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トップハンデでもトロワボヌールが貫禄勝ち/クイーン賞・船橋

  • 2016年12月08日(木) 18時00分

撮影:高橋 正和



前半4Fが48秒0、後半4Fが53秒1という極端なペースを乗り切った


 終わってみれば、このレースの一昨年の覇者で、昨年も56.5kgを背負って2着だったトロワボヌールがやっぱり強かったか、というレースだった。

 前半は激しい展開だった。抜群のスタートを切ったトーコーヴィーナスがさらに好ダッシュを見せて先頭へ。ところが、外へ外へとよれていってしまった。審議にはならなかったものの、これに進路を塞がれたのがララベルだった。勢いがついたところで行く手を阻まれ、しかし外にはノットオーソリティがいて行き場をなくして控えざるをえず、位置取りを悪くしてしまった。向正面から追い通しで勝負どころでの反応もイマイチ、結果的にそれが原因で走る気をなくしてしまったのであれば残念というほかない。

 昨年逃げて惜しい3着に粘ったノットオーソリティがぴたりと外の2番手で、トーコーヴィーナスが外へと行ったことでぽっかりと空いたラチ沿いで差のない3番手につけたのがマイティティー。最初の1Fが11秒1というのがトーコーヴィーナスのスタートダッシュの速さを示していて、3F通過35秒4、5F通過60秒7は、いかにも速い。

 トーコーヴィーナスは物見をしたり、ソラを使ったりするところがあり、しかしそれが地元の園田競馬場で顕著になるという、ちょっと変わった馬なのだが、そうした気性の悪いところが、今回は逆に行き過ぎてしまう感じで出てしまったのかもしれない。さすがにオーバーペースで、3コーナー過ぎから後退してしまった。

 勝ったトロワボヌールは4番手を追走。12秒台後半の平均ペースに落ち着いた向正面でもペースを緩めず、徐々に前との差を詰めていって4コーナー手前で先頭に立ち、そして直線では後続を突き放すという横綱相撲だった。前半の4Fが48秒0、間に12秒7があって、後半の4Fが53秒1という、極端に前半に偏ったペースを乗り切った。

 トロワボヌール以外の先行勢は直線バタバタになって、3馬身差で2着と久々に見せ場をつくったのがタイニーダンサー。レディスプレリュード、JBCレディスクラシックはともに7着で、さすがに使い詰めで上積みはないだろうと思い予想では無印にしてしまったが、最終追いきりはかなり動いていたようだった。中団8番手追走から3〜4コーナーで一気に位置取りを上げ、直線半ばではトロワボヌールをとらえようかという勢いもあった。しかし3コーナーからのロングスパートでは、最後はさすがに脚が上ってしまった。

 上がり3Fがメンバー中最速の39秒6で、直線際立った末脚を発揮したのが北海道のタイムビヨンド。ハイペースを後方3番手で脚をため、4コーナーでも8番手というところから追い込んだ。門別でも内回りより直線の長い外回りコースで持ち味を生かすタイプ。それが生きたのが2000mの道営記念で、重賞連勝中のオヤコダカを差し切って見せた。過去2年同様、今年もこのまま大井に移籍して冬は南関東で走るようだ。前回の冬は大井のB2B3特別で勝ちきれずという成績だったが、このメンバー相手にこの走りなら、もっと上のクラスで活躍できるのではないか。大井の長い直線もこの馬にはプラスになるはずだ。

 タイニーダンサーと同じような位置を追走していたリンダリンダも、後半に使える脚が残っていて4着。とはいえ3着のタイムビヨンドからは5馬身差、勝ち馬とは1秒9差で、他の有力馬が凡走しての掲示板ともいえる。

 昨年は5F通過が62秒6というスローの逃げに持ち込んできわどい3着に粘ったノットオーソリティだが、今年は昨年より2秒近く速いペースをピタリと2番手で追走。それでいて、勝ち馬から差があったとはいえ、5着はよく粘った。昨年より1kg軽い51kgという斤量にも恵まれた。

 中央の既存勢力の近走成績がイマイチだったため、期待を集めたのが1000万特別、準オープン特別と連勝してきたマイティティー。パドックの頃までは1番人気だったが、最終的にトロワボヌールに1番人気(3.0倍)を譲り、僅かの差で2番人気(3.1倍)だった。ハイペースの逃げ馬の直後3番手を追走して、道中はずっと鞍上の手が動きっぱなし。逃げ馬と同じようなタイミングで3コーナーから徐々に後退して8着と見せ場をつくれなかった。単に地方の馬場が合わなかったのか、それとも初ナイターか。3走前に15着と大敗したときが中央のダートで経験した唯一の左回り(中京)で、今回も同じ左回り。馬体重マイナス13kgの463kgは、その大敗したときの462kgとほぼ同じ。それら何らかの要因が影響したのかもしれない。

 地方競馬的なことでは、これでNARグランプリ4歳以上最優秀牝馬の選考が難しくなった。トーコーヴィーナスはJpnIIでの2着に、他場に遠征しての重賞2勝、それにグランダム・ジャパン古馬シーズン優勝というタイトルがある。引退したブルーチッパーはJpnIIIでの2着が2回に地元重賞を1勝。クイーン賞で3着に食い込んだタイムビヨンドには、地元重賞ではあるものの牡馬も含めての最高峰・道営記念のタイトルがある。このあたり、どのレースの成績を重視するかで意見が分かれそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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