活で送り出したただ1頭のクラシックホース(日本の)。ここ2年半で1勝しかしていないから、成長が止まったようなイメージもあるが、タフな成長力を伝えるフジキセキの代表産駒である。いまが完成期だろう。ここまでさまざまな距離に挑戦したが、今季はここにマトを絞ったローテーションを組んできた。

 母方からも丈夫でタフな血を受け継いでいる。母イスラコジーンは、タフで丈夫な種牡馬だったコジーン(父カロ)の、21歳時の交配の産駒。コジーンは23歳時の種付けで、オークス馬ローブデコルテを送り出した。98年の朝日杯から、立ち直って3年半のちに02年の安田記念馬となったアドマイヤコジーンも同馬の日本に送り込んだ代表産駒。そのタフな血は受け継がれている。まだまだ元気いっぱいのマイルCS3番スノードラゴンは、アドマイヤコジーンの産駒である。意外に怖いところもある。

 イスラボニータの祖母は、31歳まで長生きしたクラフティプロスペクターの産駒。世界中にタフな血を残したクラフティプロスペクターは、00年のマイルCSを制したスーパーホース=アグネスデジタルの父であり、09年のマイルCSを8歳で快勝したカンパニーの祖母の父でもある。

 イスラボニータの鋭いフットワークは、3-4歳時よりずっとパワフルになっている。こなしてきた距離の幅は広いが、おそらくマイルこそベストのはず。

 2年半ぶりのGI制覇に期待したい。ルメール騎手とはここまで【0-1-1-0】。あまり流れは速くならないだろう。好位追走の手に出たい。

 マイルCS直前の東京11レース。前走、「ホントかよ!」という脚で突っ込んできた9歳のタフガイ=キョウエイアシュラの母は、フジキセキの3歳下の半妹である。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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