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「今が踏ん張りどころやね」自身の2016年を振り返る

  • 2016年12月27日(火) 18時01分
小牧太

2016年最後の太論は、来年いよいよ50歳を迎える小牧騎手の精神論!


2016年最後の太論は、来年いよいよ50歳を迎える小牧騎手の精神論。今年は中央移籍以来もっとも少ない勝ち星(37勝)に終わり、小牧騎手のなかでもいろいろと葛藤があったようです。とはいえ、「ここが踏ん張りどころ」と、逆にやる気が漲っているようにも見える小牧騎手。熱い太論をご堪能ください!
(取材・文/不破由妃子)


葛藤しつつも……今が踏ん張りどころ!

──さて、いよいよ今年最後の太論です。2016年を振り返っていきたいのですが、まずは一番印象に残ったレースから。

小牧 そうやなぁ、勝ったレースはひとつひとつ印象に残っているから、どれかひとつとなると…。あ、ダノンメジャーで初っ端に勝ったレース(6月19日・阪神9R・小豆島特別)はものすごくうれしかったね。デビュー当初はずっと乗っていたのに、その後はなかなか乗られへんようになって…。だから、久々に乗って勝てたことがやっぱりうれしかった。

──確かに、そのときの取材で、小牧さんの声が弾んでいたのを覚えています。逆に、悔しくて印象に残っているレースはありますか?

小牧 それはね、中京記念(7月24日・ピークトラムでコンマ1秒差2着)や。橋口厩舎の初重賞もかかっていただけに、あれは悔しかった。でも、あとからレースを見直したら、しょうがないなと思った。勝った馬(ガリバルディ)とは脚が違ったし、僕の馬はちょっとヨレたけど、あっちは完璧やったもんね。とにかく、今年一年を通して感じたのは、勝つのは難しいということ。なんせ、中央にきてから一番勝てんかった年やから。

──やはり、気持ち的にしんどい一年でしたか?

小牧 うん。気分的にはやっぱりしんどかった。ケガがなかったのは良かったけどね。とにかく、勝てないっていうのが、ジョッキーにとっては一番つらい。誰しもがそうやと思うけど、もちろん、なんで勝てんのやろ…って考えたりもするよ。年齢が年齢だけに、筋力が落ちたんかな…とか、そういうことばっかり考えてしまうわけやん。これからはそのあたりで葛藤が続くんかな。なんにせよ、今が踏ん張りどころやね。

──はい。ここからが“小牧太”の見せ場だと思っています。実際、騎乗されているなかで、筋力や体力の衰えは感じないとおっしゃっていましたよね。

小牧 うん、それは本当に感じたことはない。でもやっぱり、スポーツ選手全般としたら、50歳で現役バリバリなんてあり得へんでしょう。ジョッキーだから続けていられるけれど。そんななかで、年齢を重ねるに連れ、どうしたって乗り馬も勝ち鞍もだんだん減ってくる。それを受け止めていけんようなら、もう辞めなアカン。

──先日、あくまでも心構えとして、「1日1頭でも乗り馬がいれば」とおっしゃっていましたよね。そういえば、検量室で武豊さんと“引退”をテーマにじゃれ合っていて、そのやり取りがまるで漫才のようだと聞きましたよ(笑)。

小牧 そうそう(笑)。で、いつも「豊くんが(馬から)下りるまでは僕も乗るわ」っていう話で終わるんやけど。そうはいっても、彼とは立場が全然違うしね。なんせ僕は生え抜きじゃないから。彼もね、いろいろ葛藤があるはずやねん。かつては年間200勝していた男やからね。でもやっぱり、そこにとどまっていることはできない。そうなったときに、いかにして現状を受け止めていくかや。スポーツ選手は、長く続ければ続けるほど、少なからずみんなそういう葛藤があるでしょう。大事なのは、現状を受け止めながらも、“まだまだや!”と思えるかどうか。なんせ時間が経つのは早いからねぇ。

──本当ですね。太論が始まった当初は、小牧さん45歳でしたから。

小牧 若かったねぇ(笑)。昔からね、50歳まで乗るのが夢やった。それがもう叶うところまできているわけやから。ま、電撃引退もあり得るけどね。

──ないない! 冗談でもやめてくださいよ!

小牧 はいはい(笑)。ただ、ダラダラと続けるのはアカンし、たとえ乗り馬が少なくても、やるからには本気で立ち向かっていかんと。とにかく体だけは衰えんように自分を律してね。ここでへこたれるような人間やったら、もうとっくに辞めてるわ。今年はひとつ勝つことの難しさを知ると同時に、その何倍も1勝の重み、喜びを感じることができた。これからもその気持ちを忘れずに、一鞍一鞍大事に乗っていきたいね。
小牧太

これからもその気持ちを忘れずに、一鞍一鞍大事に乗っていきたいね



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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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