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理想を追いつつ、どの塩梅で仕上げるかのバランス

  • 2016年11月24日(木) 19時30分


 今週は栗東の馬が勝ったので月曜日はミッキーアイルの一夜明けの取材に行って来ました。ふだんの一夜明け取材は勝ち馬のところへ行くので、陣営もひじょうにリラックスしていていいムードの中で行われるのですが…。今回は主戦が騎乗停止になるという、なんとも言えない後味の悪さ。

 まぁ、こういうときもありますね。不幸中の幸い、担当している平井助手が優しくお話くださったので事なきを得たのですが。場合によってはピリピリムードのまま取材ができず、なんてこともあります。今回はそうでなくて、よかった…。


 さて、当のミッキーアイルですが、まだまだ幼い印象でカメラを向けてもひじょうに警戒している様子をみせていました。ニュースで掲載した写真はスッと立って凛々しい姿でしたが、そこに至るまでに何枚写真を撮ったことか。一筋縄ではいかないお馬ちゃんでありました。

 レースぶりからも気性に難しいところがあるのは承知してはいますが、やはりというべきか、気性は子供でした。気持ちの面がもう少し大人にならないと展開に注文がつくという状況は続くのでしょうが、この気性だからこそ今の走りが出来ている、とも言えます。そのままのアイルを大事に育てたからこそ、今があると思います。

 このあたりの取捨ってホント難しいですよね。昔、松田博資先生が桜花賞馬のベガについて、「脚は曲がっていたが、それを矯正せずにそのままの状態で仕上げたときは強かった。でも、矯正してからは結果が出なくなった」と言っていたのを思い出します。心身ともに、どの塩梅で仕上げるか。これが厩舎の腕のみせどころだと思います。

 そういう意味でも、マイルCSの前日の最終レース。ニシノラッシュの優勝も“塩梅”の勝利でありました。これはホントにうれしかった!このコラムでも何度かご紹介していますが、脚元に不安を抱えており何度も復帰をあきらめた馬が久しぶりに勝った。これは奇跡ではなくて、日々注意深く馬を調整し続けた努力の賜物に他ならないです。

 前半、気持ちが乗っているニシノラッシュを浜中騎手がしっかり抑え、なだめてくれたおかげで直線力強く抜け出すことが出来ました。浜中騎手、本当に上手かった。


 ニシノラッシュはレース後、さすがにお疲れの様子でした。脚元はだいぶよくなったとはいえ、走った後はいつもモヤモヤしています。いちど壊れた馬の脚元は完全には戻らない。やはり、どこか不安を抱えたまま、走り続けなければいけません。それをどの程度まで休ませるとか、多少モヤモヤしているけれどそれでもしっかり調教をつけるとか。そういうのは全部職人の塩梅。

 まさに、今回のニシノラッシュの勝利は、モヤついた脚元を承知の上で仕上げ切った陣営の作戦と浜中騎手の好判断が結びついてのもの。長く競馬場にいますが、平場でこんなに感動したレースもなかなかありませんでした。次走は年末、六甲アイランドSとのこと。また、応援に行こうと思っています。

 今週はジャパンC。わたしはサウンズオブアースに注目しています。


 以前はやんちゃなところもあったようですが、今ではすごく大人しいとのこと。「ひと叩きされて、体は引き締まってきた」と陣営は体調のよさを強調していました。

 鞍上は大レースに強いミルコ・デムーロ騎手。枠も藤岡師の「希望どおり」に偶数の真ん中を引き当てました。相手は強いですが、自分らしい競馬、持ち味が最も引き出される塩梅で走ってくれることを期待します!

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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