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【障害GI連覇へ】石神深一騎手(4)『高田先輩のアドバイスで意識が変わりました』

  • 2016年11月28日(月) 12時01分
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▲最終回の今回は、石神騎手が障害の奥深さを語ります!


石神騎手のインタビュー最終回。最後のテーマは、ズバリ「障害の奥深さ」です。騎手人生の大きな転機となった障害挑戦。GIの称号を手にするまでには、悩みながらの試行錯誤、先輩騎手からの助言がありました。真摯に向き合う石神騎手の姿に迫ります。(取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

40になっても50になっても、元気に乗っていたい


赤見 2007年から障害を取り入れて、その年は勝つことはできませんでしたけども、次の年からは障害初勝利、重賞勝利、GI勝利とステップアップ。騎手人生が変わりましたね。

石神 本当にそうですね。痛い思いもしましたけど、GIも勝てましたし、挑戦してよかったです。ただ、調教師や馬主さんからいい馬を依頼してもらっているので、本当はもっと結果を出さないといけないなと。

赤見 障害の世界って、ベテランの職人芸のようなところもあって。

石神 なかなか難しいですよね。調教を大事に考えているんですけど、競馬は全然違いますし。調教では上手に跳んでいても、競馬に行ったら失敗してしまったり。馬もレースでテンションが上がっちゃうと、リズムが崩れてしまうんです。馬も人間も練習通りにできれば一番なんですけど。

赤見 いろいろ思い悩むことも。

石神 そうですね。結果が出ないと「何がいけないんだろう?」って、考えれば考えるほど分からなくなってしまいます。でも、そこでポンといい馬にめぐり合えたりすると、馬に教えてもらうこともあって、自分にも余裕が出てきて、いい流れに変わるんですけどね。

赤見 ご自身の中でのポリシーってありますか?

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▲「障害に向き合うなかで、ご自身の中でのポリシーってありますか?」


石神 調教でも競馬でもそうなんですけど、1つ1つを丁寧にやることです。馬場に入ったらゴール板の前をなるべく歩かせて、キャンターへもゆっくり下ろしたり、障害も見せるのもじっくり時間をかけたり。

 ハミにぶら下がってくる馬だったら、前重心になっているのを後重心に戻してあげたり、気持ちが出てこない馬だったら返し馬で気合いを付けて奮い立たせたり、逆に興奮し過ぎる馬は落ち着かせたり。細かいところなんですけど。

赤見 そうするようになったきっかけはあったんですか?

石神 高田(潤)先輩がヨーロッパに勉強に行ったんですけど、向こうの調教方法とか返し馬のやり方とか、経験したことをたくさん教えてもらったんです。高田先輩には普段からアドバイスをもらうことが多くて。自分のトレーニング方法だったり、グランドジャンプを勝った時も金曜日のスクーリングを一緒にしたんですけど、馬に障害を見せながら「もっとこうした方がいい、ああした方がいい」って。

赤見 具体的に教えてくださるんですね。

石神 はい。分かりやすく、しっかりと教えてくれます。高田先輩の話を聞いて、意識が変わりましたね。

赤見 今、本当にいいスパイラルになってると思うんですけど、その要因は何ですか?

石神 何ですかね? 結果が出るとモチベーションにつながるのもありますし。去年からトレーニングの一環として、プールを始めたんです。それまでは走ってたんですけど、同じジムに通ってる横山義行さんとか三浦皇成から「プールいいですよ」って聞いて。体の負担が少ない割に心肺機能が鍛えられるんですよね。

赤見 やっぱり力というか、フィジカルは大事なんですね。

石神 大事ですね。体力がないと馬を自由に動かせないので。力、バランス、柔軟性、その3つがグラフで書くと歪な形にならないような、総合的にいいのが一番だと思います。

赤見 体のメンテナンスには相当気を付けているんですね。

石神 通っている接骨院の先生が、科学的なことを取り入れる方で。肩関節柔らかくするものとか、股関節を柔らかくするものとか、いろいろな機械を使って施術してくれるんです。去年からならなんですけど、長靴の中に入れる中敷きを作りました。

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▲好調を支える秘密のアイテム!中敷きを披露


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赤見 すごい!足の形になってるんですね。

石神 ちゃんと足の型を取って、その人に合ったものを作るんです。素材もいろいろあるんですけど、僕のは薄い素材ですね。馬に乗ってる時、普通ならほとんど鐙にしか乗ってないじゃないですか。でも、浮いている土踏まずのところも、この中敷きだとピタッとするので、地面に立っているような感じになるんです。先生が言うに、馬の上で100%の力を発揮するには、人間がしっかりとバランスを保ててないといけないらしいので。

赤見 中敷きを入れるというのは初めて聞きました。他の方も使ってるんですか?

石神 どうなんでしょうね? 後輩には教えたんですけど、使ってないかもしれない(笑)。僕はもう、普段の調教も競馬もトレーニングも、いつも使っています。ジョッキーってO脚の人が多いじゃないですか。それも治るらしいんです。

赤見 最後になりますが、今後ご自身の目指すものというのは?

石神 騎手を長く続けたいなとは思ってます。林(満明)さんが50歳、熊沢(重文)さんが48歳ですか。すごいことだと思いますし、僕もそうなりたい。40になっても50になっても、ああやって元気に乗っていたいです。

赤見 そして、直近では中山大障害があります。今度は王者として挑むGIになりますね。

石神 勝たなければいけない立場になりますからね。でも、そういう立場になっても、オジュウチョウサンなら結果を出してくれると思います。ファンの皆さんにもオジュウの走りを楽しみにしてもらいたいですし、僕自身も楽しみです。

赤見 障害って、全馬が無事に飛越するとファンの人が拍手して、一体感がありますよね。1着だけじゃなく最後の馬がゴールするまで応援するレースって、なかなかないです。

石神 拍手は乗っていても聞こえるので、「頑張らなきゃ」って思いますよね。特に障害は馬が好きというファンの人が多いと思うんです。「無事に走って来てほしい」という気持ちが伝わってきますよね。

 今は障害の騎手が少なくて。30人いないんじゃないですかね? 若い子にももうちょっと乗ってほしいなとは思うんですけど。障害が注目されるとうれしいですし、今回のように取り上げてもらえるのもうれしいです。障害を盛り上げようとみんなで頑張っていますので、ぜひ注目して見てください。

(了)



【読者プレゼント】


石神騎手のサイン入り、中山グランドジャンプのゴール前写真を、抽選で3名様にプレゼントいたします。ご希望の方は下記のフォームから、必要事項を明記の上、ご応募ください。

※受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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