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欧州から3頭が参戦、ジャパンC外国馬展望

  • 2016年11月23日(水) 12時00分


「切れ味がある」と言われているのがイキートス

 今年のジャパンC参戦外国馬は、いずれも欧州を拠点とする3頭となった。

 このうち、ナイトフラワー(牝4、父ディラントーマス)とイラプト(牡4、父ドゥバウィ)は、前年に続く参戦で、日本のファンの皆様にもある程度お馴染みである。

 昨年の結果はと言えば、イラプトが6着でナイトフラワーが11着だった。海外から参戦する3歳馬には厳しいと言われているのがジャパンCで、しかも牝馬の身でありながら、勝ち馬から3馬身差だったナイトフラワーの競馬は、着順ほど悪い内容ではなかったと思う。G1ベルリン大賞(芝2400m)2着、G1バーデン大賞(芝2400m)2着、G1オイロパ賞(芝2400m)優勝という臨戦態勢は、G1独オークス(芝2200m)2着、G1バーデン大賞(芝2400m)2着、G1オイロパ賞(芝2400m)優勝での参戦だった昨年と酷似しており、1年経って経験値が増した分だけ良い競馬が出来るとすれば、掲示板に載るぐらいの競馬をしても不思議ではなさそうだ。

 昨年6着のイラプトは、勝ち馬との差はわずか2馬身だった。欧州のスタンダードよりは軽めの馬場の方が良いことは、1年3か月振りのG1制覇となった前走のG1カナディアン国際(芝12F)が改めて実証している。良い脚を長く使える一方、一瞬の脚があるわけではなく、ヨーイドンの競馬になっては日本の馬に切れ負けしてしまうので、サンクルー大賞のように最後方から追い込むのではなく、カナディアン国際のように中団より前目の位置から抜け出しを図るほうが、好結果につながると見る。「好結果」と言っても、昨年よりは少し前に来て、この馬も掲示板がようやくではないだろうか。

 日本のファンにとって未知の存在が、ナイトフラワーと同じく独国からの参戦となるイキートス(牡4、父アドラーフルーク)である。

 独国2400m路線の最高峰と言われているG1バーデン大賞の今年の勝ち馬(2.3/4馬身差の2着がナイトフラワー)だから、独国のこの戦線におけるバリバリのトップホースである。独国と言えば、11年のG1凱旋門賞(芝2400m)を5馬身差勝ちしたデインドリームや、13年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F)を同じく5馬身差勝ちしたノヴェリストのように、ヨーロッパの頂点に登りつめる馬が現れるほど、トップホースの水準は高い国だ。

 そして、デインドリームが凱旋門賞をレコード勝ちした時には持ち時計を4秒37、ノヴェリストがキングジョージをレコード勝ちした時には持ち時計を4秒90、それぞれ更新しており、初体験だった高速馬場に見事に対応している。持ち時計がないという理由で、日本の競馬に合わないと決めつけることが出来ないのが、独国のトップホースである。そして、独国の中では末脚に「切れ味がある」と言われているのが、イキートスだ。

 デビューしたのは3歳の4月で、2戦目にハノーファーのメイドン(芝1600m)で初勝利を挙げると、そこから3連勝。3歳シーズン最終戦となったクレフェルドのG3スパルカッセクレフェルド大賞(芝2050m)で重賞初挑戦し、頭差の2着となっている。今季2戦目となった、5月29日にバーデンバーデンで行われたG2バーデン経済大賞(芝2200m)で待望の重賞初制覇。その後、G2ハンザ大賞(芝2400m)がプロテクショニストの2着、G1バイエルンズヒトレネン(芝2000m)がエリプティークの4着の後、今季5戦目となったG1バーデン大賞(芝2400m)でG1初制覇を果たした。その後、G1オイロパ賞がナイトフラワーの5着、G1ベルリン大賞(芝2400m)が4着という成績での来日となっている。

 未知と言えば、同馬を管理するH・グリューシェル調教師(73歳)、主戦騎手で日本でも手綱をとる予定のI・ファーガソン騎手(45歳)ともに、欧州でそれほど名前の売れている存在ではない。97年にアヤノでG2ミューラーブロート大賞(芝2200m)を制したのがグリューシェル調教師の重賞初制覇で、その後もG2、G3制覇は複数あり、すなわち20年にわたってそれなりの地位を保っている調教師さんなのだが、G1制覇はイキートスのバーデン大賞が初めてだった。

 イアン・ファーガソン騎手は、04年にヴァレラでG3ブレーメン牝馬大賞(芝2200m)を制したのが重賞初制覇。しかしその後は低迷し、昨年あたりからようやく乗り馬に恵まれるようになり、4度目の重賞制覇となったイキートスのバーデン大賞が、待望のG1初制覇だった。イキートス自身、独国から外に出て競馬をするのはこれが初めてで、チームの経験値という点からも、アウェイでの戦いにいささかの不安があるが、そこは海外遠征経験も豊富なナイトフラワーのペーター・シールゲン陣営に助けられながらの参戦となるはずだ。

 馬や陣営は日本のファンにとって未知な一方、イキートスの父アドラーフルークの名は、日本のファンにも聞き覚えがあるはずだ。というのも、昨年のジャパンCに独国から参戦したイトウも、アドラーフルークの仔だったからだ。アドラーフルークの父インザウィングスは、96年のジャパンC勝ち馬シングスピールの父で、ジャパンCとも縁のあるサイヤーラインである。ジャパンCにおける独国調教馬は、昨年のイトウやナイトフラワーが二桁着順に沈んだ一方で、一昨年のアイヴァンホウは6着とまずまずの競馬をしている。目指すのがこのあたりであるとしたら、他の2頭と同様、この馬もよくて掲示板というのが妥当な評価ではなかろうかと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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