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【特別対談】的場文男×福永祐一(1)『大井の帝王も憧れてやまない“天才 福永洋一”』

  • 2016年12月06日(火) 18時01分
祐言実行

▲トゥインクル30周年SP企画第5弾! “大井の帝王”こと的場文男騎手と福永祐一騎手の特別対談


2016年最後の「祐言実行」は、“大井の帝王”こと的場文男騎手との特別対談。年齢も主戦場も歩んできた道もまるで違うおふたりですが、福永騎手の父・洋一氏というひとつの共通点がありました。何を隠そう、的場騎手にとって洋一氏は憧れのジョッキー。的場騎手の口から語られる天才たる所以、さらには福永騎手自身も知らなかった驚きのエピソードも明かされます。(取材・構成:不破由妃子)


「武豊」であり「岩田康誠」でもあった


福永 これまで交流戦でお会いする機会は何度もありましたが、こうしてじっくりお話させていただくのは初めてですね。的場さん、今日はよろしくお願いします。

的場 こちらこそ。わざわざ大井まで来てくれてありがとう。俺にとって洋一さんは憧れの人だったから、祐一くんが騎手になってからはその成長をずーっと見てきた。俺の想像以上にすごい騎手になっちゃって。

福永 とんでもないです(苦笑)。

──的場さんは洋一さんが現役の頃、どのような接点があったんですか?

的場 たまに二三雄さん(洋一氏の兄で、大井の元騎手、元調教師)の厩舎に来ていたからね。俺がまだ新人の頃で、すでに洋一さんはすごい人だったから、気軽に話しかけるなんてできなかったけど。洋一さんは高知の出身で、確か競馬一家だったよね。

福永 そうですね。親父は四男なんですが、長男の甲さんが中央競馬、次男の二三雄さんが大井、三男の尚武さんが船橋で、それぞれジョッキーとしてデビューしたんです。今はもう亡くなりましたが、二三雄おじさんは騎手時代にハイセイコーに乗ったことがあって、調教師としてはイナリワンを手掛けて。僕も何度か大井の厩舎に遊びに行ったことがありますが、当時の大井としては珍しく、サンデーサイレンスの仔がいたのを覚えています。

的場 いたいた。二三雄さんのところの馬には、俺もけっこう乗せてもらったよ。ハチノカイウン(91年千鳥賞、全日本アラブ優駿2着)とかね。それにしても、洋一さんっていうジョッキーは抜けてたね。当時の騎手のなかではダントツの存在だった。

祐言実行

▲「洋一さんは抜けてたね。当時の騎手のなかではダントツの存在だった」


福永 親父自身は、船橋の尚武おじさんが一番巧いって言っていたみたいですよ。「兄貴には敵わない」って。

的場 ああ、船橋で活躍した尚武さんね。俺はお会いしたことはないんだけど、先輩たちが「佐々木竹見さん以上の天才だったんじゃないか」って噂しているのを聞いたことがある。

 でもやっぱり、俺の中では洋一さん。なんていうのかな…、とにかく道中の姿勢がきれいで、それでいて直線ではズルい馬でも目一杯動かしてくるというかね。わかりやすくいうと、「武豊」であり、「岩田康誠」でもあった。当時、洋一さんの騎乗を見るたびに『スゴイ!』と思ったもん。あの落馬事故のときも、ちょうどレースを見ていてね…。その後のテレビ番組を変更して、運ばれた病院から独占生中継をしていたのを覚えてるよ。

福永 そうだったんですね。僕はまだ2歳だったので、そのあたりはまったく記憶がないです。

的場 そうかぁ、2歳だったのかぁ。確か、病院に運ばれたところから特別番組に切り替わって、そこからずっと中継してた。俺も心配しながらずーっと見てたよ。落馬事故で特別番組が組まれるなんて、後にも先にも洋一さんだけでしょ。そういう人だったんだよ、洋一さんは。俺もね、本当に憧れてた。

福永 交流でお会いするたびに、そう言ってくださいますよね。あと、的場さんが参戦できるように、毎年高知で開催している「福永洋一記念」当日に騎手招待レースを実施してほしいということで、実際、実施してもらったんですけど…。

──的場さんに断られた(笑)。

福永 はい(苦笑)。

祐言実行

▲「洋一記念当日に騎手招待レースを実施してもらったんですけど、的場さんに…(苦笑)」


的場 あのときはゴメン! あれは本当に申し訳なかった。たとえ騎乗予定があったとしても、それが大井以外なら間違いなく行ってたんだけど…。主催者から、「大井開催中だけは、ほかに乗りに行かないでくれ」といつも言われていて。いや〜、本当に申し訳なかった。

──来年以降、また福永洋一記念の日に騎手招待レースはできないんですか?

福永 騎手招待レースは、ひとつの競馬場で年に1回しか開催できなくて、高知は毎年、全日本新人王争覇戦があるから、基本的にはできないんです。ただ、2015年だけは枠が空いていて、本当にたまたま実現したんです。

的場 本当に申し訳ない…。

福永 いえいえ、もう笑い話ですから。

的場 それにしても不思議だよね。俺が新人の頃に憧れていた洋一さんの息子さんが、今、中央競馬を引っ張ってるんだから。去年もケガがなかったら、全国リーディング間違いなしだったもんね。

福永 去年は……そうだったかもしれません。

的場 洋一さんも絶対に喜んでるよね。どんどんお父さんに近づいてきているし。

福永 いえいえ、まだまだです。的場さんこそ、僕からしたら“生ける伝説”ですよ。

的場 いやいや、中央と大井じゃ舞台が全然違うよ。祐一くんが全国区だとしたら、俺なんか品川区だからね(笑)。

(文中敬称略、次回へつづく)


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祐言実行とは
2013年にJRA賞最多勝利騎手に輝き、日本競馬界を牽引する福永祐一。まだまだ戦の途中ではあるが、有言実行を体現してきた彼には語り継ぐべきことがある。ジョッキー目線のレース回顧『ユーイチの眼』や『今月の喜怒哀楽』『ユーザー質問』など、盛りだくさんの内容をお届け。

1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。

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