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好位から抜け出す正攻法で圧勝、リエノテソーロ/全日本2歳優駿・川崎

  • 2016年12月15日(木) 18時00分

撮影:高橋 正和



2歳馬とは思えない落ち着いたレースぶり


 リエノテソーロは単勝2.0倍の断然人気に支持されていたとはいえ、そこはキャリアの浅い2歳馬、不安がなかったわけではない。1600mという距離に左回り、そして当日輸送と、いずれも初めての経験。個人的に一番ネックになるかと思ったのが、トリッキーな川崎コースで最内枠に入ったこと。さらにエーデルワイス賞が圧勝だったとはいえ、今回は牡馬が相手でメンバーのレベルも上がった。そうしたことで個人的には▲までの予想だったのだが。しかし陣営はそうした不安は感じていなかったようで、その期待にこたえるかのように次元の違う競馬を見せた。

 ローズジュレップが好ダッシュを見せてハナに立つと、外枠から抑えきれないような勢いでシゲルコングがピタリと2番手。メイソンジュニアが続いて、リエノテソーロは内目の4番手を追走した。

 リエノテソーロの強さは、2歳馬とは思えない落ち着いたレースぶりにある。前走エーデルワイス賞では好位うしろの外目を追走。4コーナーでは絶好の手応えで前をとらえ、突き放しての完勝だった。今回は内枠に入って馬群に包まれ砂をかぶったらどうだろうと思ったが、それもまったく問題なし。勝負どころの3コーナーまで、前4頭の隊列はほとんど変わらず。そして3コーナー過ぎ、3番手の外にいたメイソンジュニアが一杯になって後退したため、リエノテソーロにとって邪魔されるものは何もなくなった。4コーナー手前で外に持ち出し前2頭をとらえると、直線であっという間に突き放すという、正攻法の横綱相撲だった。2着のシゲルコングには3馬身差。仮に北海道2歳優駿を大差で圧勝したエピカリスが出走していれば、おそらく一騎討ちとなって、後続との差はさらに広がったと思われる。

 芝で2連勝のあと、ダートでJpnIII、JpnI連勝となったリエノテソーロの今後は、あらためて芝かダートかという選択となり、桜花賞ということになればすでに賞金は十分で、じっくり調整していくことができる。

 シゲルコングは、前走オキザリス賞同様、スタートダッシュこそイマイチだったものの、200mほど行ったあたりから抑えがきかないような感じで一気に進出。先頭のローズジュレップに並びかけていった。直線を向いて3頭の追い比べとなり、勝ち馬には抵抗できなかったものの、ローズジュレップを1馬身半振り切っての2着。行き過ぎるところがあるかと思えば、途中でレースをやめてしまうところもあるという、そうした気性面が落ち着いてくれば、今後距離が延びても相当な能力を発揮しそうだ。

 兵庫ジュニアグランプリを制したローズジュレップは3頭の追い比べに屈して3着。前走はスタートで強引にハナを奪っていったネコワールドを見る形でレースを進められたが、今回は逃げる形になり、シゲルコングやそのほかの馬たちの格好の目標となって、厳しいレースになってしまった。とはいえ4着のヒガシウィルウィン(前走北海道2歳優駿で2着)には4馬身差をつけているので、上位3頭は水準以上の能力と考えていいだろう。シゲルコングと枠順が逆で、シゲルコングを先に行かせてそれをマークする形でレースを進められていれば、ひょっとすると2着と3着は逆だったかもしれない。

 兵庫ジュニアグランプリで上位を争った馬たちでは、バリスコアが6着、ハングリーベンが7着。この2頭は兵庫ジュニアグランプリとは順序を逆にして同じように差のない決着。あらためて地方馬の中ではローズジュレップの力が一枚抜けていたということを示す結果でもあった。ローズジュレップは今年の地方の2歳馬では唯一のダートグレード勝ち馬であり、しかも今回JpnIで地方馬最先着の3着ということであれば、NARグランプリ・2歳最優秀牡馬はほぼ確定といっていいだろう。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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