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サウンドトゥルーの強烈な爆発力を称える/チャンピオンズC

  • 2016年12月05日(月) 18時00分


能力全開を考えてこその爆発力勝負

 中京に移って最初の2014年が「前半62秒3→」のスローで先行タイプ同士の上位争い。2年目の昨2015年が「60秒2→」の少々きびしい流れで、差し〜追い込み馬だけの上位争い。

 3年目の今年は「60秒6-後半49秒5-37秒7」=1分50秒1。先行したアスカノロマンが寸前まで粘り、好位のアウォーディーが叩き出したところに 後方から馬群を割ったサウンドトゥルー(父フレンチデピュティ)が強襲して大接戦だった。以下、先行タイプも差しタイプも一団で入線して10着モンドクラッセまでが1分50秒台を記録し、勝ち馬と「0秒6」差以内の激戦。

 レース検討で触れたように、中京ダートで勝った記録があるのは、サウンドトゥルー(1800mのジュライS)、アスカノロマン(1800mの東海S、濃尾特別)、コパノリッキー(東海S)のわずか3頭だけ。一方、中京ダートが初コースになる馬が、人気のアウォーディーを筆頭に6頭もいる組み合わせは、レース展開を中心にして、ダートのビッグレースにしては肝心な要素が不確定なところがポイントだった。オープンのトップクラスになるほど、中京のダート戦に出走する機会は少ないのである。

 しかし、今年の結果を見ると、良馬場の中京ダート1800mは(JRAでは左回りダート1800mは2場)、今年の「前半1000m通過60秒台中盤→上がりはそれぞれ49秒台→37秒台の中盤」になるとき、どの馬にも等しくチャンスが訪れるオープンの平均ペースであり、改めて、芝コースに比べると各場のダートに差がないことが確認できた。あとはその馬に合わせ、あるいはコースに合わせてどこで脚を使うかである。

 各場のダートの供給場所が同じになった現在、決着タイムに差がないのは当たり前ではないか、といってはいけない。直線の長さや、コーナーの角度から、中京ダート1800mには中京コースならではのポイントが、騎手にも、馬にもある。サウンドトゥルーはすべて大野拓弥騎手とのコンビで、中京ダート1800mを「1着、3着、1着」である。サウンドトゥルーの持ち味と、中京コースに対する適性をセットにした能力全開を考えてこその爆発力勝負であり、でなければ4コーナーまでしんがりに近い位置での後方待機などない。

 たとえば、人気上位馬では、6着ノンコノユメ(父トワイ二ング)はムーア騎手のテン乗りであり、コパノリッキー(父ゴールドアリュール)のルメール騎手は2013年1月の500万下(東京ダート1400m)以来の騎乗であり、ゴールドドリーム(父ゴールドアリュール)のデムーロ騎手は、前回の東京ダート1600mで騎乗しただけだった。

 その馬のコースや距離適性を考えると、馬にとってほとんど経験のないコースで、鞍上がこのコースにも馬にも慣れていないというのは、ダート戦の場合、馬群に入ってもまれるのはだいたいの馬が歓迎ではないことが加わるから、乗り替わりは非常にきついのではないかと感じた。

 また、コパノリッキーは東海Sこそ勝っているが、すんなりした展開が望めないチャンピオンズCは、14年が12着(1番人気)、15年が7着(1番人気)であり、同馬に乗るのはまったくひさしぶりのルメール騎手に代って、またまた人気の3番人気(13着)は、鞍上にとってもつらいものがあったのではないかと感じた。ルメール騎手のレースのコメントは「いいスタートを切ったけど、マイペースの先行とはいきませんでした」だった。

 コパノリッキーはハイペースもこなせるが、このGI/JpnI8勝の実力馬、1800mのビッグレース制覇は1つもない。理由は、この距離のGIはないに等しいからではあるが、タイプとして1800mの流れはもうひとつ合わない(鬼門)のかもしれない。

 人気のアウォーディー(父ジャングルポケット)は、初コースのうえ、交流重賞ではないから何頭も強敵のいる組み合わせ。最初からインでもまれる形になり、終始スムーズな追走ではなく、再三気合をつけられていた。それでも直線で外に出すと力強く伸びて抜け出したが、今回はサウンドトゥルーの強烈な爆発力(レース上がりを1秒9も上回る35秒8)を称えるしかない。コース経験なしの死角が出て凡走した馬も多かったなか、きわめて中身の濃い惜敗である。

 このあと出走予定の東京大賞典(大井2000m)はまた初コースになるが、今回のようなゴチャつく展開にはならない。勝ったサウンドトゥルーも2連覇をめざして出走予定なので、年末の東京大賞典の対決は楽しみである。突然、JRAに注文。お願いですからもう、東京大賞典(国際GI)を前に、有馬記念直後にJRA賞に投票してしまう票は受理しないでほしいと思います。

 そのアウォーディーの半弟ラニ(父タピット)は、これまでよりはスムーズなレースができたが、勝負どころでムチが入ってもスパートできなかった。挟まれたりしながら0秒5差(9着)は善戦というより、同じ3歳のゴールドドリームとともにまだ総合力不足だったとするのが妥当だが、「あの馬、大跳びで柔らかいフットワークだから、案外、いまは芝(新馬2000m4着)だっていいんじゃないか」という見方が、一部の関係者にあるらしい。兄アウォーディーは芝からダートに転じて大成功したが、ラニは逆に、芝に戻って本格化がないともいえないのである。

 4歳カフジテイク(父プリサイスエンド)は、勝ったサウンドトゥルーとほぼ同じような位置から、大外を回って上がり36秒0。勝ち馬と0秒2差(4着)だった。通ったコースを考えると互角の中身ともいえる。この馬が強烈な切れを発揮するようになったのは、昨年後半からのこと。6番人気の武蔵野S1600mは3着だったが、ベストに近いマイル戦ならもうトップクラスに突入だろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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